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第63話 「山下り」




「という訳で、奴隷にして下さい」

「何が、という訳で、なのかさっぱり分からないんだけど…」


 ドワーフの村で一泊した翌朝、村長の娘であるセナが土下座とともに頼み込んできた。

 何コレ?

 昨日、一緒の部屋で寝ていたエリィとクスノへと視線を向けると、二人とも頷いている。意味が分からん。


「なんでこうなってるの?」

「実は…」


 エリィとクスノが、昨日の夜に3人で話していたことを聞く。

 はぁ、なるほど。呪いである魔力暴発をなくしたいわけね。

 それで奴隷になるっていうのも、どうかと思うけど。


「(大丈夫。本人にも確認とった)」

「(僕が良いとは言ってないんだけど…)」


 チラッっとセナに視線を向けると、額を更に地面へと擦り付けるように頭を下げる。


「シュウさんの旅に付いて行きたいんですっ!!お願いしますっ!!」

「別に奴隷にならなくても、旅に付いて来るのは構わないよ」

「ダメ」

「なんでクスノが拒否してるのさ」

「これは必要なこと。私達が対等になるために」

「いや、対等もなにもエリィもクスノも奴隷じゃないんだけど…」


 態々(わざわざ)1回奴隷にする必要はないんじゃないかな。


「(それに、魔力暴発の呪いを、自力で解くことができないかを試したいっていうのもあるんだよ)」

「むぅ…分かった」


 クスノは何が不満なのかね?

 それに、セナの父親であるガシューさんの目の前で、セナを奴隷にするのは気が引けるし。

 親の目の前で娘を奴隷にするとか、どんな鬼畜なんだよ。


「お主なら別に構わんよ。その二人を見れば、奴隷だろうが酷な使い方はせんのはワシにも分かる」


 えー!まさかの父親から奴隷にする許可が出ちゃったよ。


「いや、奴隷にはしませんって。ところで、旅にセナを連れて行くのは構わないんですか?」

「そっちはもっと構わん。何かしらで一度は外へ出そうとしておったところだ」

「そうなんですか?」

「物を作る上で色々なものを見るのは必要なことじゃしな。時代が変われば物も変わる。変わらぬ物も確かにあるが、それは既に完成されておるものがほとんどじゃ。もし、その完成されたものが変わるときがあるとすれば、それが時代に合っておらんということじゃろう。まあ、変えずに残そうとしなければ文化とは呼べないんじゃろうがな」

「なるほど」


 そういえば、物作りをしていた友人曰く、「過去にどれだけ売れていても、流行についていけなくなると売れなくなることもある。ただし、流行についていくのが全てではないけどね」とか言っていたような気がするな。

 後は、「変わらないように見えて、その実、周りには気付かれない程度に変化はしているもの」とも言っていたような。

 その友人は、「使われなくなった物でも、使い方次第では売れる物に成りうるんだ。廃品回収と一緒で、他人が見たらゴミのようでも、使える人にとっては宝の山に他ならないんだよ」とか、明らかにゴミのような物を楽しそうにいじくっていたな。

 うん。あいつはただの変人だな。ガシューさんと一緒にしたら失礼だわ。


「まあ、旅についてくるのは構わないですよ」

「そーかそーか。そりゃ、良かった。欲しい物があれば作らせればええ。大抵のもんは作れるはずじゃ。作る場所があればじゃがの」

「それはアテがあるので大丈夫だと思います」


 ダンジョンに手を加えれば、多分作れると思うし。


「セナ、しっかりとご奉公してこいよ」

「分かりました!!」


 ご奉公って。まあ、良いけど。

 セナが荷物を取りに行っている間に、ガシューさんが一振りの剣を渡してくる。


「で、これが昨日でき上がったシザーアントの剣じゃ」


■名前:シザーアントの剣 Lv38

説 明:シザーアントの硬質な顎を加工して作られた剣。二つある刃を重ね合わせたことで、より耐久性が増している。


 Lv38ってかなり良い品質じゃなかろうか。

 ガシューさんの腕が良いんだなー。

 受け取るのが物凄く申し訳ないな。


「ありがとうございます」


【呪いの効果で、シザーアントの剣 Lv38が、シザーアントの剣 Lv1になりました】


 本当に申し訳ないね…!!

 ピッカピカに輝いていた剣が、僕が受け取った瞬間に心なしか光沢がなくなった気がする。

 この呪いのおかげで、良い品質が強制的に下げられるのはちょっとなー。

 ただ、そのお陰でちょっとずつでもゲームで言う経験値とか熟練度っていうのが入っているって分かるから良いんだけどね。

 逆にスキルレベルが高かったり、レベルが高かったりすると、レベルを一つ上げるだけでも大変だもんなー。

 この世界はゲームのように親切にも次のレベルまでの数字やゲージが見えるわけじゃないし。

 そういう意味では、地球にいた頃のクリエイターとか職人さんってすごかったんだな。あとはスポーツ選手なんかもそうか。

 目に見える数字がないのに、あれだけ続けられるんだもんな。大事に使おう。

 貰った剣を腰に差す。


「これは、譲ちゃん達の分だ。護身用ナイフと一対の短剣じゃな」

「私たちまでありがとうございます」

「ありがとう」


 エリィとクスノが受け取る。

 ………………………あれ?呪いが発動してないな。

 僕の物っていう認識が全くないからか。

 なるほど。僕「達」に貰う物と、他人が貰う物では呪いの有無が変わってくるんだな。

 そうなると、基本的に買い物は僕以外の人に任せた方が良いっぽいな。

 品質を気にしないものだったら僕が買えば良いけど…そんなものあるかな?

