第33話 「ダンジョン に 住居」
100ptを越えたようで。感謝です。
■2016/10/22 前に魔法についての話をしていたのを忘れていました。ですので、最後の方の文章を変更しました。
耳と尻尾が分からないように、ローブを取り出して狐耳族の少女を包む。これをしておかないと、面倒な事になるだろう。
ダンジョンから急いで出ようとすると、ギルド職員が何事かと話しかけてきたが、「急いでやらなければいけない用事があるのを思い出したんだ」と言ったら、あっさり通してくれた。
魔物の氾濫や異常事態などがダンジョンで発生すると、初心者に限らず探索者が死亡する確率が高い。
それを避けるために、ギルド職員はそういった情報を集める必要がある。
しまったな。すぐに宿まで行こうと焦って、逆にギルド職員に引っかかって時間がかかってしまったな。
ダンジョンとルイズリーの町の間にある森へと入る。
時刻は既に夕方で、もうすぐ陽が落ちそうになっている。
「ガル。人が近付かないように周りを警戒していてくれ」
「キュィ!!」
「あ、あの!私は何を……」
「うん。ちょっと待っててね。エリィには後で頼みたいことがあるから」
「は、はい!」
「今から首輪を外すからね。ちょっと離れてて」
「え……?ダ、ダメです!!奴隷の首輪は、勝手に外すと死んでしまいます!」
「大丈夫、この首輪はそういうのじゃないんだ」
■蝕喰いの首輪
レベル:1
効 果:この首輪を付けている者に【呪い:生死を彷徨う呪い(特級)】を与える。一度着けると、装着者が死ぬまで外せない。装着するとHPとMPが全体の10%以下まで減っていく。この時、激痛と意識の混濁を伴いながら首輪に吸い取られる。また、HPとMPが30%まで回復すると、再び苦痛を伴いながら10%以下になるまで吸収される。以下繰り返し。呪いは、生かさず殺さずがコンセプトとして作られた。
作った奴の趣味が窺えて気持ち悪いな。
でも、クスノは既に僕の物として認識している。
だから、クスノは既に永級の呪い持ちになり、特級の呪いが効かない。
首輪は、特に問題もなく外れた。
後は、蝕喰いの首輪を着けていた間に受けた傷はヒールで治したけど、着けていた間に落ちている体力はすぐには戻らないから、栄養や睡眠などを十分に取らせて回復を待つしかない。
呪われた首輪をアイテムボックスに放り込んで、クスノの手首を掴む。
僕の魔力をクスノの全身に行き渡らせる。
「………んっ……」
うん、これといった後遺症はなさそうだ。
悪い部分があると魔力の流れや通りが悪くなるからね。
「これでこの子は大丈夫だ。それと、悪いけどエリィはこの子の体を拭いてあげてくれ。壁は出しておくから」
魔力で桶にぬるま湯を入れて、タオルと一緒に渡す。
「はい」
魔力で土を操作して衝立を作る。無論、僕にも見えないように。
さて、これからどうしようか。
看病する上で、できれば安静にできる場所が良いんだけど、狐耳族は嫌われているしなー。
僕も今回の呪いがなければ、関わるつもりもなかったし。
いや、どうだろう…。
呪いなしでも、あの扱いを見ていると同じだったかもしれないな。
魔力を流して見てみた限り、あとはしっかりと休める場所さえあれば大丈夫だとは思う。
ただ、そのしっかりと休める場所が問題なんだよな…。
ホップリの宿のベッドは硬くはないけど、柔らかくもない。
いや、現代日本の寝具が凄過ぎて、あれと比較してはダメなんだけどねー。
「シュウ様。拭き終わりました」
「うん、ありがとう」
「ただ……ですね…」
「うん?何か問題でもあった?」
「普通の奴隷より雑に扱われていたので、服が…」
「あー…」
替えの服は必要だな。
新しい服はルイズリーの町まで買いに行った方が良いかな。一応ゴブリンの集落を潰した時に服は手に入れたけど、洗ったからと言って清潔と言えるかな。
いや、新品の服自体があんまりないんだっけ。
王族や貴族の特権階級、お金がある商人とかぐらいで、あとは中古服って聞いたし。
いや、僕の魔法で洗濯機紛いのことができるし、石鹸、アルコール消毒もできるから、この時代の洗濯よりはなんとかなるかな。
「………うん、決めた。エリィには悪いんだけど、このまま町には入らずに、以前森の中で見つけたダンジョンへ向かおうと思う」
