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第50話 「宝箱」

ハチに首を刺されました。病院で診てもらいましたし、痛みもないので大丈夫かと思います。

そして、やっと50話ですね。

 部屋の中にポツンと宝箱一つって…。

 選ぶ部屋間違えたな。

 そんな僕の後悔を断ち切るように、後ろの壁が下まで降りる。

 もう出れないね。完全に閉じ込められた。


「いかにもな場所」

「え?何がですか?」

「そうだねぇ。こういうそれなりに広い部屋なのに、小さな宝箱が一つっていうのは、嫌な予感がするよね…」

「キュィ…」


 以前、入った5つのダンジョンでも、様々な種類があったしね。

 純粋に宝箱だけの部屋、開けた瞬間に爆発したり毒ガスが出るとかのトラップ付き、開けたのをきっかけに作動する魔物部屋、ランダム転移魔方陣等々。


「閉じ込められた所から察するに、魔物かトラップか…とりあえず、僕が開けてみるよ」


 このレベルのダンジョンの宝箱、しかも18階層ぐらいなら、そんなに危険な物ってないと思うし。


「開けるから、一応離れててね」


 ひとまず、小石を投げて当ててみる。

 これで、動くようなら宝箱に擬態した魔物だと分かる。

 ………うん。大丈夫そうだな。


「じゃあ開けるよー。………3・2・1…ほいっ!」


 開けた瞬間に距離をとる。

 すると、宝箱が消えて、部屋の中心に魔方陣が現れ、その中から2mほどの人型のシルエットが3体現れた。


■名前:ウッドゴーレム

種 族:魔法生物・植物種

年 齢:25

性 別:不定

レベル:21

クラス:ウッドゴーレム

状 態:普通


●スキル:『怪力Lv2』『頑丈Lv4』『状態異常無効Lv3』『土属性耐性Lv3』『水属性耐性Lv1』


 ウッドゴーレムは、木を丸太状に切って、そのまま組み合わせたような不恰好な人型だった。


「ウッドゴーレムか。どうやら下の階層で出てくる魔物を召喚するトラップみたいだね」

「キュィー!!」

「ガルも戦いたいのか?」

「キュィ!」

「分かった。じゃあ、僕が1体、ガルが1体、残りの1体をエリィとクスノでやろうか。ウッドゴーレムは硬いし力もあるから気を付けてね」

「はい、分かりました!行きましょうクスノちゃん」

「頑張る…!」


 僕が真ん中、ガルが左、エリィとクスノが右のウッドゴーレムに対峙する。

 ガルは、僕と同じようにステータスがある程度高いから大丈夫だと思うけど、エリィとクスノはレベルやステータスを見る限りちょっと危ない。

 という訳で、僕の目の前のウッドゴーレムの胸に貫手で核を奪って終わらせる。


〔■ウッドゴーレムのコア:Lv21〕

〔■丸太:Lv21〕


【呪いの効果で、ウッドゴーレムのコアLv21がLv1になりました】

【呪いの効果で、丸太Lv21がLv1になりました】



 ガルの方を見ると、その巨体を生かしたタックルでウッドゴーレムを粉砕していた。

 本当にガル(あれ)はなんなんだろうな。

 よく分からなくなってきたな。

 うん、放っておこう。


「さて、エリィとクスノはどうかなっと…」


 二人の方へと視線を移すと、そこにはウッドゴーレムの腕に何箇所か焼けた斬り跡があり、周りに何本かの矢が落ちていた。

 焼けた跡は、炎を纏わせた短剣でクスノが斬りつけたもので、落ちている矢はエリィが放った矢がウッドゴーレムに弾かれた矢か。


「………っ!硬い…!」

「ダメです。弓では大して効いていません…!」


 ウッドゴーレムの攻撃を、クスノが危なげなく躱してお返しに短剣で斬りつける。

 躱した攻撃は、地面が抉れるほどの威力があるから当たったら危ない。

 でも、ウッドゴーレムの攻撃にはそこまでの速さはない。

 だからこそ、クスノは簡単に避けてることができている。

 代わりと言ってはなんだけど、クスノの攻撃も対してウッドゴーレムにはダメージになっていないから、攻撃を避ける必要もない。喰らっても痛くないしね。

 エリィの攻撃も、クスノの攻撃と同じように矢が刺さるほどの威力はないから無視されている。

 ウッドゴーレムは魔法生物で疲労とは無関係だから、このままだとクスノの体力が先に尽きて終わるだろう。

 どうするのかな。

 様子を見ていると、クスノが一旦下がってきた。


「ちょっと休憩…」


 ウッドゴーレムはノッソノッソとゆったりと歩いてくる。


「いけそう?」

「大丈夫。次こそは倒す………!」


 おおっ!変異種の時に倒せなかったのが余程悔しかったのか、大分意気込んでいる。

 エリィの所に歩いていって、何事か相談している。

