第36話 「呪い の 話」◆
■2017/03/14 挿絵を追加しました。
3日後。
クスノも無事動けるようになったので、昼食を食べながら現状の説明をしている。
今日のメニューはマヨネーズを使ったたまごサンド、BLTサンドなどなどのサンドイッチだ。
「ダンジョン?」
「うん、ここはダンジョンの中なんだ。すぐそこに入り口があるから、後で行ってみようか」
「……分かった。それで、私は何をしたら良い?」
「とりあえず軽く戦ってみてもらう予定かな。武器は何か希望がある?」
「……短剣2本か棍」
「短剣か棍ね。分かった、あとで準備するよ。と言っても、ある程度ここでの生活に慣れてからで良いからね」
「質問。何故シュウ様はダンジョンで生活しているの?」
「ああ、それはだね、クスノを助けたのもあるけど、人目がない場所が良かったからね。僕が持っているスキルとか、人に見られたくないものが一杯あるからね」
「…確かに。魔法、白いエルフにクロウラー、貴族でも味わえない料理に寝具。そして、アイテムボックス持ち。目立たないわけがない。良くも悪くも人が集まってくる」
この3日間。クスノと接してみて分かったのは、淡々と喋るのはどうやら素のようだ。
「それに………狐耳族もいる。間違いなく悪目立ちする。ところで…」
「ん?」
「今更だけど、怒らないの?」
「え?何が?」
「私の言葉遣い」
「? 何か問題あるか?」
「奴隷の私が、主人であるシュウ様に馴れ馴れしく話している」
「ああ、そんなことか。別に構わないよ。僕個人の意見だけど、そもそも敬語っていうのは、相手を敬っているから使うのであって、敬いたくもない相手に使う必要はないと思う。表面上でも使わなきゃいけない場合は使うけど。今は言葉遣いより、これからの話の方が大事だからね。エリィも喋りにくいなら言葉を崩してもらっても構わないよ」
「私は、このままでお願いします。奴隷なのに、シュウ様に馴れ馴れしく話すのはちょっと………」
「そうかい?まあ、好きにしてくれ」
「………(………やっぱり変)」
「ん?何か言った?」
「何も」
「それと、これからの目標として、このダンジョンを攻略する予定だ」
「攻略?」
「え?」
あれ、なんでエリィが疑問に思うんだ?あれ?言ってなかったっけ?
「シュ、シュウ様、ダンジョンを攻略するんですか?」
「え?うん、攻略するつもりだけど」
「………踏破階層は?」
「まだなし。ここが一階層だから、これから何日か様子を見ながら進んでいって、最下層まで行くつもりだ」
「ダンジョンの攻略者は、一番最近のでも100年前にマシュラで亡くなった勇者ぐらいって話。私達には到底無理なはず」
「普通はね。その話とちょっと絡んでくる話で、本当に今更で悪いんだけど、エリィもクスノも僕の奴隷じゃないんだ」
「………捨てられるんですか?」
「いや、違うから。これに関しては僕はエリィに謝らないといけないんだ」
「?」
「僕は呪われていてね、しかもそれが他人に影響が出るものなんだ」
「………」
「呪い?」
「そう。僕の呪いは強すぎてね、他の呪いを全て弾いてしまっているんだ。クスノに着けられていた首輪も呪われた魔道具だったんだけど、僕の呪いの方が上だったから簡単に外すことができたんだ」
「………どんな呪いなの?」
「永遠にLv1」
「「え?」」
「僕が関わる全てのレベルが永遠にLv1になる呪いだ」
「全部?」
「基本的なレベル、スキルレベル、僕が持ったアイテムのレベル。それと僕の物っていう認識をしたものは全部かな。最後のは曖昧なんだけど、ガルや奴隷として引き取ったエリィとクスノも同じ呪いにかかったんだ」
「………それと奴隷じゃないっていうのに、どう繋がるの?」
「呪いにも冒険者と同じようにランクってものがあってね、奴隷術っていうのは僕の呪いより下の扱いなんだ。ちなみにクスノの首輪も扱いは一緒。だから僕の奴隷っていうのは間違いなんだ」