 水…も不味いとか美味しいとかあるしなー。

 まあ、その時考えるか。


「お待たせしましたー!!」


 ガシューさんと話していると、僕と出会った時に持っていた身長ほどもあるハンマーと、出会った時にベルトに付けていたいくつかの小さなポーチ、という軽装でセナはやってきた。


「随分と荷物が少ないが、良いのか?」

「大丈夫です!このポーチにいくつか道具が入ってるので、簡単なものならすぐにでも作れますよ!」

「そういうことは魔法がまともに使えるようになってから言え」

「はい…」

「シュウ殿、未熟な娘だが、よろしく頼む」

「分かりました」


 未熟っていうのは、物作りの腕のことだよね。身体的にっていう意味じゃないよね?

 ドワーフは、身長が低くても(これで)一人前って言っていたから、物作りの腕のことで合ってる。はず。

 それに、肉体年齢で言えばセナの方が年上だけど、精神年齢で言えば僕の方が年上になる。なんかややこしいな。


「じゃあ、行ってきまーす!!」

「おう。しっかり学んで来い」

「了解です!」

「「お世話になりましたー!」」


 ガシューさんに手を振りながら山を下る。

 ドワーフの村までほぼ全力で走っていたから、歩いてルイズリーの町に辿り着くのはかなり遅くなるだろう。


「いやー町まで下りるのは久しぶりですねー」

「そうなのか?」

「普段はあまり村から出ないんですよー。売ろうとしなくても商人さんがやってきますので、買出しに行くこともほとんどありませんし」

「材料の素材は………鉱山があったか」

「そう!そうなんですよ!今までは村から出る必要がなかったんですよ!だから、とっても楽しみなんですよー!!」

「分かったから落ち着いて」

「………」

「エリィ、どうかした?」

「あ、いえ…なんでも…ないです…」


 エリィ、何かあったのかな。それとなく後で聞いておこう。


「で、これからどうするんです?」

「とりあえず冒険者ギルドに行って、魔物がこの辺りを襲ったことについての報告かな」

「シザーアントの巣がありましたからねー。一応、昨日のうちに私の村の人が知らせに行っているはずですねー」

「ギルドとしても、当事者である僕達から話を聞きたいと思っているだろうしね」


 話しながら下山し、お昼頃にはルイズリーの町へと辿り着くことができた。

 昨日は、全力で走ったからすぐにドワーフの村へと着いたけど、歩くとそれなりに遠いんだな。山も登るし。


「おお、君達か。君達のお陰で助かったよ。ありがとうな」


 町の北門でギルドカードを見せながら通ろうとすると、門番である兵士の人が声をかけてきた。

 何かしたっけ?


「白い髪に狐耳族ルナーユ

「………っ!」

「…?」


 恰幅の良い女将さんって感じの人が引きとめてきた。

 なんだ?

 ジロジロと見たりしてきたことはあるけど、言葉に出して言ってきたことは一度もなかったんだけど。


「ちょっと待ちな!良い所に来たね!これ、持っておいき!」


 すると、扱っていた果物をいくつか渡して…というか押し付けてきた。


「えっと…これは?」

「お礼だよ!あんた達のお陰で町に被害が出ずに済んだんだよ!」

「おっ!あんたらがそうかい。噂は聞いているよ、こいつを持っていきな!」


 今度は、串焼きの屋台をやっていたおっちゃんがいくつかの串を渡してきた。

 貰うのを戸惑っていると、押し付けられるように手に持たされた。

 北門から町の中央を通って西側にある冒険者ギルドへと向かう間、様々な人が物をくれた。


「………何かしたっけ?」

「何でしょう…?」

「…?」

「私はこの町に来たばかりなので、なんとも」


 冒険者ギルドに着く頃には、僕、エリィ、クスノ、セナの両手は貰った食べ物や飲み物等の荷物で埋まっていた。


「とりあえず、食べられる物は今のうちに食べようか。折角貰ったんだし、冷めたら勿体ない」

「そうですね。丁度お昼ですから」

「冒険者ギルドは食後」

「いやー、私も良いんですかね?何もしてないんですけど」

「遠慮なく食べてよ。これだけの量があるからね」

「では、遠慮なく……あむっ……んー!おいしー!!」

「「「いただきます」」」

「って今のはなんですか?儀式?」


 食事の挨拶を初めて見るセナに説明する。


「はー!なるほど。では、私も。いただきます!」


 お互いの頭の上に、疑問符を浮かべながら食事をする。

 何かしたっけ。




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