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第39話 「魔力 の 使 い 方」



「雷魔法、ですか?」

「そう、僕が初めて使った魔法は雷だね」

「シュウ様は、基本4属性より先に合成魔法を使ったってこと?」

「うん」


 ダールソンさんが、洞窟をダンジョンまで掘削するために見せてくれた魔法は詠唱をしていた。

 ファンタジーの住人であるエルダーリッチのダールソンさんや吸血鬼のシグ、エルフのエリィ、狐耳族ルナーユのクスノが、詠唱をして魔法を使っているのを見ても、僕は格好良いと思うぐらいで違和感を感じないと思う。

 でも、平成日本からこの世界へと来た僕が詠唱するのはなんか恥ずかしい。

 これが漫画やアニメ、小説などの創作物なら格好良いで済ませられるんだけどねー。

 僕が中学生、いや、学生であった時は、一人でいるときに真似してみたりはしてたけどね。

 人前とか戦う時には嫌だなーって思っていた。

 だから、どうにかして詠唱をしないで魔法を使えないものかと考えた。


「僕はちょっと特殊な方法で魔法に見せている(・・・・・)だけだからね。実際には魔法とは呼べないと思うよ」

「魔法じゃない…んですか?」

「この世界の魔法とは発動方法が違うからっていうそれだけなんだけどね。発動した後の結果は魔法と一緒っていうだけで」

「どうやってるの?」

「一般的な魔法っていうのは、魔力というものを詠唱という言葉で魔法を形作って発動する。でも、僕がやっているのは魔力そのものを直接操作して変換して発動しているんだ」

「魔力…?それは感じられるもの?」

「訓練次第では、かな。僕に教えてくれた人曰く、他の人にそれを言っても信じてもらえなかったらしいけどね」

「それも納得。固定された常識は、簡単には覆らない」


 クスノは時々本当に10歳?っていうぐらい発言が的確だな。

 町に入る時に、ゴルドーさんから狐耳族ルナーユは狡賢いって聞いていたけど、単純に賢いだけなんだろうな。

 ゴルドーさんには申し訳ないけど、こういうのはやっぱり実際に触れてみないと分からないんだろうな。

 でも、獅子族ソレイグルは………名前的にどうかなー。

 物理で訴えてくるのは分かりやすいけど、話を聞く限り戦闘狂っぽい種族なんだよな。

 まあ、実際に接してみないと分からないところなんだけど。


「だから、エリィもクスノも訓練次第では使えるかもしれないからね。とりあえずダンジョンを進みながら、どっちかと手を繋ごうか。で、魔力を流してそれを感じるのに集中してもらう。その間にもう一人が魔物を相手するってことで。ガルも頼むよ」

「キュィ!」

「じゃあ、どっちからにする?」


 二人は目配せあって、エリィに決まった。


「できるだけ魔力を流す手に集中して」

「はいっ」


 手を繋ぐ僕達の前で、ガルを連れてカッターリーフを狩るクスノがいた。


「ふっ!」


 両側から迫っていた2体のカッターリーフを難なく捌いていく。

 ふりふりと揺れる狐尻尾についつい視線を奪われる。あの尻尾をもふもふしたい。かわいい。

 そんな僕を横からじーっと見ているエリィ。


「シュウ様、どこを見ているんですか?」


 女の勘ってやつかな?物凄く鋭い。いや、別に咎められたわけじゃないはずだ。

 だから、ここは正直言おう。


「尻尾」

「………シュウ様はクスノちゃんの尻尾が好きなんですか?」

「うん、ちょっともふもふしてみたいよね。髪もふわふわしてたし」


 いや、ちょっとどころじゃない。思いっきりもふもふしたい!

 いかんな。僕は、動物の中では狐はかなり好きな動物なんだ。しかも、クスノの髪は、とてもふわふわしていて触り心地抜群だった。それをクスノの体ほどもある大きな尻尾全部で堪能できたらと思うと…。

 正直抱き枕に最高だと思う。

 ダメだな。クスノの言う通り、手を出しちゃいけない理由が僕の中で年齢ぐらいしかない。

 勢いに押されて手を出しかねないな。

 僕がこの年齢の時は、こんなにも自制ができなかっただろうか。いや、日本では逮捕とかその後のことを考えたりして、絶対やらないっていう考えがどっかにあったはずだ。

 でも、この世界では本人たちの同意さえあれば、ダメなことはほとんどないと言えると思う。

 貴族がこの世界の未成年に手を出してても普通っていう考えっぽいしな。そう考えると法律ってちゃんと意味あったんだな。当時暮らしている時にはそんなに考えたことはなかったけど。


