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第57話 「攻略 の 影響」



 現在いる森はルイズリーの町から南東にある森だ。

 ゴルドーさん一家を助けたのはルイズリーの町の南側へと続く道だった。懐かしい。

 今回、クスノが声を聞いた方向は、ルイズリーの町の東の方のようだ。

 あっちはまだ行ったことないな。確か、海に面している港町があったんだっけか。

 前は南門から出入りしていたし、そっちへ向かう。


「どうもー」

「おお、君か。久しぶりだな。白いクロウラーを連れていなかったから分からなかったよ」


 南門の兵士にギルドカードを見せて通る。

 クスノを見た兵士は何か言いたげではあったけど、クスノのギルドカードを見せたら、何も言わずに通してくれた。

 今回は首輪を着けてないからね。


「良いの?」

「良いさ。今回のことで、いざとなれば閉じこもる場所ができたわけだし」


 寝床、お風呂、食料完備のダンジョンがあるからね。

 それと、攻略のおまけで手に入れたスキル『ダンジョンワープ』。

 これがあれば、大抵のことはどうにかなる。

 『森木』のダンジョンがダメなら、獣魔の森の方へ行けば良いし。

 冒険者ギルドへ近付くと、何やら騒がしかった。

 何かあったのかと入ってみると、室内の広さに対して、冒険者がこれでもかというぐらい多くいた。

 心なしか、ギルド職員もあちこちへ走り回っている。空気もどことなく緊迫しているような…。


「あの、どうかしたんですか?」

「シュウさん!?」


 受付でいつも通り仕事をしているシャロンさんへと話しかける。


「良かった。無事だったんですね。ここ最近見かけなかったので、心配しました」

「何かあったんですか?」

「昨日から、この辺りに銀級(シルバー)向けの依頼になるオーガ等の魔物が大量発生しておりまして…」


 そういえば、シグが言っていたっけ。

 ダンジョンをコアを破壊して攻略した場合でも、従えて攻略した場合でも周りにある程度は魔力が漏れ出してしまう、と。

 その流れ出した魔力により、周りの環境が変わったり、流れ出た魔力で動物が魔物になったり、魔物そのものが形作られてしまうことがあるとか。

 同じ所に5つもあったあの土地は、攻略して漏れ出した魔力が、そのまま他のダンジョンへと吸い込まれていったのもあり、強力な魔物になったりはしなかったらしい。

 正確には言えば、あの『獣魔の森』は、強力な魔物が跋扈ばっこする森なので、ダンジョンを攻略した魔力が流れ出たぐらいでは、土地に大して変化が出ないとも聞いたっけ。

 あの森はダンジョン内の魔物と比べても、遥かに強い魔物ばかりだから、魔力が漏れ出して発生した新しい魔物程度では、返り討ちにあうのが関の山だろう。

 それに、この辺りの土地は農耕に適さないと以前に聞いたことがある。

 ルイズリーの町の周りにダンジョンがどれぐらいあるかを特に調べたわけではないけど、ルイズリーの町の西にある『東窟洞とうくつどう』のダンジョンのレベルから予測するに、この辺りの土地の魔力はほぼ全て『東窟洞とうくつどう』のダンジョンに吸収されていると思われる。

 そんな農耕に適さないほどの魔力が枯渇している土地に、突然大量の魔力が流れ出すと、吸収することに慣れていない土地の吸収率はかなり少なく、吸収されなかった魔力がオーガのような強力な魔物として形成される。

 ………ってことは、これもしかして僕が原因じゃない?

 やばい、どうしよう!


