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第60話 「掃除 は ただ 流すだけ」




 坑道の入り口を魔法で塞ぎ、シザーアントを出て来れないようにした後、討伐の為に魔法の準備を始める。

 シザーアントは、体長80cmぐらいの大きなアリ型の魔物で、あごがハサミのように切れ味が鋭く、その顎で挟まれれば丸太ですら簡単に真っ二つになるほどだ。

 また、シザーアントの女王であるクイーンは、フェロモンを周辺地域に漂わせることで他の魔物を集め、集まってきた魔物を配下のシザーアントが狩って餌とする。

 巣の大きさは、シザーアント・クイーンの大きさにもよるけど、山一つ分にもなる。

 基本的に群れで行動し、獲物を見つけると集団で襲い掛かる。

 その上、繁殖能力も高いため、見つけたら即排除しないといけないというかなり危険な魔物らしい。

 僕の場合は、スケルトン部隊がいれば良い経験値稼ぎになるんだけどね。

 コアを破壊されなければ、いくらでも復活スキルで戦えるし。

 一匹残らず討つためには、かなりの人数で虱潰しにしていかないといけない。その場合でも、討ち漏らしはあるだろうけど。


「今回はそれよりも簡単に片付けます」

「簡単に?」

「どうやってやるんですかー?」

「それはね………。坑道を塞いだ壁の上の方に魔法で穴を開けます。次に、空けた穴から魔法で水を流します。これを、坑道全てに水が満ちるまで行います。以上です」


 僕はやったことないけど、子供の頃にアリの巣に炭酸ジュースや水を流し込んだりした人がいると思う。

 あれって、今思うとかなり残酷な方法だよな。

 今回はかなり危ない魔物の集団だから、僕も方法を選ばずにやったけど。

 あ、坑道に人がいないことは確認済みです。

 安全確認はちゃんとしようね。


「なるほど!虫型の魔物は、かなりしぶといですからね!!」

「そのために、もう一工夫します」

「もう一工夫………ですか?」

「流した水を使って壁を補強しつつ、僕が魔力で水に干渉して、シザーアントを輪切りにします」


 虫型の魔物は、頭を切り落としただけではまだ動いているからね。

 きっちりと止めを刺さないと。


「水を流すから巣全体に行き渡るし、打ち漏らしもないように確実に殲滅できるからね」

「水攻め」

「それにしても、お兄さんの魔法はすごいですねー!水、土、風の3属性を使える上に、無詠唱でこれだけの量を扱えるなんて」


 今、坑道を塞いでいる壁に空けた穴から、ダムの放水のようにドバドバと流し込んでいる。

 異常に気付いたシザーアントが何体か向かってきているけど、途中で土を固めた立方体を流してぶつけている。

 例え、かなり勢いのある鉄砲水を踏み止まれても、そこに流れてくる障害物をぶつけられれば、踏ん張れずに流されていく。

 さっきから、水で流されたシザーアントは行き止まりである部屋で、まとめて輪切りにしている。


「私も土魔法が使えるんですけど、思い通りに使えなくて困っているんですよー!」

「そうなの?」

「そうなんですよー。試しにやってみますね。我が手に集いて―――」

「ちょ、ちょっと待てっ!!」


 僕、エリィ、クスノ、セナ、セナのお父さんであるガシューさんが、輪になって話している真ん中に土の壁を出す魔法をお願いすると、ガシューさんが焦って逃げ出した。


「え?」

「や、やめろぉおおおぉっ!!」


 不思議に思っていると、逃げ出したガシューさんの足元に、突然土の壁が出現して転んでいた。

 なんで、目の前に出すだけだったのに、10mは離れたガシューさんの足元にでるのか。


「いやー失敗失敗。もう一度いきますねー。我が―――」

「うぉっ!!」


 あ、あっぶねー!!

 今度は、僕の足元が爆発した。

 更に何回か試してもらったけど、僕達の周囲はセナが発動させた魔法で穴ぼこだらけだった。

 何回地面を吹っ飛ばせば気が済むのかっていうぐらい吹き飛んでいる。怖っ。

 試しにセナを鑑定すると、


■名前:セナ

種 族:ドワーフ族

年 齢:18歳

性 別:♀

レベル:28

クラス:スミス

状 態:【呪い:『魔力不安定』(中級)】


 また呪い(コイツ)か。


「いやー!今日はまだ失敗が少なかったですね!!」


 セナが魔力切れまで魔法を使って、ようやく一つだけ土の壁を作ることに成功した。

 しかし、これは酷い。本人がポジティブに考えているのが余計に性質たちが悪い

 戦場かっていうぐらい、周りの地面が抉れているし、何故か暴発が起きるところにはガシューさんがいた。

 正確には、ガシューさんがどれだけ当たらないように移動しても、そこだけを狙っているかのように暴発して地面が爆発していた。


「これは別の意味で才能あるわ」

「そうですね」

「同感」

「いやいや!それじゃあ駄目なんですよ!!私は普通に魔法が使いたいんですよ!」


 セナの場合は、呪いを解呪するだけでどうにかできるけどね。

 ただ、今すぐどうにかするなら、僕の呪いを使わないとできないんだよな。


「この暴発のせいで、魔物の前で魔法が使えないんですよ…」


 セナの話を聞くと、以前魔物相手に使ったときに、暴発して自分にダメージが入って逆にピンチになったとか。

 そりゃあ、自爆するかもしれないから、危なくて使えないよな。


さいわい私はドワーフなので、力だけはありますから戦闘に支障はないんですけど、ドワーフとして鍛冶ができないのは問題なんです!!」


 セナやガシューさんらのドワーフは、土と生きる種族なため、魔法を使いながら鎚を振るうことで武器や道具などの元になる金属に魔力を通しやすくするんだとか。

 これをちゃんと施した金属とそうじゃない金属では、価値が大分違うんだとか。


「もう一度、魔法を使ってみてくれ」


 ある程度休憩したところを見計らって、僕がセナに魔法を使うように言うと、伏せてダウンしていたガシューさんの肩がビクッと震えた。


「オッケーです!!我が―――」

「ちょ、待て!!」


 ガシューさんの声が聞こえたときに、セナの魔法が完成する。

 その魔力が、ガシューさんの足元に集まった瞬間、僕の魔力でセナの魔力を包み込むように抑えつける。

 すると、今まで暴発して地面を爆発させていたものが、ポンッという気の抜けるような音と衝撃に変わった。


「おわぁぁあああ!!!………あん?」

「なるほど。魔法が暴発する前に魔力そのものを抑えれば、魔法を使わせても問題ないのか」


 ただ、ビーチフラッグの選手のように、全力で飛び起きたガシューさんの足元で暴発しそうになったのは流石というか。


「お前さん、魔力そのものを扱えるのか!?」

「え?まあ…」

「よし、ウチのセナの婿になれ!」

「「ダメ(です)!!」」


 え、嫌です。って返そうと思ったら、エリィとクスノが先んじて言葉を返した。

 唐突に何を言っているんだ、この親父は。


「あれー?お兄さんとの関係を聞いたら、奴隷だって言ってませんでしたか?二人とも」

「いや、エリィもクスノも奴隷じゃないんだけど。っていうか二人にも説明したよね?」

「「はい(コクッ)」」

「なら、なんで奴隷って言っているのさ」

「「では、伴侶に―――」」

「それはまだ早いからダメ」

「じゃあ、私なら問題ないですよね?私18歳だし」


 セナの年齢は、鑑定で見たから知ってる。

 エリィとクスノ、セナの間にちょっとした火花が見える気がする。

 誰か助けてー!




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