「確かに、クスノちゃんの尻尾は触りたくなりますよね。私も触ってみたいですし」

「手入れが大変そうだよな。正直なところ、ブラッシングしてみたい」

「………二人とも聞こえてる。魔力は?」

「ずっと流し続けてるよ。エリィ、僕が送る魔力は感じられるんだよね?自分でも操作できそう?」

「なんだか、そこら辺にもシュウ様の魔力を感じてておかしな感じがします。なんだか、包まれているみたいで」

「あー………サーチフィールド使っているからかな。解除してみるね。………どうかな?」

「あっ!はっきりと分かります。この周りに出していたのもシュウ様の魔力なんですね…」


 そう言うと、エリィは目を瞑って周りに魔力を放出する。


「おおーっ!そのまま魔力で空気を動かす感じで…おっと」

「………ふ、ふらふらします…」


 倒れそうになるエリィの手を引っ張って抱き起こす。ステータスを見てみると魔力がほぼ0になっている。


「魔力の使い過ぎだね。ちょっと横になって休んでいるといい。ガルー、エリィを頼む」

「キュィー!」


 ガルの上にエリィを横たえる。

 移動が遅いガルは、その移動速度もあって振動も少ない。というかほぼない。


「魔力がなくなりそうな感覚も覚えておくと良いよ。同じことになる前に止めれるのがベストだね。深呼吸をして周りから魔力を取り込む感じで」

「次は私。魔物はどうするの?」

「僕が相手しよう。素材の回収も魔法でやればできるし」

「本当に便利」

「僕もそう思ってるよ」


 便利過ぎて、魔法を使わない時がほとんどないぐらいに。

 でも、頼りすぎてもいけないからどっかで線引きしないとな。

 ゲームとかだと魔法やスキル禁止のダンジョンとかあるかもしれないし。


「じゃあ、クスノにも魔力を流すね」

「分かった。………んっ」

「………」


 わざとじゃないと思うけど、反応が…。いや、僕の頭がピンク色なだけですね、分かります。


「これが魔力?」

「そうだね。クスノは魔法を使えるから、魔法を使うときに自分の中から抜けていくものに集中してみると分かりやすいかもね」

「頑張る」


 魔法の訓練をしながら歩いたのもあって、夕方になる頃には6階層への階段の前に到着した。


「今日はここまでにしようか。二人ともお疲れ」


 二人が息も絶え絶えになりながら、階段横の壁に体を預けて休憩している。

 気怠けだるくて、返事をする余裕もないようだ。


「魔法を使い慣れていないとそんだけ疲れるのも仕方ないと思うよ」


 二人に話しかけながら、階段横の壁に魔法で小屋を作っていく。


「やっぱり……はぁ……はぁ……シュウ様は…すごい……ですね。私達に…ずっと……入れ続けていた…のに、疲れる素振が…はぁ……見えません」

「シュウ様は……はぁ…底無し…はぁ」

「そりゃあ、ずっと使ってきたからね」


 ダンジョンを全力で走らされながら。

 1ヶ月ほぼ全部だもんなー。

 スパルタ過ぎる。今なら分かる。あんなの絶対おかしいよ。


「休むなら小屋の中で休んだ方が良い」

「……はぁ………そうしたい…んです…けど」

「………シュウ様、抱っこで連れてって欲しい」

「うーん。まあ、今日は仕方ないか」


 二人とも、まったく動けそうにないみたいだし。


「今日は特別ってことで。二人とも魔力を操るのは少しできたからね。ちょっと待ってて」


 小屋の中に、食事で使う机と椅子、寝るためのベッドを作る。ベッドはちゃんと3つ作った。

 今日は疲れて動けないだろうからね。一人で寝る方が良い。


 外へ出ると一匹のカッターリーフが森の中から出てきた。そうだ、これも忘れてた。


「二人に説明を忘れていたんだけど、、魔力そのものを塊として飛ばして攻撃することもできる。こんな風にね」


 人差し指を伸ばしてカッターリーフへと向けて親指を立てる。

 手で銃の形を真似て、人差し指の先に魔力を集めて弾を撃つように動かす。

 その瞬間、カッターリーフが爆散した。


「…す、すごい」

「魔法より強い…」

「まあ、これは戦い方の一つぐらいに覚えておけば良いよ。その内二人もできるようになると思う」


 驚いている二人を、一人ずつ抱き上げてベッドへと運ぶ。

 その日は、二人とも食事の後、疲れですぐに寝た。

 僕は(気分的に)久々にのんびりとお風呂に入ったけど、なにか物足りない気がした。




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