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第42話 「夜襲」

 冒険者ギルドを出て、宿屋を目指す。

 もう空は夕方になっていた。

 ガルには悪いけど、今日はホップリ亭で泊まっていく予定だ。


「おや、いらっしゃい。遠出してたのかい?ここ数日顔を見なかったけど」

「ええ、まあそんな感じです。今日は3人でお願いします。従魔は今日はいないので」

「3人だね。分かったよ。それにしても、テイマーが従魔と離れるなんて珍しいね。どこかに預けているのかい?」

「ええ。ちょっと急いでいたもので」

「そうかい。鍵はこれだよ。部屋は1階の一番近い部屋だ」

「ありがとうございます」


 鍵を受け取って、夕飯を食べる。

 相変わらずここのシチューは美味い。

 3人で食事を終え、部屋へと戻る。

 桶にお湯を入れ、アイテムボックスからタオルを出して二人に渡す。


「お風呂…入りたい」

「そうですね。一度お風呂に入ると、お湯で体を拭くだけでは物足りない気がしますね」

「今日は特に汗をかいた」

「今日は我慢してくれ。明日は向こうに戻るから、お風呂に入れるし」


 気持ちはよく分かる。

 本来なら、水を汲んできて、火を焚き、調整しながら入らないといけないけど、今では魔法一つで済ませられる。


「じゃあ、僕はちょっと外に出てくるから、二人とも早めに休んでてくれ」

「どこか行くんですか、シュウ様?」

「色町?」

「いや、違うから」


 そもそも、ルイズリーの町に色町があるかどうかなんて知らないし。

 っていうか、クスノは僕をそういう目で見てたの!?

 地味に…傷付く。いや、冗談って分かってるんだけど。


「色町?って何ですか?」

「………」


 やめて、エリィ!その話は僕に振らないで!

 仕方ない。

 その話を振ったのはクスノだからな。


「クスノが教えてくれるって」

「分かった。教えておく」

「少しは躊躇ってくれ………!!」

「大丈夫。シュウ様、恥ずかしいことじゃない。男の人はそういうものって母様が言ってた」


 出会った事はないけど、母様ー!!あんた娘に何教えてんだっ!


「まあ、良いや。体拭くのに僕がこの部屋に居ちゃダメでしょ。そのついでに、ちょっと散歩行ってくるだけだから」

「一緒にお風呂入ったのに、今更」

「私は、その、ちょっと恥ずかしいですけど…」

「じゃあちょっと行ってくるから」


 二人がこれ以上なにかを言う前に退散する。


「おや、あんた。こんな時間にどこへ行くんだい?」

「女将さん。ちょっと寝れないので軽く散歩してこようかと思って」

「夜に出歩くと危険だよ」

「ははは、ありがとうございます。気をつけます」


 店の外へ出て、伸びをする。

 深呼吸とともに、発動しっぱなしのサーチフィールドを頼りに移動する。

 店と店の間に通りかかった時、路地の暗闇から僕を掴もうと腕が伸びてきた。

 その腕を逆に掴んで、引っぱって蹴り上げる。


「ぐほっ!!」


 僕が蹴って転がしたものを見ると、黒い衣装に身を包んだ男が一人。

 掴もうとした腕とは反対側に持っていたものが地面へと転がる。

 夜に溶け込むように黒塗りされたナイフだった。

 しかも、毒々しい液体が滴っている。毒か。


「冒険者ギルドから、尾行けていたのは知っていたよ。何の用かな?」


 暗闇に向かって話しかけても、反応はない。

 と思ったら、返事の代わりにナイフが飛んできた。

 それを、剣の鞘で打ち返すと、また一人倒れた。


「まあ、大体予想はついているんだけどね。『蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)』でしょ?あんたら」


