第61話 「掃除 完了」
エリィとクスノ、セナの話を聞いている内に、流した水がシザーアントの巣の一番奥まで届いた。
シザーアントの女王アリは、アリなのに腹で直立するように立っており、水の流れを迎え撃つように威嚇している。
威嚇方法は、特徴であるハサミのような顎を、打ち合わせるようにガチガチと鳴らす。
ただ本来は、シザーアントはただ流れてくる水を相手に威嚇することはない。
僕が流した水魔法に含まれる魔力を感じ取って、敵対している者がいるという直感が働いたんだろう。
自然に生きる生物は、危機察知能力が高くないと生き残れないからね。
ただ、坑道からつながるシザーアントの巣を全て埋め尽くす水に、為す術もなく流されていく。
悪いけど、ここで片付けさせてもらう。
水を刃へと変えてシザーアント、女王、卵を斬っていく。
これで、巣は片付いたな。
「後は、水を抜き取って魔石や殻とかの素材を回収したら終わりかな」
「終わったんですか…?」
「うん、終わったよ」
女3人で話していたのが終わったのか、エリィがこちらへとやってくる。
「あとは、水を抜いて素材を回収するだけだね」
「中はかなり広い?」
「坑道自体はそんなに広くないんだけど、途中から繋がっているシザーアントの巣が広いね。坑道自体も、僕が通るには少し狭いし」
「じゃあ、私達が行ってくる」
「いや、僕も行くよ。ガシューさん、魔法で坑道の高さを広げさせてもらっても良いですか?」
「構わん。アンタの魔法の腕は、今見せてもらったからな。信用している」
「分かりました。とりあえず、全部取ってきますね」
「あっ!私も行きまーす!」
1時間後、手分けして回収して広場に広げた。
女王の魔石が1個と、ハサミ状の顎が一対に殻が1体分。それと、シザーアントの魔石が281個、シザーアントの硬質な殻や顎が数え切れないほど、広場に広げられた。
避難していたドワーフの住人も、シザーアントが倒された報を聞き、次々と戻ってきた。
今は、壊れた家屋の修理に勤しんでいる。
「とりあえず、僕は女王の魔石とシザーアントの魔石を10個ほど貰えれば良いんで」
「良いのか?これを全部ギルドに持っていけば、かなりの金額になるぞ?」
「あまりお金に困っていないですからね。後、オーガやスネークバイトに壊された村の復興にもお金がかかるでしょう?それに、シザーアントの顎や殻を貰っても、僕には使い道がないですから」
「…それだと、こっちが一方的過ぎて納得いかん。お前さん、その腰の剣を貸してみろ」
「はあ、これですか?」
腰に挿していた鉄の剣を渡す。
これ、スケルトンの初期装備であり、ゴブリンなどの武器を扱う種族がほぼ必ず使うとされる一番弱い武器だ。
「お前さん、よくこんなので今まで戦ってこれたな…」
「へー、どれどれ。…って、これただの鉄の剣じゃないですかー!」
「あまり武器にこだわりはないんですよ。剣の形さえしていれば、木剣でもどうにかなっちゃうので…」
僕は武器を使う場合は、武器に魔力を纏わせて戦う。
『蜥蜴の尻尾』の相手をした時も、鞭を魔力でコーティングしただけで、剣を斬ることはできるようになったぐらいだし。
それに僕のかかっている呪いは、アイテムレベルまでLv1になる。
効果が高かったり、とても良い武器だったりしても、呪いの所為で品質が下がってしまう。
それは、食べ物である程度実証できた。
「それでも、良い武器の方が良いだろう。武器ってのは命を預けるもんだ。信頼の置けない武器を持つことは、ワシの信条に反する」
「あー、その。非常に言いにくいんですけど、呪いの所為で僕が持つと品質が下がっちゃうんですよ」
「何?詳しく話してみろ」
僕の呪いについて説明する。
「フンッ!なるほどな。だが、それでも性能の良い武器を持った方が良い。これは譲れん…!丁度良い素材が目の前にあるしな」
ガシューさんは、僕がいらないと言ったシザーアントの顎と殻を示す。
「1日だけ待て。ワシの意地にかけて、村の恩人に武器を作ってやる」
「どっちにしろ今から冒険者ギルドに向かっても夜になっちゃうので、この村に泊まっていって下さいよー!それに、これだけのシザーアントがいたという報告もギルドにしないといけないので」
「二度手間になる」
空を見ると、既に陽は沈んでいる。
今から山を降りると、間違いなく夜中になってしまうだろう。
「そうだね。一泊させてもらおうか」
「じゃあ、私の家に来てください!被害は一番少ないんで!」
セナとガシューさんが戦っていたおかげか、村長であるガシューさんの家は、修理する必要がないほど無事だった。
「いやー!私も魔法が使えれば良かったんですけどねー!」
「セナ、お前は絶対に魔法を使うなよ…!!」
「分かってますよー」
と、ガシューさんに止められていた。
確かにセナが魔法を使うと、修理するどころか破壊しかねない。
魔力暴発って厄介だよな。
「お前さんは、客室を使ってくれ」
「お二人は私の部屋に泊まってください!いやー、以前から女の子同士でお泊りしてみたかったんですよー!」
エリィとクスノが、僕の方を見てきたから頷いておく。
「分かりました。よろしくお願いします」
「よろしく」
次話、女子会(予定)