 相談が終わって、クスノがウッドゴーレムに向かい、頭から股にかけるように一直線に切り込みを入れる。

 その後、距離を離すように誘導した後、こちらに戻ってきたクスノが目を瞑って何かに集中を始めた。

 その間、エリィがウッドゴーレムに向かって矢を放っている。

 今まで無差別に放っていた矢を、ウッドゴーレムの体の縦向きの切り込みに並ぶように放っている。

 全て弾かれていた先程までと違って、何本かはちょっとずつ刺さるものが増えてきた。

 探ってみると、矢に微量の魔力を纏っているのが分かる。

 エリィも不安定ながら、魔力を武器に纏わせることができるようになっているのか。

 しかも、自分の手から離れた武器にまで纏わせることができている。こっちの方が難しいのに。

 いや、さらによく探ってみて分かったけど、これはエリィの魔力じゃないな。

 エリィに集まっている薄っすらとした魔力の形みたいなのがある。…エリィはまだ気付いていないみたいだな。

 精霊かな?その力添えがあって、頭から股まで順番に矢が突き立っていく。


「ふっ………!!!」


 何かに集中していたクスノが、ウッドゴーレム目掛けて駆ける。

 それを迎えるウッドゴーレムが腕を振り上げる。

 その腕の下を滑り込むように避けて、刺さっていた矢の中でも一番下のものを、魔力を纏わせた短剣の腹で押し込む。

 20cmほどめり込んで矢が折れた。

 それを何回も繰り返していく。


「………はぁ……はぁっ……!!!」


 何回も矢を押し込むのを繰り返して、攻撃をギリギリで躱していた上、一番高い場所は高さ2mにもなる矢を全力で押し込もうとしていた。

 全ての矢をある程度押し込むまで繰り返してれば、そりゃ息も上がるわ。

 その甲斐あって、ウッドゴーレムからミシミシという音が聞こえてくる。

 ウッドゴーレムの動きも悪くなって、段々と錆び付いたブリキの人形のようになってきている。


「これで…最後………!!」


 外側から内側へと段々と埋め込んだ矢も、中心にある矢がクスノの言葉通り最後の一本。

 埋め込んだ矢が点から線へと繋がり、縦に亀裂が入っていく。

 大きな岩を石切工が石材として割るときに、鉄の杭のようなものを点として順に打ち込んで、線にして割るのを見たことがある。

 ウッドゴーレムは木だけど、木にも繊維の向きがある。

 エリィにお願いして、亀裂を入れやすくなるように、炎を纏わせた短剣で印をつけた場所に矢を杭として放ってもらった。

 それを起点に、ウッドゴーレムの体である丸太をに、亀裂を広げるように矢を喰い込ませて割ったわけか。


「つ、疲れました………はぁっ…」

「…はぁっ………はぁっ………もう……動けない…」


 疲れて二人とも座り込む。

 エリィは魔力切れ、クスノはそれ(プラス)体力切れだな。


「二人ともお疲れ。魔物が出てくる部屋は、1回倒すと部屋から出るまでは魔物が出てこないから、今日はこの部屋で一泊しようか」

「分かり…ました……はぁ…」

「…分かった…はぁ…」


 今回は初めてウッドゴーレムと戦ったけど、レベルが上がってステータスも結構上がったみだいだ。

 ウッドゴーレムのレベルを見る限り、21階層からは普通に出てくるだろうから、明日はこの辺で二人のステータスを上げていこうか。

 21階層に入って、ウッドゴーレムを相手にする毎に、魔力切れになっていたら危ないしね。

 二人に飲み物を渡しながら、今日の小屋を作る。

 そういえば、ガルは…自分で倒して残った丸太をかじっている。

 ガルの食事はあれで良いのか…。

 昼食を食べた後、時間が空いたし、何しようかと考えながら外に出ると、一仕事終えたみたいな雰囲気を出したガルの前に、木でできたドラゴンの彫刻が出来上がっていた。何コレ。


「キュィー……!」


 ガルの中に人でも入ってんじゃないかね?


「僕も丸太を切り出して何か作ろうかな。北海道のお土産にあるような木彫りでも」

「シュウ様、ちょっと良いですか?…ってなんですかこれ!?」

「ドラゴン………?」

「ああ、なんかガルが丸太を齧って形を整えたみたいでね。二人ともどうしたの?」

「あれはあれですごく気になるんですけど、シュウ様の故郷の話を聞きたいと思いまして」

「僕の?」

「勇者の言い伝えはある。でも、年月が経って情報が断片化してる。だから、聞きたい」

「あー…その勇者と同じ場所の出身とは限らないけど、それでも良いかい?」

「はい」「うん」

「さて、まず何から話そうか…」


 思い出せる記憶の中から、できる限り二人に話していく。

 午後は思い出話を二人に話して、日が暮れていった。




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