 目に見えるわけじゃないけど、動揺した空気が伝わってくる。

 これぐらいで動揺するぐらいなら、夜襲なんてやめておけば良いのに。


「今日、冒険者ギルドに寄って聞いたんだよね。最近『蜥蜴の尻尾(あんたら)』が依頼を失敗してばかりいるっていう話」

「テメェの所為で!!最近、周りから白い目で見られるんだよ!!」

「馬鹿ですか?自業自得でしょう?」

「なんだとてめぇ!!」

「だってそうでしょう?新人を暴力で黙らせて好き放題してたくせに、自分達がやられたらキレるって。今まで自分達がやってきたことが返ってきただけのことでしょうに」

「うるせぇ!!俺達は新人を教育してやっただけだぁ!!感謝こそされ笑われる筋合いはねぇ!!」

「教育?あなたたちが自分達に都合よくやったことに比べれば、僕がやった訓練ことなんて可愛い物だと思いますがね」


 僕の言葉に反応してか、暗闇の中で気配が大きくなる。

 普通、こっちからは見えないんだから、気配を隠し続けなきゃ意味ないだろうに。

 僕にはサーチフィールドがあるから意味がないけどな。


「それにテメェが連れてる狐耳族ルナーユ!!あれは俺達のもんだ!!盗んだ奴に仕返しをしようとして何が悪いっ!!」

「盗んだ?失礼ですね。あの子は、あなたたちの仲間に譲ってくれって説得したら、素直に譲ってくれただけですよ。盗むとは人聞き悪い」


 脅迫せっとくしたのは事実だけど。


「あと、声を抑えた方が良いんじゃないですかね?そんなに大きな声を出していたら、周りの人が起きてきちゃいますよ?」

「うるせぇ!!テメエのおかげで死んだ仲間の仇、取らせてもらうぜぇ!!」


 なんだ。あのダンジョンに置いてきたのは死んだのか。

 まあ、そうなるようにしたんだけど。


「前も手加減して負けたのに、勝てると思っているんですか?」

「はっ!それはどうだろうな?テメェ動くんじゃねえぞ? 俺の仲間があの気味のわりぃエルフと狐耳族ルナーユを人質に取ってんだからな!!!」


 サーチフィールドを展開してるからそっちの動きは知っているんですけどね。それより、


「今なんて言った?気味の悪い?」


 誰が?エルフって言ったな。エリィの、ことか。

 一瞬で戦闘の男へと近付き、頭を片手で掴んで持ち上げる。


「撤回しろ」

「ぎゃぁああ!!!!!」


 僕のサーチフィールドは、このルイズリーの町の実に4分の1の広さまで範囲がある。

 つまり、僕や宿を包囲しているやつは全員把握済み。

 サーチフィールドを水の球体、『ウォーターバブル』に変換。

 宿の近くにいた男二人の頭を、水の泡で包み込む。

 騒がれるともの凄く面倒だからね。

 それを目の前の男たちにも同じようにする。今度は首から下を包み込むように。

 ついでに、僕とこいつらを覆うように、音を遮断する風の壁を展開する。

 近所迷惑だからね。


「な、なんだっ!!?」

「動けねぇっ!!」

「うわぁっ!!!」


 全員捕らえたのを確認してさらに路地裏へと入る。全員の顔が見えるように。

 それぞれの顔を見回すと、ソーサラーの女がいて、周りのやつらより顔を青くして怯えているのが分かる。


「お、お前、魔法使いだったのか!?いや、そもそも詠唱が………」


 ぶつぶつと独り言を呟いているソーサラーの女。後半は声が小さくて聞こえなかった。


「どうかしましたか?」

「ひ、ひいっ!!」


 僕が声をかけると、まるで化け物に出会ったかのような顔をする。

 失礼だな。


「撤回して下さい」

「あぁぁああああ!!!!痛ぇえええ!!!!!」


 掴んでいた手を離す。


「撤回、して下さい」

「なんだぅぐっ!!」


 顔に水の弾をぶつける。


「聞こえませんでしたか?撤回して下さい」

「な、何をだっ!!」

「うぶっ!!!…ごぼっ!!」


 なんだ、分かっていないのか。

 再度顔に水の弾をぶつけて包む。今度は隣にいた男に。


「気持ち悪いと言った事です。撤回して下さい」

「あぁ!!?」

「あがっ!!…ブクブクッ!!」


 今度は反対側の男に当てて包む。


「撤回して下さい。でないと、仲間が窒息死しますよ?」

「わ、分かったぁ!!謝る、謝るからよぉおお!!!!!」

「まあ、許さないけどね」

「なんだとぉ!!?」

「毒まで使おうとして命を奪いにきたのに、許す奴がいるか?」

「て、テメェ!!」

「丁度良いから、死んでもらいましょうか」


 体を覆っている水球を操作して、それぞれが持っている武器を握らせる。


「お、おい待てよっ!!本当に殺すつもりじゃあねぇだろうな!!?」

「殺す?違いますね。自殺してもらうんですよ。その毒が塗られた刃物でね」

「や、やめろぉ!!」

「私は止めようとしたのよっ!!?」

「うわぁああ!!!死にたくねぇよぉ!!」


 それをそれぞれ自分達に向けさせて、最後の言葉を紡ぐ。


「さようなら」




ブラックシューって美味しそうですね。

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