第53話 「ガル の 防御力」
「いきますっ…!」
「はっ………!」
3度目のトレントとの遭遇も、僕とガルは手出ししていない。
まあ、そもそもガルは、食事の為に徘徊してていないんだけど。
エリィとクスノが、トレントを危なげなく倒していく。
「終わりましたね、クスノちゃん」
「お疲れ、エリィちゃん」
26階層に入ってから、僕は一度も戦っていない。
全部エリィとクスノに任せている。
だから、サーチフィールドこそ使っているけど、後ろや横から突然襲ってくるトレントにも、二人で対処してもらっている。
トレントの位置は知っていても、二人に教えていない。
「二人とも、警戒も大分できるようになってきたね」
「シュウ様のサーチフィールドを真似しているだけですけど…」
「それでも十分すごい。私は風を扱えない」
僕は、魔法の元である魔力を扱えば、どの属性にでも変換できると思っていたんだけど、人によって変換できる属性が違うみたいだ。
エリィは風、クスノは火だけしか変換できないらしい。
ただ、属性に変換しなければ、魔力そのものを扱うことはできているから問題ないだろう。
無属性の弾を撃つだけでも強いしね。
二人とも、無属性の弾を撃つことはできなかったみたいだけど。
魔法として使える属性が関係しているのかな。
この調子なら、30階層までは二人で大丈夫そうだ。
その後、順調に足を進めて28階層まで下りた時、重い物が地面に落とされるような音がちょっとした地響きとともにこちらに伝えてきた。
「な、何の音ですか?」
「地面も揺れてる…」
「キュィ」
二人と一匹の声を聞き、周りへと視線を向けると、森の奥の方に、枝葉のない木がゆっくりとこっちへと向かって動いているのが見えた。
音と振動がする方へと近付いてみると、トレントと同じような高さの木が歩いていた。
トレントは直径1~2mの大木で、高さは10mぐらい。5mぐらいの高さから葉が生い茂った枝として分かれ、それを攻撃として鞭のように振り回してくる。
けど、この地響きをたてて歩いているトレントは、ウッドゴーレムと同じ人型をしていた。
ただし、ウッドゴーレムと圧倒的に違うのは、ウッドゴーレムは丸太を組み合わせた不恰好な人型をしているのに対して、一本の木から手や足のような枝と根が生えているスマートなトレントだった。
■名前:ハンマートレント
種 族:動植獣種
年 齢:28
性 別:不定
レベル:28
クラス:ハンマートレント
状 態:普通
●スキル:『擬態Lv1』『範囲攻撃Lv3』『移動Lv3』『怪力Lv2』『頑丈Lv4』『自動再生Lv2』『状態異常無効Lv3』『土属性耐性Lv3』『水属性耐性Lv1』
よく見ると、両手にあたる部分の枝の先が、3mぐらいのコブのような鈍器になっている。
大槌を使うパワータイプの重戦士ってところか。
僕達が近付いたのに気付いて、右の木のコブを振りかぶる。
あ、これ危ないわ。
「散開っ!」
「はいっ!!」
「ん………!!」
「キュィ?」
僕が後ろに、エリィが右に、クスノが左に避けて、そしてガルが前にゆっくりと動く。
なんで前に出るんだ、ガルは。
っていうか、避ける気がないな。
「ォォオオオオォォォ!!!!!」
動きの遅いガルに向けて、木のコブを振り下ろす。
ゴォッ!っという風を巻き込んだ音を鳴らし、ガルに直撃する。
ドォォンッ!!という地響きとともに、衝撃が風となって吹き荒れる。
鈍くて重い音が打ち鳴らされた場所を見ると、ガルは特に変わった様子もなく佇んでいる。強いて言えば、強く叩かれて震えているぐらいだ。
代わりに、ガルに攻撃したハンマートレントの右腕に当たる枝が、千切れてなくなっていた。
「二人とも、上に気を付けてっ!!」
ガルの防御力はとてつもなく高い。このダンジョンの魔物相手なら、傷を負うことはほぼないって分かるぐらいに。
金属の塊のように硬い物を、木だろうが鉄の棒だろうが叩けば手が痺れて弾かれるだけだ。
ガルが攻撃された瞬間に、弾くように力を入れたっていうのもあり、金属以上に硬いガルに全力で攻撃しようものなら、弾かれた反動で木や枝程度は千切れるだろう。
生物なら本気でやろうとしても、脳が肉体を壊さないようにある程度制限がかかるだろうけど、ハンマートレントは植物だから、腕が千切れても大して痛くないだろう。
上を見ると、ガルに弾かれた木のコブが宙を舞い、こちらへと落ちてくる。
ハンマートレントを見ると、残ったもう一つの腕を振り上げていた。
「ほっ!………っせーのっ!」
地面を蹴って落ちてくるコブへと左手を添え、魔力を使って右手を振りぬく。
すると、僕が放ったコブがハンマートレントの振り上げたコブへと当たり、体から千切れる。
「ォォオオオオォォォ!!!??」
それに追い討ちをかけるように、ガルが体当たりをして体勢を崩す。
そのまま、トレントを相手にした時のように齧り始めた。
「あっ…」
僕が放ったコブが強く弾かれすぎて、森の中を一直線に駆け抜けていく。
魔力を纏わせすぎていたか…。やっちゃったな…。
その弾丸が、森の木々とトレントを薙ぎ倒しながら、1kmほど進んだところでようやく止まったようだ。
下へと降りると、両腕をなくしたハンマートレントが自動再生で徐々に枝を生やし始めているが、ガルが食べつくすほうが早いだろう。
「………ま、いっか。逆に進みやすくなっただろう」
「シュウ様、やりすぎ」
はい、すいません。




