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第43話 「報復」



 翌日、目が覚めると、エリィとクスノが僕の両腕を抱きしめて寝ていた。

 あれ?おかしいな。

 昨日は、『蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)』の後始末をして、ベッドに入る時にそれぞれ別のベッドで寝ているのを確認してから寝たはずなんだけど。


「………んっ………」

「……ん……ぅ…」


 両腕を動かせない上に、両側から聞こえる吐息が………!

 二人の格好は、オネエ店長のオススメ服であるネグリジェ。

 今は部屋の中も暗く、布団の中なので細かい所は分からないけど、エリィが着ているものと同じようなものだというのは分かる。

 しかも、エリィは普通に抱えているだけなのに、クスノは僕の腕を、というか手を足に挟んでいる。

 僕が少しでも動かせば、当たってはいけないところに当たってしまう…!

 クスノは、賢いから単純に抱きしめて寝ているのか、わざと足に挟んでいるのか図りかねる。確信犯かと疑ってしまうね。


「………」


 もしかして、この状態って二人が起きるまで動けない?

 どうしよう…。

 仕方ない。サーチフィールドを、冒険者ギルドの前まで範囲を広げる。ここからだとそれなりに近いしね。

 おー、人が集まってる集まってる。

 昨日の成果が出てるって事かね。

 確認は終わったし、周りの町の様子でも探ってみるかな。

 一般家庭の日常とか知らないし、いい機会だ。

 一方的に感じ取れるから、半分盗撮みたいなのが嫌だけど。

 この町の人の流れがよく分かるなー。

 っていうか、この人の流れって冒険者ギルドに行く方向だ。僕が昨日やらかしたのがこの流れを作っているのか。なんかゴメン。 

 もう良いや。寝よ。






「おはようございます、シュウ様」

「おはよう、シュウ様」

「………おはよう」


 結局寝れなくて、二人が起きるまで同じ体勢でいた。

 緊張で体を強張らせていたから、体の節々が痛い。


「いつのまに布団に?昨日はちゃんと別々に寝ていたよね?」

「シュウ様が寝てから、です」

「シュウ様が、外で魔法を使ったのが分かったから、帰ってくるまで寝たフリをしてた」


 Oh…昨日、僕が何をしてたのか魔力を感じ取って知ってたわけね。


「何をしてきたんですか?」

「…散歩?」

「なんで疑問系?」

「まあ、大した事じゃないよ。ちょっかいを出そうとした人たちにお仕置きしたぐらいだし」

「お仕置き?」

「そう。外での喧騒と何か関係してる?」

「…とりあえず、起きて冒険者ギルドへ行こうか」

「分かった。着替える…」

「僕が出てからねっ!!」


 急いで部屋を出る。

 着替え終わったエリィとクスノと一緒に食堂へ行き、食事を取って冒険者ギルドへ向かう。

 そこではすでに騎士団と思わしき人たちが人を散らしていた。

 あらら、もう片付いちゃったか。


「それで、シュウ様は何をしたんですか?」


 特に何も?と言おうとしたら、後ろから声をかけられた。


「おおっ!シュウ君か。丁度良かった、探していたんじゃよ」


 振り返ったそこには、ギルド長がいた。


「僕をですか?何でしょうか?」

「いや、何、少し聞きたいことがあっての」

「はあ」

「今朝方、蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)の面々が、冒険者ギルドの前に打ち捨てられておってな」

「へえ、そうなんですか」

「何故か、全裸で全身を縄で縛られていた上に、ご丁寧にも石製の柱に括りつけられておってなぁ」

「手の込んだことをする人がいたもんですね」

「しかも、全員が〝闇討しても負け犬〟なんて札がかけられておってのぅ。その上、そやつらの足元に衣服や装備の入った袋と、猛毒入りのビンが入った小さい袋があっての。ちょっと騒ぎになったぐらいじゃ」

「猛毒入りのビンですか、どういった毒なんでしょう?」

「騎士団の者と儂ら冒険者ギルドの見解では、即死性の毒じゃったよ。ただ、それを作るための材料が特殊でのぅ。並みの人には手が届かない物が多くてのう。騎士団がその毒の出所を探すと息巻いておったが…まあ、多分無駄じゃろう」

