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第59話 「セナ」

4万PVいっていたようです。それと、評価して下さった方もいるようで。本当にありがとうございます。

「はぁー…とんでもない人がいたもんですねー」


 シュウが山の上へと消えていった後、女の子の感心するような声が辺りに響いた。


「よく頑張りましたね。あんな魔物に追いかけられて…もう大丈夫ですよ」

「私達が守ってあげる」


 幼子に話しかけるように、エリィとクスノは優しい声で話しかける。


「へ?」


 それを聞いて、女の子は素っ頓狂な声を上げた。


「大丈夫です。言わなくても分かっています」

「あのー勘違いしてません?私はこう見えても大人ですよー?」

「………え?」


 女の子が立ち上がり、自分の身長以上もあるハンマーを担ぐ。

 立ち上がったその姿は、10歳であるエリィやクスノに比べて、頭一つ分低い。

 そんな見た目が華奢な女の子が、大の男が持つようなバトルハンマーを担いでいる姿は、かなり異質だ。


「もしかして……ドワーフ?」

「そうですよー。それよりも、どうしようかなー。元々ルイズリーの町に救援をお願いしたくて来たんですけどねー…。あのお兄さんがいれば一人でどうにかなっちゃいそうな気がするし…」

「シュウ様がいれば問題ない」

「へー、あの人の名前はシュウっていうんですか。お二人はあの人とどういった関係で?」

「「それは―――」」






 僕が前に助けた、ゴルドーさんの娘さんみたいに小さい女の子だったけど、大丈夫だろうか。

 会話をしてみた限りハキハキと答えていたし、あの二人に任せておけば多分大丈夫だろう。


「思ったより魔物が多いな………ん?」


 山を走っていると、森の左右からヒップレスというお尻の大きい猿が、ジャンプして僕を押しつぶそうと飛び出してくる。

 猿の尻に潰されて死ぬとか、嫌な死に方だな。

 そんなものに押し潰されるどころか触れるのも嫌なので、両側に『ソリッドスピアー』を差し向ける。

 飛び上がってお尻を差し向けてきた猿は、岩の杭に吸い込まれるように串刺しになった。あっ!これ絶対痛い奴だ…!

 なんで、こんなものを詳細に確認してんだろう、僕。

 ヒップレスの死体をダンジョンボックスに放り込んで、再び走り始める。

 しばらくすると、荷台が通っているような道に出た。


「なるほど。あの女の子はこの山道より、障害物が多い森に入ったってわけか」


 改めてサーチフィールドを広げる。

 村は………っと、この道を右に左に曲がっているグネグネ道の上にあるのか。

 直線で行こうとすると、厳しい崖があって通れないのか。

 魔力で空気に干渉して固め、それを足場に村まで一直線に駆け上がっていく。

 山の上の村に着いた。

 村の中はポツポツと家がある程度で、赤や茶色の土壁でできており、その色合いが独特の模様を描いている。

 そんな村の中に、頭が潰れたスタンプボアやスネークバイトの死体が転がっていた。

 潰れた頭のある地面は、陥没してヒビ割れてクモの巣のような模様を残していた。

 なんか、この陥没している部分って、バトルハンマーぐらいの大きさだよな、コレ。あの女の子が持っていたやつ。


「ォォォオオオオ!!!!!」


 ドォーン!という爆発するような音とともに、地面が揺れる。


「ん?」


 サーチフィールドを奥の方まで広げると、一人の男とオーガが戦っているのが分かった。


「あっちか」


 音のした方へと向かうと、身長140cmほどのバトルハンマーを持った小柄で筋肉質な男が、オーガと向かい合っていた。


「フンッ!流石は硬いオーガじゃな。ワシのパワーでも骨は砕けんか」


 オーガを見ると、足や腕に幾つものあざがあった。

 なるほど。このおじさんが、スタンプボアやバイトスネークの頭をあのバトルハンマーで潰していたのか。

 ただ、流石におじさんも所々怪我をしている。

 言葉遣いからすると、おじさんよりおやっさんの方が似合いそうだ。


「ん?なんじゃ、小僧」

「女の子にお願いされて、救援にきました」

「おおっ!娘に会ったのか!」


 あの女の子の父親だったのか。


「ガァァアアアア!!!!!!」


 おじさんと話していると、オーガが雄叫びをあげてこちらに向かってくる。

 怪我をしている手負いのおじさんより、生命力に溢れた無傷の僕を脅威と見做みなしたようだ。


「ゴァアアッ!!」


 オーガが、力任せに腕を振り下ろしてくる。

 それを後ろに下がることで避けて、おじさんから遠ざかるようにする。

 同じ事を繰り返して、十分な距離を取れたところで初めて反撃に出る。


「『ソリッドスピアー』」


 オーガが地面を殴る瞬間に、オーガの真下から胸元へと岩の杭を出して貫通させる。

 その一撃で、オーガは絶命した。


「ホォ…!お前さん、土魔法が使えるのかね。………しかし、この岩の杭は見事じゃのぉ」


 オーガを貫いているソリッドスピアーに、ハンマーをコンコンと当てて確かめている。


「すいません。確認したいんですけど、魔物ってこのオーガで最後ですか?」

「いや、まだじゃ。魔石が採れる坑道の中から魔物が大勢出てきておる」

「坑道…ですか」


 サーチフィールドを広げていくと、確かに山に坑道があった。

 坑道は、人…それも子供ぐらいが通るための幅しかなく、僕が通るにはかなり低くて狭い。

 エリィやクスノなら問題なく動けるだろうけど。

 ただ、入り口近くで崩落しており、中に入るのは大変そうだった。

 岩の隙間から、途中枝分かれしている先まで調べると、アリ型の魔物がウジャウジャといた。


「うむ。咄嗟に坑道を破壊して、崩落させたところまでは良かったんじゃが、魔物の数も規模も分からんのだ」

「アリ型の魔物は、数が多いですし、力もありますから、出てくるのは時間の問題ですね」

「分かるのか?」

「多分、シザーアントという魔物でしょう。このハサミを擦るような金属音は、以前にも聞いたことがあります。シザーアントの女王は、魔物が好む匂いを発することで、周りに餌となる魔物を集める習性がありますから」

「そうか。これから、どうすれば良い?正直なところ、ワシらも入れなくて困っておる」

「………一度、ルイズリーの町の冒険者ギルドに、応援を呼びに行った方が良いでしょうね。ところで、他の方の避難は…?」

「すでに完了しておる。ワシはこのドワーフの村の長でもあるからな。武器の使い心地を試しておったところじゃ」

「………」


 実地で試すなよ。


「おーい!お父さーん!!」

「おぉ!無事だったか、セナ」


 山道を登ってきたのか、女の子を伴ってエリィとクスノが向かってきた。


「あ、お兄さん、私の名前はセナと言います!先ほどはありがとうございましたー!」

「僕の名前はシュウだ。急いでいて自己紹介を忘れていたよ」

「いえいえ!お互い急いでたんで、気にしなくて良いですよ!」


 見た目の割りに、礼儀正しい女の子だな。頭を撫でてあげる。


「あの、シュウ様。ちょっとお話が…」

「ん?どうかした、エリィ?」

「実はですね…」


 エリィから話を聞こうと思って振り返ると、後ろから声をかけられる。


「あ、私、見た目はこんなですけど、大人(18歳)ですよ?」

「………え?」


 ………申し訳ないけど、そうは見えないよ。




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