第54話 「『森木』 の ダンジョン 攻略」
100ブックマークいったみたいです。ありがとうございます。
森の中に、小さなトンネルを逆さにしたような一本の抉れた跡地がある。深さと幅が5mぐらいで、長さは1kmほど。
まあ、僕が作った道なんですけどね…。まさか、ハンマートレントの腕でもある木のコブを、魔力を纏わせて打ち出したらその変の地面が削れていくなんて…。
僕も魔力操作がまだまだだな。精進せねば。
「まあ、いっか。この階層は楽に進めるし」
豪快な自然破壊だけどな。
「シュウ様のおかげで、見晴らしが良くなりましたね」
「視界が広がって、敵を見つけやすくなった」
二人の言う通り、抉れた部分を道に歩いていると、トレントは下りてこれないのか、淵の部分で右往左往している。
偶に遭遇するハンマートレントも、この抉れた溝に落ちて身動きが取れなくなることはあるけど、攻撃するまでには至っていない。
溝を木のコブで叩いて、土砂を落としてくるけど、それは大して問題にはならない。
問題があるとすれば、ガルが食事ができなくて不満そうっていうぐらいだ。
トレントも、根っこを伸ばそうとするが、距離があるために根が届かない。
想定外だったけど、この28階層は楽ができそうだ。
山を抉った道も終わり、溝から出ると29階層へと下りる階段があった。
「いやーミスした時はどうしようかと思ったけど、結果的には良かったな」
「すぐに見つかって良かったです」
「運が良い」
「キュィー」
おかげで、残すはあと29階層と30階層のみとなった。
翌日、昼頃に30階層のダンジョンボス部屋の前に着いた。
今までの階層ボスの扉が、屋敷の門の横にある小さい出入り口のような装飾なのに対して、ダンジョンボスの扉は城の城門のように豪華で大きい。
門の両側に、豪華な装飾が施された柱の上に深緑の宝玉が飾られている。
「おー着いたな」
ダンジョンボスの扉の前にくると、感慨深い物がある。
僕が従えたダンジョンは、今の所6つ。
『怨恨』『森林』『藻原』『蓄輪』『筒窟』『傘岳』
始めにクリアした『怨恨』のダンジョンを除いた5つは、ダールソンさんに魔法の講義のついでに攻略させられたものだ。
ついでにやるもんじゃないだろ!って今なら言える。あれはおかしい。
まあ、おかげでイメージで魔力を扱うことに慣れたから良かったけど。
ただ、加減ができるものとできない物が増えたのは本当に気をつけないといけない。じゃないと、ダンジョンの外で魔物を倒す時に周りへの被害が甚大だ。
変異種相手の縦斬りとか、28階層のハンマートレント相手に1km以上地面抉るとか。
一歩間違えればあの階層一つ消し飛ばす可能性があったわけで。
偶にやらかすんだよなー…。
「いままでのボス部屋と違う。もしかして、ダンジョンボス?」
「そうだよ」
「「………」」
「え?二人とも、どうしたの?」
エリィとクスノが顔を見合わせてこっちを見る。
「ここまで進んでくるのも早かったですけど、もう最奥まで来たんですか。私達…」
「ルイズリーの町のダンジョンの最高到達階層が32階層。この速度は異常」
「そういえば、シュウ様。探索者ギルドに何も言ってないですよね?このダンジョンのこと」
「そだねー。でも、特に言う必要もないんじゃないかな」
「ダンジョン攻略者は、名乗り出ればかなり有名になれる」
以前、クスノに聞いた話では、ここ100年ぐらいの間、ダンジョン攻略者は出ていないっていう話だった。
100年前にいたという、マシュラの勇者が成し遂げたぐらいらしい。
凄いことを成し遂げたから勇者と呼ばれたのか、元々勇者として喚ばれたのかは知らないけど、それだけの結果を残したわけだ。
「つまり、シュウ様の強さは勇者並。もしかするとそれ以上ある」
「勇者って…。流石にそれ以上っていうのはないと思うけどね」
過去の勇者がどれぐらい強さのダンジョンをクリアしたのかも分からないし、勇者自体どれぐらい強かったのかも分からない。