「それなりの権力を持った人が行ったから、ですか?」

「まあそれは別に構わんのじゃよ。ただ、………この騒ぎで、冒険者ギルドの前に一般市民が集まって大変じゃったんじゃが―――」

「いやー酷いことをする人がいたもんですねぇ」

「シュウ君じゃろう?」

「何のことかさっぱり分かりませんねー」

「まあ、ええか。正直、懲りずに復讐なんぞするやつらじゃし、正式に冒険者ギルドと探索者ギルドから除名の通知を出した」

「へえ、両方からですか」

「しかも状況から言って、毒を使っての暗殺までしようとしたのは明白じゃしな。騎士団に連れて行かれたわ」

「そうですか」

「それじゃあの。儂が聞きたいことは聞けたし。ああ、そうそう、最後に一つだけ」

「何です?」

蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)が使い捨てにしようとした奴隷の数が一人合わないらしいんじゃが…何か知らんかね?狐耳族ルナーユだったらしいんじゃが」

「さあ、残念ながら知りませんね。その奴隷が何か?」

「いや、何。確認じゃよ。最後に独り言じゃが、蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)が使い捨てる予定の奴隷が数人おったそうじゃが、ゴルドーという商人が引き取ったという話じゃ。ではの」

「………」


 やっぱり誰がアレをやったのか、気付かれていたか。

 まあ、前に報復されたらやり返しますよ?っていう言質は取っているから、知っててわざと言ってきたんだろうけど。

 エリィの髪を撫でる。


「シュ、シュウ様?」


 うん、やっぱり気持ち悪いどころか、とてもキレイで気持ちが良い。

 あいつらは見る目がなかったな。


「あの、今の話ってシュウ様…ですよね?」

「さてね。今まで好き勝手してたから、それが自分に返ってきただけの話じゃないかな」

「自業自得」


 クスノにとっては、あいつらは加害者だ。


「何?」


 何か思うところはないかと思って顔を見ると、特に気にしてはいないようだった。

 単に表情では分かりにくいだけかもしれないけど。


「私はシュウ様に拾われて幸せ。それで良い」


 気にしてないなら良いかな。

 クスノの頭も撫でる。


「んっ………」

「とりあえず、買い物した後にガルの所へと戻ろうか」

「はい」

「分かった」






「キュィー…zzz」

「………呑気に寝ているな」


 昼頃過ぎに『森木』のダンジョンの5階層に戻ってくると、ガルが裏返って寝ていた。

 本当にこいつは芋虫なんだろうか。

 しかも、周りにはカッターリーフが群がって攻撃している。

 ただ、ガルの皮膚は見た目以上に硬く、Lv5のカッターリーフの攻撃程度では傷一つ付かない。

 寝ぼけているのか、口元に近いカッターリーフがムシャムシャと捕食されていっている。


「おーい、ガル。帰ってきたぞー」

「キュィ?キュィキュィー!」

「とりあえず、周りのカッターリーフを片付ける…って、もう片付いたな」


 ガルが寝返りを打っただけで、群がっていたカッターリーフは潰れて消えた。

 魔石も潰れて消えた気がする。

 まあ、いいか。

 6階層まで降りて、さっさと進む。

 前回と違ってちゃんとした防具を付けているから、プランテスの蔓に当たっても問題なさそうだ。

 軽々とクスノがプランテスと隠れているカッターリーフを刈り取っていく。


「クスノちゃん、そろそろ交代しましょう」

「分かった。頑張って」


 魔力を流し込んでいたエリィが手を離して、クスノと交代する。

 すると、クスノは僕の腕を抱えるように抱きついてきた。


「いや、クスノ。手を繋いでいれば大丈夫だから」

「シュウ様、こういうのは接している場所が多い方が良い」

「いや、そういうもんじゃないんだけど」


 一応ここ、ダンジョンなんですけどね?

 あ、ダンジョン内を全力で走らされた僕が言えた義理じゃないわ。

 エリィは始めは遠距離の弓で戦って、次第に慣れてきたのかナイフを持って近接で戦うようになった。


「うっ!」

「大丈夫かー?」

「大丈夫、です!」


 プランテスの蔓を何回か当てられて、痛みを堪えていたけど、声をかけると気丈に返事を返して再度プランテスに向かっていった。


「シュウ様は過保護」

「そ、そうかな?」

「もうちょっと私達を信用して欲しい。ちょっと怪我したぐらいで動けなくなるなら冒険者としてやっていけない」

「まあ、そうなんだけどね」

「シュウ様のその優しい気持ちは嬉しく思う。だから、気持ちは受け取っておく」

「そうか」

「そう」


 クスノと手を繋いで話していると、突然不穏な魔力が集まってきた。

 これは、まさか!


「エリィ、下がって!何か来る!」

「は、はいっ!!」


 エリィが下がってきて、元いた場所の上には、通常のプランテスの3倍ぐらい大きい毒々しい紫色のプランテスが落ちてきた。




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