第49話 「魔物部屋」
また短めです。
朝食後、探索を開始して18階層に入ると、今までの林とは景気が変わって地中のような装いになった。
「ここって18階層ですよね?」
「そうだね」
「上に見える穴の上は17階層じゃないの?」
「残念ながら違うと思う。さっきの穴から繋がっているなら、歩いている途中で崩れて18階層に落ちているんじゃないかな」
上に見える土の厚さを見るに、ブランチュウを支えるだけの厚さはあると思うけど、3人と1匹を支えるだけの厚みはないんだろう
「上の穴から差し込む光しか光源がないから、気をつけて行こう。ああ、そうか、結果的にだけど、クスノには感謝しないと」
「?…私?」
「ここで初めて火を使っていたら、とんでもないことになっていただろうしね。襲ってくるブランチュウの数もそうだけど、この天井の厚みだと天井ごと落ちてきた可能性もあったし」
生き埋めで死にはしないだろうけど、身動きが取り辛くなって、ブランチュウの大群に襲われていたかもしれない。
「エリィもクスノも、居てくれて本当に助かっているんだ。僕はこの世界の出身じゃないから、身寄りもないのと一緒だしね」
「キュィー!!」
「ゴメンゴメン。ガルにも勿論助けられているよ」
「一人っていうのが思ったより心細いかったからね。奴隷っていう出会いではあったけど、二人には特に感謝しているんだ」
そういう意味では、シグにも感謝はしてる。
性癖はあれだったけども。
「だから、エリィもクスノも…一緒に居てくれて、ありがとう」
「シュウ様、聞いてた?」
「ぼんやりとだけどね。悪いとは思っているけど」
「いえ、良いんです。シュウ様、私はこの世界では、この髪の所為で要らない子なんだと思っていました。でも、そんな私をシュウ様は必要として下さいました。だから、私の方こそ拾っていただいて、ありがとうございます…!」
「シュウ様、私も種族柄嫌われている。だから呪いをかけられて苦しまされた。でも、そんな私を…シュウ様が助けてくれた。だから、とても感謝してる。ありがとう」
二人に感謝して、感謝され。
ここがダンジョンだということを忘れて和やかな空気が流れる。
家族って、こんな感じなのかな。
僕の思い出せる記憶の中に、家族に関することはあんまりなかった。
雰囲気として、仲は良好だったんだろうなって覚えているぐらいだ。
基本的に思い出せることは、高校までの学校に関することや知識のみ。
それ以降は、大学までは行っていたっていうのが分かるぐらい。あとは少しの働いていた記憶。
卒業して働いていたのか、中途退学して働いていたのか、はたまた大学時代のアルバイトだったのかは分からない。
でも、思い出せなくても対して困らないんだよなー。
この世界で必要な知識って、文字通り0から覚える物ばかりだから、今の所は料理ぐらいしか役に立ってない気がするし。いや、これだけでも十分なんだけど。
「だから、シュウ様…これからも私達を傍に居させて欲しい」
「それは勿論」
「ありがとう。これでお風呂と寝る時も一緒」
「それは別で」
「私達と一緒は嫌?」
「………嫌…ではない…です」
好きか嫌いかで言えば、勿論好きだけどね!!
だって、男の子なんだもん!!
「シュウ様、クスノちゃん、ありがとうございます!」
「好きか嫌いかで聞けば、嫌いっていう男はいないってオリヴィエ店長が言ってた」
あんのオネエめ。またお前か!!
やっぱり、前回に会った時に、殴っておくべきだったか!!
またしても殴りたい理由が増えたな!
「っと、話している場合じゃないな。こっちにブランチュウが向かってくるよ」
「「はい!(分かった)」」
そのまま順調に進み、昼頃には19階層に辿り着いた。
「分かれ道が一杯あるから迷いそう」
「確かにね。…この辺まで来ると、魔物部屋がいくつかあるな」
「魔物部屋、ですか?」
「うん。ダンジョンの罠の一つなんだけど、部屋に入ると閉じ込められて強制的に魔物と戦わされる部屋なんだ。で、その部屋の魔物を全て倒さないといけないんだけど、場合によっては下の階層の魔物が居たりするから油断できないんだ」
「うっかり入ったりしたら、大変ですね」
「ああ、気を付けてくれ。このダンジョンのレベルからすると、あまりないと思うけど、転移罠で魔物部屋に送られるのもあるから」
「分かった。できるだけシュウ様に引っ付いておく」
「動きにくいから、それは却下ね」
「………冗談」
本当に?その間は何だったのかな?
「中には、そういうところに宝箱とか置いていたりするから、入ってみても良いんだけどね」
「でも、1回ぐらい魔物部屋を体験しておくべき」
「ふーむ、確かにそれはそうか。とりあえず一番近い所に入ってみようか」
一番近くは…思ったより広い部屋だな。火を使ったときに向かってきたブランチュウほどの数か、大型の魔物が出てきそうな…。
ここは却下だな。多分、下の階層の魔物が出てくる可能性が高そうだし。
となると、このちょっと狭い部屋にしておこうか。
仮に下の階層の魔物が出てきても、1体ぐらいで済みそうだ。
サーチフィールドを頼りに誘導していく。
そこには、3mほどの幅をあけて左右に切れ込みが入った壁があった。
「とりあえず、ここが良いと思う」
正面に立つと、目の前の壁がゴゴゴゴという音とともに、自動で上がっていった。
「こうなっているんですね。早速入ってみましょう、シュウ様」
「そうだね。何が出るかは分からないから油断しないでね」
「分かった」
中に入ると、10m四方の部屋の真ん中に、ポツンと一つの木の宝箱が置いてあった。
あ、これ罠っぽい。




