第52話 「木 の お化け」
翌朝、22階層へと降りて行く。
2日かけて26階層への階段を見つける頃には、エリィもクスノも一人でウッドゴーレムを倒せるようになっていた。
しかも一撃で。
ここら辺の魔物が強いから、1体倒すだけでも入る経験値が大きかったようだ。
エリィとクスノのステータスが、グングン成長している。
おかげで、クスノの目標の一つであったウッドゴーレムの両断は、すでに適っている。
「あー………良いねぇ」
二人が食事の準備をしている間に、僕はお風呂に入っている。
ウッドゴーレムから入手した、丸太を削りだして浮かべたアヒルのオモチャとともに。
倒して、丸太を手に入れて分かったんだけど、ウッドゴーレムが落とす丸太は、色々な種類の木があることが分かった。
檜のような香りがするものもあれば、杉のような香りがするものもあり、木の皮が松やクリ、欅 (けやき)など、思った以上に多い。
ここに来るまでに倒したウッドゴーレムの数からすると、お風呂を一つの材木で作ることが可能になった。
これで、檜風呂っぽいものもできる。
木の香りがする風呂って、何か旅館みたいだよな。
「縁側があって、畳とか使って、囲炉裏のある和室とか作りたいなぁ…」
「タタミとかイロリ、って何ですか?」
「畳は草を編んで作った敷物。囲炉裏は小さな暖炉…のようなもの」
「クスノちゃんは知っているんですか?」
「マシュラにはあるって母様が。私も資料でしか見たことがないけど……あ、この鳥かわいい」
「あ、本当ですね。かわいいです…!しかも、良い香りがしますね」
「………」
今日こそは一人で入れると思ったのに。
二人が料理している間に入れば、ゆっくりできるかなーって思っていたんだけど、二人の料理の手際が良くなっているから、調理時間が短くなっているんだよな。
エリィとクスノが、魔力を扱うのに慣れてきたっていうのも理由としては大きいし。
一緒に入るのが嫌ではないんだけどね?
なんというか、3人で入るのが当たり前になっちゃったなー。
もう抵抗するのはやめちゃおっかな?
その方が楽だし。
一々、一緒に入る入らないの問答をするのが面倒になってきたし。
一人用の狭い風呂にしたら、一緒に入れなくなるけど、無理に入ってこられて密着度が上がると、それはそれで問題なわけで。
イチャつく時には寧ろ狭くしたい。
ダメだ本音が…。
丸太は余っているから、ブロック状にしてお湯に浮かべるの使おうか。
エリィの言う通り、香りが良いし。
お風呂を出た後、いつも通りに3人で一緒の布団に入って寝る。
服を着ているとはいえ、密着度が上がるし、風呂上りに乾かしたのもあって、顔を横に向ければ良い匂いがする。
できるだけ、上を向いたまま寝た。
翌日、26階層に入ると、ウッドゴーレム以上の木の太さの森へと景色が変わった。
『森木』のダンジョンの名前通り、直径1m~2mの樹がずらりと並んでいた。
「はぁー壮観だな…」
「ですねー………」
「大きい」
「キュィキュィ!!」
■名前:トレント
種 族:魔法生物・植物種
年 齢:26
性 別:不定
レベル:26
クラス:トレント
状 態:擬態
●スキル:『擬態Lv4』『範囲攻撃Lv2』『移動Lv1』『自動再生Lv1』『状態異常無効Lv3』『土属性耐性Lv3』『水属性耐性Lv1』
あっ、魔物だったわ。
全部の木ではないみたいだけど、木の魔物が紛れているようだ。
「キュィー!!」
「あっ!」
ガルが一目散に一つの木へと向かい、木を一心不乱に齧り始める。
「ォォオオオオオォォォンンンン!!!!!!」
しかも、トレントかよ。
ガルに齧られた瞬間、木の幹が裂けるように目と口のような洞ができあがる。
「キュィー!!」
余程気に入ったのか、トレントが暴れて枝を鞭のように振り回して攻撃してきても、食べるのをやめない。
まあ、ガルからしたら、トレントの攻撃なんて強くないんだけど。皮膚硬いし。
「あれが、この階層の魔物のトレントだな。見た通り、かなり大きい木の魔物だから、攻撃範囲が広い。気をつけてくれ」
「あの、ガルさんが滅多打ちにされてますけど」
「あーうん。ガルにとって、あの攻撃はいいマッサージぐらいにしか思ってないんじゃないかな。皮膚も見た目以上に硬いし」
医食同源とは違うと思うけど、普段から鎧に使われるようなスケイルファングの鱗、クラッシュスパイクの殻など、硬い物ばかりの食事をしていたガル。
それを補強するように、防御力やHPの上がりに関係するVITが凄まじく高い。
ことVITに限れば、一番古く【呪い:Lv1(永久)】と付き合っている僕や、重装備をして防御を固めたスケルトン・ガードナーのトロンに匹敵するぐらいステータスが高い。
本当に芋虫?っていうぐらいに。
間違いなく、ここのダンジョンボスより硬いはずだ。
ガルは一体どこを目指しているのか本当に分からないよ。
そのままトレントに取り付いて食事をしただけで煙となって消えた。生きたまま食って殺すなんて、エグい。
あ、人もシオウオの踊り食いとかやってたわ。
「倒しちゃいましたね…」
「うん…」
「まあ、あれは参考にならないだろうけど、僕達はいつも通り戦って進もうか」
「あの…ガルさんはいいんですか?」
「大丈夫大丈夫。さっきのを見たから分かると思うけど、ガルにとってこの26階層から30層はただの食事場だからね。放っておく」
気付いたら、次の木に取り付いている。
齧ったら樹液でも出てくるのかね?
ある程度食べたら、追いついてくるだろう。
「ガルー!先行ってるからなー!!」
「キュィー!!」
「じゃあ、エリィもクスノも。そこら辺の木がトレントの可能性があるから、気をつけて進もうか」
「はい」「頑張る」
二人も大分ステータスが上がったから、戦う分には問題ないと思うけどね。
「風の精霊さん。お願い、力を貸して。いきますっ!」
「ふっ………!」
巨大な木が振り回す無数の枝が、エリィとクスノに襲い掛かる。
それを片や風の精霊による風の壁で防いで逸らして矢を放ち、片や魔力を巡らせた身体能力で避けて枝を切り飛ばす。
初めは、リーチの違いで近付くのに苦戦していたようだが、早くも慣れて木の幹まですぐに攻撃を届かせている。
再生する枝より早く枝がなくなっていくため、悪足掻きとして根っこを地中から地上へと杭のように打ち出すが、それも避けられてトレントの身が削られていく。
どうでもいい話だけど、木の枝の広がり=根の広がりぐらいと友人に聞いたことがあるので、下からの攻撃の範囲も意外と広い。
ちなみに、僕は魔力で足元を固めているので、僕の足元から根が出てくることはない。
「これで、終わりっ………!!」
クスノが炎を纏った短剣で口の中にあるコアを突き刺して両断する。
ウッドゴーレムどころか、トレントですらこの様だよ。
二人とも逞しくなったなー。