けど、世界に語られて残った話ぐらいだし、相当強くないと勇ましい者なんて呼ばれ方はしないだろう。
漫画やゲームとかでも、勇者って言うのは世界を救ったりしているわけだしなー。
少なくとも『東窟洞』のダンジョンのような100階層以上あるものを攻略しているだろう。
僕が攻略したのは一番深いダンジョンでも81階層だったし。
「………」
「クスノ?どうかした?」
「シュウ様。このダンジョンを攻略したら、お願いがある」
「何?」
「………ルイズリーの町のダンジョンに、少しでいいから入らせて欲しい」
「それは構わないけど、何かあった?」
「私とエリィちゃんが、どれぐらい戦えるのかを確認したい。ダンジョンの魔物、それも魔石を狙っているとはいえ、28階層の魔物を相手にしても一人で倒せるようになったから」
なるほど。僕もシグとダールソンさんに連れられて攻略したけど、一つ目が大丈夫だからと言って、二つ目が大丈夫か分からなかったから同じように慎重になっていたっけ。結局走らされていたけど。
「分かった。そこも含めて一度ルイズリーの町へ行こう。僕もちょっと用事があったし」
エリィとクスノに、食事を作る時に必要なエプロンとか買っておきたかったし。じゃないと揚げ物とか危ないしね。
後はなにかあったかな………ルイズリーの町へ行ってから考えればいっか。
「じゃあ、昼食後、ダンジョンボスと戦おう」
「はいっ!」「分かった」
このダンジョンボスの前にある部屋は、魔物が湧いて出てこない。
魔物に追いかけられて逃げ込んだ場合は、魔物もそのまま入ってくるけど。
このダンジョンでは最後の食事だし、偶には森の中で食べるとしようか。
小屋を作らずに、ウッドゴーレムが落とした丸太で作った丸机と椅子を、ダンジョンボックスから取り出す。
野外調理ってキャンプみたいで楽しいよね。
キャンプかー。カレーが食べたいな。
香辛料の都合で、カレーの再現はできていない。ルイズリーの町では見かけなかったし、その辺もゴルドーさんに当たってみようか。
昼食後、ダンジョンボスへの部屋へと入る。
「さあ、これでこのダンジョンも最後だ。気を引き締めていこう」
豪華な扉を開けて入ると、中は500m四方の広大な土地の中心に、直径10m、高さ50mほどの巨大な木が立っていた。
僕らが100mぐらいまで近付くと、突然メキメキという音を響かせながら木の幹が裂けて目と口が現れた。
「ォォオオオオオオオオォォォンンン!!!!!!」
■名前:ギガントトレント
種 族:魔法生物・植物種
年 齢:30
性 別:不定
レベル:30
クラス:トレント
状 態:普通
●スキル:『擬態Lv2』『範囲攻撃Lv4』『自動再生Lv3』『状態異常無効Lv3』『土属性耐性Lv3』『水属性耐性Lv2』
ステータスを見ると、この階層に来るまでに相手していたトレントやハンマートレントと比べても、全てのステータスが上回っている。
さすがボスっていうところか。
こいつを倒して、この『森木』のダンジョンをクリアしたら、このダンジョン内に生活できるようになる。倒さなくても生活してたけどさ。
ようやく自由に魔法を使ったり、お風呂入ったり、自重する必要がなくなるんだ。
これまで長かったなー。
「というわけで、こいつは僕が倒すっ!先手必勝!!………ってあれ?」
「キュィィィイイイイイー!!!!!!」
「ォォオオオオオオオオォォォンンン!!!????」
感慨に耽っていたら、ガルがボスであるギガントトレントに突撃していた。
ガルは、ギガントトレントに取り付いて物凄い勢いで齧り始める。食事か。さっきご飯食べたろ…。
ギガントトレントは、取り付いたガルに枝で振り払おうとしたり、根を束ねて刺し貫こうとするが、全て弾かれている。
あいつ、一応ダンジョンボスなんだけど…。
「なんて食い意地なんだっ!」
というか、トレントもそうだったけど美味かったのか?