「今はどれぐらいの魔物がどれぐらいいるかを調査中ですので、安易に町の外へ出てはダメですよ」

「シャローン!こっちの準備終わったよー!って、あれ、シュウ君?」

「あ、どうも」


 名前は確か……シトリアさんだっけ。


「良かったー。無事だったんだ。ここ最近見かけなかったから、心配しちゃったよ」

「ちょっと南の方へと行っていたもので」


 ここよりは南っていうだけで、嘘じゃない。


「こら、シトリア。今は仕事中でしょう?」

「そうでしたー。じゃーね、シュウ君」


 そう言って、受付カウンター内に入っていく。


「それで、これだけの冒険者がいるのは、魔物の大量発生に対する依頼を受ける人ってことですか?」

「そうです。今はまだ調査中ですが、軽く見積もってもかなりの数がいるようなので、後方支援という形で銅級(ブロンズ)にも依頼を出しました。それと…」

「君達にも依頼を出したいんじゃよ」

「ギルド長…!」


 いつぞや話をしたギルド長がそこにいた。


「依頼ですか?」

「うむ。調査が終わってからになるが、ルイズリーの町を守るのに力を貸して欲しいんじゃよ」


 防衛か。

 オーガぐらいなら、今のエリィやクスノで十分に相手できるけど、手の内を見せるのはちょっとなー。

 まあ、いっか。

 魔法を使わなくても、戦い方はいくらでもあるし。

 エリィは精霊魔法を使うけど、これは種族柄使える物だから問題ない。

 クスノの方は、付与魔法エンチャントさえ使わなければ大丈夫かな。

 何か問題があったら、すぐに『森木』のダンジョンに隠れよう。


「エリィとクスノは良いかい?」

「はい、大丈夫です…!」

「大丈夫」

「分かりました。僕達は、具体的に何をしたら良いんでしょうか?」

「とりあえず、町の北東にある山間部の森で魔物が大量に発生したようなのでな。北か東のどちらかへと向かってもらいたい。できれば北が良いんじゃが」

「北か東だけで良いんですか?」

「今、それ以外の場所へと人を回しておるところじゃ。一応他の所からも来るかもしれんから、何人かを監視として置いておる」

「何故北なんですか?東の方の道って、海に面している町に続く方向ですよね?東の方が良いんじゃ…」

「北東からと言っても、ほとんど北からのようじゃよ。北の山は、自然の魔石が取れる鉱山があるんじゃよ」

「分かりました。すぐに向かいます」


 冒険者ギルドに集まっていた冒険者達と一緒になって、すぐに北門へと向かった。


「こっちはまだ、来たことがなかったな」

「どうして?」

「僕とエリィは南東にある森にばっかり行っていたし、西に1回だけ向かったときは、ダンジョンの見学が目当てだったからね。そこでクスノを引き取ったからね」

「それ以外は行っていないんです」

「そう…シュウ様、何か聞こえる」

「ん?」

「確かに、何か騒がしい声が聞こえてくるような…」


 ルイズリーの町の外壁が見えて、あと少しで北門を出るというところで、クスノから言われた。

 すぐにサーチフィールドを広げていく。


「叫び声のような…?」

「悲鳴…?」


 二人の声に、北の方へとサーチフィールドを広げてようやく掴めた。


「北側にかなりの数の魔物がいるね。急ごう」


 北門を出ると、ズシンッ!という重量感のある音が右側から聞こえるとともに地面が僅かに揺れた。

 その音の方へと顔を向けると、肌は茶色で身長4mほど、髪の生えていない頭に2本の角が生えた、プロレスラー顔負けの筋肉をしているオーガと呼ばれる魔物がいた。それも2体。

 サーチフィールドに引っかからなかったから、本当に今すぐ出現したばかりのようだ。


「ガァァァアアアアアア!!!!!!」

「なんだ、オーガか」


 一昨日ぐらいに戦ったギガントトレントに比べれば、遥かに弱い。


「ちょ、ちょっと、シュウ様。オーガですよ、オーガ!」

「こんな町の近くだと、ルイズリーの町がパニックになる」

「大丈夫大丈夫。今の二人なら簡単に倒せるし」


 発生したばかりのオーガは、『森木』のダンジョンのウッドゴーレムを倒せる二人にとって、大した相手じゃない。

 ただ、この辺りにただよう魔力から察するに、かなりの数の魔物が発生すると思われる。

 考えている間に、オーガ、2足歩行の豚の魔物であるオーク、背中に小さな木を何本も生やしたサイのような魔物であるヘヴィフォレスト、見た目が倒木のような木のミミズであるツリーワーム等が大量に湧いて出た。

 僕が攻略してから丁度2日ぐらいか。次々とサーチフィールドに引っかかる。

 町が近い場所でダンジョンを攻略すると、こういう風に周りに影響が出るのか。これは、迂闊にダンジョンの攻略なんてできないな。

 周りにダンジョンを攻略しましたよって言っている様なものだ。

 あっ、奥へ奥へとサーチフィールドを広げていくと、北の山の途中で一人の女の子が魔物に追いかけられていたのを捕捉した。




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