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第38話 「二人 の 実力」

タイトルだけでは分からないと思うのですが、何故かお風呂に入るシーンがある時は少しPVが伸びる不思議。貴様っ!見ているなっ!!


 魔法で、ダンジョンの木々を引っこ抜いて30m四方ほど整地した。

 僕と二人の距離は5mほどだ。

 ちなみに僕は、武器どころが防具すら身に付けていない。


「じゃあ、始めようか」


 始め、まで言ったところで、クスノがこちらに向かって短剣を投擲する。

 短剣の狙いは僕の心臓か。良いね。クスノはよく分かってる。開始の合図なんて、あってないような物だ。

 エリィはクスノの攻撃に驚いている。

 というか、表情では分かりにくいけど、クスノは2対1で相手をすることに不満っぽい顔をしてる気がする。

 意外と子供っぽいというか、負けず嫌いというか。僕もそういうところがあるから、ちょっと微笑ましい。

 でもまあ、今日はどれだけ戦えるかが重要だし、一度返すか。


「返すぞー、クスノ」


 短剣を、人差し指と中指で挟むように受け止める。

 それを取っ手をクスノに向けて、受け取りやすいようにふんわりと投げる。


「っ!!」


 その行為がさらにクスノを煽る事になって、表情が不満っぽい顔から不満な顔になる。


「絶対に、当てる………!」

「エリィも遠慮しなくて良いぞー」

「で、でも」

「じゃあ、二人とも遠慮なく向かってこれたら、このダンジョンにいる間は毎日夕食にデザートを付けてあげよう」

「!! 行きますっ!」

「デザート………!!」


 クスノから迫り来る2本の短剣は、非常にやりにくい。

 身長が低いのもあるけど、短剣のどっちかに集中すると、片方を囮にするかのようにフェイントを入れてくるし、僕が攻撃しない宣言をしたからか、遠慮なく斬りかかってきている。

 短剣2本を使っているのもあって、首を狙って下から掬い上げるような軌道の途中で逆手に持ち替えてお腹を狙ってきたり、短剣だけかと思うと蹴りが飛んできたり。

 変則的に狙う場所、戦い方を変えるもんだから、ナイフに当たらないように手を押して逸らしたり、払ったりして避けるスペースを作って逃げている状態だ。

 ちょっとでも気を抜くと、すぐにフェイントに掛かってしまいそうだ。

 エリィはそんなクスノを見て、挟み撃ちできるように反対側に回ったり注意を引くように軽く斬りつけるようにしてくる。

 そのエリィの攻撃に合わせるようにクスノが足払いをかけてきた。

 二人は今日初めて一緒に戦うはずなのに、デザートという一緒の目標があるからか、『蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)』よりよっぽど良い連携をしてくる。

 正直、初めて一緒に戦うとは思えないぐらい息を合わせてきている。女の子の甘味に対する執着を甘く見ていたな。

 僕が二人を相手にしても、簡単にヒョイヒョイと躱すのが気に入らないのか、クスノの頬が心なしか膨れている気がする。かわいい。


「っ!………我が内に宿る篝火よ―――」


 うおっ!?マジか!

 ダールソンさんに聞いた並行詠唱ってやつだな…!

 体内の魔力操作を間違えると、魔力暴走を起こして、自らが自身の魔法で焼かれる羽目になる。

 『蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)』のソーサラーがやらかしたやつだ。

 魔法の詠唱はとても集中力がいるらしい。だから、ソーサラーの女は移動をせずに詠唱していた。むしろそれが普通の魔法使いらしい。

 でも、クスノは詠唱だけじゃなくて、攻撃と移動もしながら詠唱している。

 詠唱と移動だけでも相当難易度が上がるのに、こっちへのフェイントを絡めた攻撃をしながらでも詠唱できている。

 しかも、その顔を見ても自棄になっているわけでもなく、普段通りにやっていると言わんばかりの顔だ。

 僕の言えたセリフじゃないけど、クスノは年齢以上に凄いようだ。頭も良いようだしな。

 これはちょっとやばいかも……!


「大気を焼き、大地を焼き、かのの者を包み給え………!『狐火きつねび』………!!」


 僕を中心に集まるように、周りから炎の玉がいくつも向かってくる。

 それを、炎の中を踊るように、前へ横へステップを踏み、ターンを混ぜて躱し、当たるものは手で弾いて捌いていく。

 あっぶなー!!もう少しで当たるところだった…!