ガルは美味い物に対しては、芋虫型の魔物とは思えないほどの速度が出る。
盗賊相手の時に、スケイルファングの鱗を投げたら取りにいったしな。犬か。
「シュウ様、どうしましょうか?」
「はあ………。ダメージをほぼ受けてないといえ、手助けしないわけにはいかないか。エリィとクスノは枝の振り回しと根っこに注意してくれ」
「分かりました!」「分かった………!」
「ォォオオオ!!」
指示を出して近付こうとすると、それに気付いたギガントトレントが口から木の弾丸を次々に放ってきた。シードクラッカーみたいな攻撃だな。
水の玉を浮かべて木の弾丸を受け止める。
30mぐらいの距離まで詰める間にも木の実が飛んでくるが手で弾いて逸らす。
それを見て無駄と思ったのか、今度は木に巻きついている無数の蔦を触手のように伸ばしてくる。それらをクスノと二人がかりで斬り飛ばす。今度はプランテスか。
蔓を切り飛ばした隙間を縫って、エリィが魔力を込めた矢を放つ。
「ォォオオオオオオオ!!!!!!」
放った矢を、僕たちごと振り払うように生い茂る枝を振り回す。木が大きいから広がっている枝が僕たちの上にまである。
ってことは………!
「足元に注意!」
足の裏に感じていた振動を二人にも伝える。
二人が僕の声に反応して、その場を離れる。
その瞬間、僕の足元から太い根が槍のように突き出してくる。その数5本。
飛び出した根を、僅かにずれて最小限の動きで避ける。
「はっ!」
腰から剣を抜き放ち、そのままの勢いで周りの根を切る。
切り飛ばした枝が、徐々に回復して伸びていく。
クスノが、上から鞭のように落ちてくる大量の枝を、一つずつ確実に、炎を纏わせた短剣で切り落とす。
「クスノちゃんっ!足元きますっ!!」
エリィが風の動きを感知して、地中にある根っこの動きを捉えてクスノに伝える。
30mから近づけていないけど、エリィとクスノは大丈夫そうだな。
と、安心していたら、ギガントトレントの口にあたる部分がモゴモゴと動いている。
「させませんっ!!」
エリィがそれに気付いて矢を先に放つ。が、それを気にすることなくギガントトレントは口から木の弾丸を撃ち出す。
ギガントトレントが放った弾丸が、エリィの魔力を乗せた矢に当たって、両方が弾けた。
その隙に、上から襲ってくる無数の枝の雨を、右に左に躱しながらちょっとずつ僕が近付いていく。
「よ…っと!ほっ!」
僕がギガントトレントまで5mに近付く頃には、ガルが木の中に巣を作る動物のように、幹に頭を突っ込んでいた。すごい食欲だな。
ガルの全長は5mほどでかなり大きい。そのガルが3分の1ほどギガントトレントに埋まっている。
ああ、うん。正直、もう手を出す必要はなさそうだな。
このまま放っておいても、あと少しでガルがコアまで辿り着いて食べ尽くしそうだし。スキル『自動再生Lv3』の意味がないな。それより食べる方が早いし。
最後の抵抗なのか、ギガントトレントが鞭のようにしならせた枝を大量に降り注がせ、同時に根の槍を所構わず突き出させた。
それを見て、僕は剣を鞘から抜き放ち、その勢いのままに魔力を纏って振り切る。
「『シャープ・ブレイズ』」
頭上に広がる枝に、炎の熱線が駆け抜ける。
赤い線が通った場所は、一つも残らず枝も根も切り落とされた。
その結果、木の枝の半分ががなくなって、見晴らしが良くなった。
「ォォオオオオオオオオォォォオオオオ!!!!!!」
ガルがコアまで辿り着いたのか、ギガントトレントが全身を震わせる。
【ガルラドがレベルアップしました。Lv2になりました】
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【ガルラドがレベルアップしました。Lv30になりました】
【ガルラドが条件を満たしました。クロウラーから???へとクラスチェンジするため、状態:繭玉(休眠・固定)になりました】
【呪いの効果でLv1になりました。】
「………は?」
ギガントトレントが絶命して消えた跡には、ギガントトレントのコアと………周りに糸を張り巡らせた7mほどの真っ黒な繭が残っていた。
何だこれ?
ガルが…クラスチェンジ??しかもクラスチェンジ先が不明って。
【『森木のダンジョン』をクリアしました】
【『森木のダンジョン』をクリアしたことにより『森木のダンジョン』の所有者が『永遠 祝一』へと変更されました】
【所有者が『永遠 祝一』に変更されたため、呪いの効果により『森木のダンジョン』はLv30からLv1になりました】
【条件を満たしました。7つのダンジョンを配下にしたことにより、ダンジョンスキル『ダンジョンワープLv1』『配下外部召喚Lv1』を付与します】
僕の方もか。
どこかで魔物図鑑みたいなものを載せたいところ。