「………」
「で、ここからが本題になるんだけど、エリィもクスノも奴隷じゃなくなったから、正直言って君達は自由だ。だから、ダンジョン攻略に関して強制はしない。というかできない。だから、ここで待っていても良いし、僕の元を離れることもできる」
「「………」」
「突然のことで驚いているだろうから、もう何日かの間、悩んでどうするかをゆっくりと決めるといい」
「「………」」
「とりあえず、僕は夕食の準備をするから、飲み物とか欲しくなったら声をかけてね」
食事が終わった器を持って、キッチンへと行く。
いきなり過ぎる選択だったかな。
でも、自由になったんだから、そこは自分で選んで欲しいと思う。
「ふぃー」
食器の音以外がなかった静かな夕飯が終わって、お風呂に入る。
今日は贅沢にも、ダンジョンの擬似的な空に浮かぶ月がとても印象的な月見風呂だ。
二人とも悩んでいるようだったから、今日は一人。
いや、これが本来のお風呂のはずなんだけどな。
浴槽の縁にタオルを敷いて、頭を乗せて体を伸ばす。
あ”ー気持ち良いー。
月も丁度見れるし、お風呂を作れるようになって良かったわ。
そうやって気が抜けていたのもあって、浴室どころか浴槽へとクスノが入ってくるまで気付けなかった。
「うわっ!びっくりした…!」
「………」
イラスト:心太
そのまま、無言で体を寄せてきて、肌と肌が触れ合う距離まで近付いてきた。顔近いって。
「な、何?」
「答えを言いにきた。………シュウ様は私のこと、嫌い?」
「いや、嫌いじゃないよ」
「なら、このまま奴隷として連れて行って」
「………いや、クスノはもう奴隷じゃないんだけど」
「それでも。私は狐耳族。社会の嫌われ者。一人で行動するより、シュウ様の奴隷としての扱いの方が良い」
ゆっくりとクスノの手が足から膝、膝から腿へと移動してくる。
気付いたら僕のムスコに手がかかっていた。
「ちょ、まっ!その手の動きはやばいって!」
「私は、首輪の所為で地獄を見た。痛みで意識が朦朧として、死んだ方がマシだって思った。でも、シュウ様が救ってくれた。だから、私は私の意志でシュウ様について行く」
「話は分かった。ただ、その手を動かそうとするのを止めようか…!ってか、なんでいきなりこんなことを」
「女奴隷の本来の使い方。私はシュウ様なら良い」
「いや、僕の居た所では、成人してない人に手を出すのは犯罪なんだけど」
「大丈夫。私がいた里では、12で成人する」
「クスノはまだ12じゃなかったよな?それに、僕の居た所では男は18、女は16で結婚できるんだけど、成人の扱いは20からなんだ!」
「成人前に手を出すのは別に犯罪じゃない。結婚相手が決まっていることもある。というか権力者は私より小さい子が相手でも、そういうことをするために女の子を引き取ったりする」
確かに、中世ぐらいなら、ヒトの生育に関する研究とかなさそうだけど!
「待った待った!この国とかではそうかもしれないけど、僕の居たところではそうだったんだ。だから、僕としてはダメなんだ……!」
「異世界って面倒」
「そうでも……今、なんて………」
「異世界。シュウ様は異世界人で合ってるはず」
「………なんで」
「故郷でまよねーずっていう調味料があった。勇者が伝えた調味料。シュウ様はマシュラに行った事はないって言ってた。でも、今日の昼食でそれを使った料理が出た。他にもこの3日で気付いたことがある。全部言う?」
「…はあー………マジか」
「記憶喪失っていう割には、この世界では当たり前のことを知らない。でも、この世界で常識じゃないことを知っている。奴隷の扱いもそう。勇者がそうだったって母様が言ってた」
「はー…しょうがないな。そこまで疑問に思われたのなら隠してもしょうがないか」
これはエリィにも隠し事なしでいこうか。
「じゃあ私と」
「それはなしで」
「…残念」