 そんな調子で避けて続けていると、エリィとクスノの息が上がってきた。

 始めてからどれぐらいの時が経っているかは分からないけど、さすがにそろそろやめにしようかと思う。

 クスノとエリィの武器を持っている手を掴んで止める。


「「…はぁ……はぁ……はぁ…」」

「そろそろやめて休憩にしようか。二人とも気付いていないみたいだけど、ものすごく汗をかいてるからね。水分を取らないと」

「…はぁ……はぁ…残念です」

「………はぁ…はぁ……無念」

「お疲れ。休憩していると良いよ。僕は飲み物の準備をしてくるから」


 いやー、しかし二人とも初めてにしてはかなり良い動きをしてきたな。特にクスノ。

 エリィはエリィで近接に慣れていないはずなのに、クスノに合わせて僕の背後や避ける場所に先回りしようとしてきたし。

 デザートに対する執着がすごいな。

 今日は約束でデザートを出さないけど、明日は出してあげよう。色々と驚かせてもらったし。

 正直、このダンジョンをクリアする頃には一発ぐらいなら当たってしまいそうだ。

 キッチンでレモモンという、モモの甘みにレモンの酸味を足したような味がする果実を絞ったものを少量の塩を入れて薄めたものを二人に持っていく。


「はい二人とも、レモモンで作った飲み物だ。ゆっくり休憩してくれ」

「は、はい」

「………分かった」

「終わったら、ちょっとずつ魔法の話もしようか。それと文字の読み書きと簡単な計算も…そういや、クスノは文字の読み書きは…」

「…少しできる。私のいた国では文字の読み書きと計算を教えてくれる場所があった」

「なるほど」


 寺子屋か。






 昼食を僕が作って食べた後は、少しずつダンジョンを進んでいく。


「大体5階層ぐらいまではカッターリーフぐらいしか出てこないから、6階層に行くまで二人に任せようと思う。クスノも問題なく戦えるようだし」

「はい」

「大丈夫」

「キュィ!」

「よし。じゃあ1週間ぐらいお世話になったこの小屋も片付けるよー」


 小屋の中に出した使っていたコケコットンの羽毛布団やキッチン道具、食器等をダンジョンボックスに片付ける。

 と言っても、今日の夕方にはもう1回出すんだけどな。

 進み始めてから15分ほどの所で、下へ降りる階段へと辿り着いた。階段というか木のうろだな。

 2階層へと下りる。


「もう階段?」

「このダンジョンは、外への入り口ができて間もないからね。そんなに広くないんだ」

「シュウ様はダンジョン詳しい?」

「僕というか、教えてくれた人がね」


 極度のドM(マゾ)だったけど。


「その人にダンジョンについて教えてもらったんだ。それに、僕が風の魔法で、この階層を全部把握してるからね。カッターリーフの場所も分かるから不意打ちもほぼないし」

「シュウ様は何属性いくつ使えるの?」

「あー…何故か適正があって全属性ぜんぶ使えるんだよね」

全属性ぜんぶ?光と闇も?」


 ダールソンさんに教えてもらった魔法について。

 火、風、水、土の基本4属性。極僅かな人しか使えない光と闇。

 全ては適正次第って言ってたな。


「うん。クスノは火以外にも使えるの?」

「私は火だけ。種族的に火の適正が高い。エリィちゃんはやっぱ風?」

「私は、まだ使えないんです…」

「前は触りしか教えてなったし、教えながら行こうか。余裕もあることだしね。というか、クスノは並行詠唱もできるんだよな」

「一応奥の手の一つ。シュウ様には避けられたけど」

「いや、初見であれは十分にキツイよ。並行詠唱で短剣の攻撃が衰えなかったのは凄いと思う。しかも魔法の制御も見事だったし」

「私はまだまだ。故郷にもっと凄い人がいた」

「エリィは、クスノと一緒に戦うのは初めてだったのに、よく合わせれたな」

「その、お恥ずかしい話なのですが、奴隷だったので主人が何をしたいか顔色を窺うことが多くて………」

「なるほど、周りに合わせようとしてってことか。でも、エリィ。それは全然恥ずかしいことじゃないよ。それができる人って思った以上に少ないんだ。それに、連携とか合わせるのって、訓練しても合わせるのは難しいんだ。打ち合わせもなしでっていうのが更にすごい」


 正直、いつも訓練していたり、長い付き合いがある奴相手でも、できないものはできない。

 それを考えると、やっぱりすごいな………甘味に対する女の子の力って。いや、多分違うけど。


「それを誇っても良いと思うよ、エリィ。クスノも」


 二人の頭を撫でる。

 エリィのサラサラとした髪も、クスノのフワフワの柔らかい髪も触り心地抜群である。


「んっ!!………シュウ様のえっち」

「あっ、ゴメン……?」


 撫でるときに、狐耳の裏、根元を触ったっぽい。

 というか、やっぱり狐耳族ルナーユの耳って触らない方が良いのか。


「っと、『サンドビーズ』」


 木の裏に隠れていたカッターリーフを、木ごと砂の玉で打ち抜く。


「シュウ様は無詠唱?」

「スキルとしては持ってるけどね。あ、そうだ。持っているスキルを、ギルドカードを更新すると見れるようになる、って受付の人に聞いたんだけど、クスノはどうやるか知ってる?僕知らなくて」

らんくは?」

「僕もエリィも木級ウッド

「じゃあ、無理。見れるのは銅級ブロンズから」

「スキルで覚えるってことは、得意なことがすぐ分かるってことでもあるから木級ウッドから見れた方が良いんじゃ」

「得意なことはスキルとして見れなくてもある程度自覚する。逆に始めは苦手なことでもやってみることが重要」

「確かに、始めの方に苦手意識が付くとその後も避けがちになるしなー。あ、自然薯発見」


 魔力で土に干渉して、ムカゴから伸びているツルを引っ張ってニュッと出す。


「シュウ様の魔法って不思議ですよね。家を作ったり、採取したり、お風呂を作ったり」

「正直な感想………魔法?」

「どうなんだろうね。この世界の基準で言えば魔法とは言えないかも。僕が始めて魔法を使ったときも言われたけど」

「シュウ様が始めて使った魔法って、どんな魔法だったんですか?」

「キュィー」

「そうだね。あれは、ガルを助けようとして使った魔法だったからね」

「どんな魔法?」


 基本4属性、光と闇。それ以外に合成魔法って言われている魔法属性が二つある。

 水魔法と土魔法を合わせた氷魔法。

 そして、もう一つが火魔法と風魔法を使った―――


「雷魔法」




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