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第48話 「ブランチュウ」



■名前:ブランチュウ

種 族:動植獣種

年 齢:16

性 別:♂

レベル:16

クラス:ブランチュウ

状 態:普通


●スキル:『探知Lv2』『危機察知Lv2』『麻痺攻撃Lv1』


 背中の針が全部枝になっているハリネズミみたいな魔物だった。

 丸くなると、60cmぐらいのトゲ付ボールって感じだな。

 3匹ほどのブランチュウと目が合うと、こちらへと向かってくる。


「シュウ様、私が行く」


 クスノが短剣に炎を纏わせて斬りつける。

 すると、ちょっと炎がかすっただけなのに、背中の枝に一瞬で燃え移った。


「チュゥウウウ!!!!!」


 他の2匹が炎に驚いて、叫び声をあげる。 


「な、なんですか…?」


 様子を見るためにしばらく待っていると、こちらへと近付く地響きの音が聞こえてきた。


「………下?」


 サーチフィールドで探ると、林の中に無数の穴が空いていて、全ての穴がつながっているようだ。

 その地下穴を、大量のブランチュウが押し寄せてくる。

 あ、これ、やばいかも。


「『ハードブロック』『アースニードル』」


 土に含まれる砂鉄を多めに抜き出し、僕達の足元を硬く固定する。

 その後、それ以外の部分を、足元を中心として正面以外をトゲ状に展開していく。


「走って抜けるよ!」

「は、はいっ!」

「分かった…!」

「キュィー!!」


 僕、クスノ、エリィ、ガルの順に並んで走っていく。

 途中、地面に空いている無数の穴から、ブランチュウが湧き出しては飛んでくる。

 それを片手間に水や土の粒をぶつけて倒していく。


「シュウ様、穴を塞ぐのは…」

「数が多すぎて無理!!」


 もぐら叩きも真っ青な物量だ。チュウチュウうるさい!

 いっその事、水で押し流したほうが早いかもしれない。

 足元が泥上になって崩れるかもしれないからやらないけど。


「とりあえず二人とも頑張ってっ!!」






「…はぁ……はぁ…」

「ぅ……はぁ………な、なんとか逃げれましたね」

「そうだね…」


 逃げ続けること約10分。

 陽が落ちる頃、17階層まで逃げることで、なんとかブランチュウハザードから逃れられた。

 ハザードって表現で合ってたっけ?まあ、いいや。


「とりあえず分かったのは、ブランチュウに火は禁止ってことかな」

「そう……はぁ……みたい…ですね…」

「……はぁ……反省……」


 視界を埋め尽くすほどの勢いで迫ってきたからね。

 正直なところ、埋まるかと思った。


「とりあえず、今日はここに小屋を作って明日に備えよう」


 場合によっては、交代して仮眠にしないといけないかな。冒険者や探索者としてはそれが普通なんだけどね。

 急いで小屋を作り、壁の中に砂鉄を抽出して作った鉄板を入れて、地面も含めて厚めに作っておく。

 この日は軽めに晩御飯を食べ、お風呂に入って寝た。

 翌朝、ブランチュウが入ってくることもなく、朝食を食べた後、探索を開始する。


「ここからは慎重に行こう。昨日みたいなことが、他にもないとは限らないからね」

「はい」

「分かった」

「キュィー」


 サーチフィールドで探りながら進むと、木の根元や岩の陰にある穴の中に、ブランチュウたちが隠れているのがわかる。

 僕たちの誰かが、穴にある程度近付いたり、偶々(たまたま)地面の下に通るための通路があったりすると穴から出て襲ってくるというのが分かった。

 そして、とても数が多い…。


「とても多いですね…」

「多い…」

「しかも、前後左右だけじゃなくて、上とか真下からも襲ってくるからな」


 木の中にも巣を掘り進めているのか、偶に樹洞じゅどうから飛び出してくるブランチュウもいる。

 なにより、今までの魔物もそれなりに連携をしてきたけど、このブランチュウは特に連携が上手い。

 足元から襲う奴と木の上から襲う奴、前後、左右同時等々、常に2体以上で襲ってくる。

 地面がかなりデコボコしているために、あまり下ばかり気にしていると、上から襲ってくるやつの対応に遅れる。

 逆に上ばかり警戒していると、デコボコしている地面や空いている穴に足を取られて体勢を崩す。

 そのため、他の階層に比べて進みがどうしても遅くなる。

 ダンジョンを作る側としては参考になるけど、攻略するにはとても面倒だ。


「おっと!」

「いきますっ!」

「…ほっ…!」

「キューィー!!」


 たまに、他の階層の魔物も混じっているので、木の実が飛んできたり、葉っぱや木に吊るされて擬態していたりするので大変だ。

 僕のサーチフィールドで、地中にいるブランチュウや、飛んでくるシードクラッカーの木の実などは分かるけど、それを二人に伝える口は一つしかない。

 ガルも危機察知能力は高いけど、言葉を話せるわけじゃないから、完全に自分用。

 どうしようかと思っていたら、エリィがすごくなっていた。


「上から2匹、左後ろから1匹、来るよ!」


 と、僕が声をかけた頃には、エリィが弓を放っていた。

 僕のサーチフィールドは、大体30mぐらいの範囲に広げている。

 けど、エリィは僕のサーチフィールドより外にいる魔物の動きを理解していた。


「エリィ、すごいね。大丈夫?」

「あ、はい!風の音?というか流れみたいなものから、なんとなく動きが分かるというか」


 エルフは森などの木が多い場所に住んでいる。

 そのため、風の流れに敏感で、音や空気の流れによる空間把握能力が高い。

 エルフが風魔法を得意とするのは、そういった環境があるからだろう。


「無理はしてないので、大丈夫です!」

「分かった。頼りにしてるよ」

「はいっ!」


 そのまま進み続けて、なんとか夕方に18層までくることができた。

 いつも通り、小屋を作って食事を取り、お風呂を済ませて布団に入る。

 二人に挟まれて、うつらうつらとしていると、ぼんやりと二人の会話が聞こえてきた。


「今日、すごかった…」

「私ですか?」

「そう。張り切ってた?」

「そうですね。今まではあまり役に立てていなかったように思います」

「そんなことはないと思う」

「正直なところ、クスノちゃんが魔法を使ったりして、シュウ様の役に立てているのが羨ましかったんです」

「私?」

「二人でシュウ様に挑んだときも、シュウ様が褒めていたじゃないですか」

「でも、私は今日…ブランチュウに火を使って失敗した…」

「それでも、積極的に前に出ようとしていたじゃないですか。私は後ろにいるだけが多かったですから、今日初めてシュウ様に頼りにされて嬉しかったんです。これでクスノちゃんと並べそうだ、って」

「私は…」

「シュウ様の強さからすると、私がいる意味はあまりないのかもしれません。けど、お荷物にはなりたくなかったんです」

「それは、私も一緒。シュウ様についていきたかった」

「だから、少しでも頼られたのが嬉しかったんです」

「そう…」

「これからも二人で頑張りましょう、クスノちゃん」

「うん。頑張ろう、エリィちゃん」


 二人とも、ちょっと不安だったのか。

 これはちゃんと言葉にしなかった僕が悪かったな。

 明日からは、ちゃんと言葉にして二人に伝えよう。



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