「その、シュウ様が決めたことなら、奴隷の私が反対はできないので…」
「あーそうだよね。んー無理とかはさせたくないから、エリィにもできるだけ相談はしようと思ってる。けど、今回はちょっと僕の我侭でダンジョンへと向かうよ。ゴメンね、エリィ」
「いえ、主人が奴隷に謝る必要はない…です」
と言っても、朝から訓練して動きっぱなしだし、顔に疲れが出ている。
「ありがとう。じゃあ、このままダンジョンを目指そう。エリィ、こっちに来て」
「? はい…ひゃっ!」
屈んで太ももの辺りに左腕を回して持ち上げる。
「もう大分暗いからね、今の時間ならあんまり人もいないだろうから、このまま移動するね。しっかり捕まってて」
「は、はい…!」
「ガル、森のダンジョンまで言ったら食事を出すから、それまで頑張ってくれ」
「キュィー!!」
土でできた衝立を魔力を流して元に戻し、風を使ってふんわりとクスノを浮かせて右腕に抱き上げる。
「ちょっと急ぐから口は閉じててね。噛むといけないから」
「はい…!」
そして、ルイズリーの町を北に迂回しながら、北東にある『森木』のダンジョンへと向かっていった。
陽が完全に落ちきった時に、『森木』のダンジョンへと辿り着いた。
二人も抱えた状態で、一人は怪我を治したばかりだし、全力で走ると負担になると思って比較的ゆっくり走っていたのもある。
『森木』のダンジョンの入り口は、植物の蔓が巻きついた木のアーチだった。
表に出てきていた魔物はカッターリーフだったし、名前からして森林系、植物系魔物のダンジョンだろう。
「あの、シュウ様。ダンジョンはどこにあるんですか?周りを見ても森しかないです…」
下ろしたエリィの質問に納得する。『東窟洞』のダンジョンは外から見ても山の中だったし、目の前にある植物のアーチがダンジョンの入り口っていうのは分からないか。
「ここだよ。この、蔓が一杯巻きついている木があるよね?これがダンジョンの入り口だよ」
「? これはただの木じゃないんですか?森があるだけですよね?」
「あーそうか。ダンジョンが魔法生物って話はしたけど、空間魔法が使えるって話はしてなかったっけ…」
「空間魔法?」
「まあ、この植物のアーチを潜ってみたら分かるよ。じゃあ、入ろうか」
「は、はい」
「あ、ガルはちょっと遅れて入ってきてね」
「キュィ」
クスノをお姫様抱っこしたまま、エリィと一緒にアーチを潜り抜ける。
するとそこには、さっきより植物が多く見えるぐらいで代わり映えのしない森があった。
「シュウ様。ダンジョンはどこにあるのですか?」
「ここはもうダンジョンの中だよ。後ろを見てると良い」
「はい………あれ?ガルさんがいない?」
後ろを振り返ったエリィが、ガルがいないことに疑問を持っている。
懐かしいなー。僕もシグとダールソンさんに驚かされたし。
「もう一回そこを潜ってみて、ガルを呼んできてくれ」
「は、はい」
少しすると、エリィがガルを伴って突然現れた。
「あっ!シュウ様!…これは一体?」
「ダンジョンの空間魔法でこの門を境に違う世界が広がっているってことらしいよ。ダンジョンに詳しい人が教えてくれたんだ。さ、行こうか。もう暗いから、足元気をつけてね」
「は、はい」
「キュィキュィー!!」
「はいはい、ご飯はもう少しだけ待ってくれ」
ダンジョンに入った場所から左へと曲がって少し歩く。
そこでは、石や土でできた壁をはっきりと確認できる。
「今日からある程度はダンジョンで寝泊りするから、そのつもりでね」
「え?だ、大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫だよ。ここは1階層だからLv1の魔物しか出ないし、後で確認するけどカッターリーフっていう魔物だろうから、まず石でできた壁を突破することはできないからね」
魔力を使って、植物を根っこから抜き取り、壁に沿って石を固めて小屋を作る。
今は最低限でいっか。当分はここで生活するつもりだし。
寝室しかない、けど広めの間取りで小屋を作って中へと入る。そして、ベッドを骨生成で骨組みを作り、上にコケコットンという鳥の魔物の羽毛を入れた布団を敷いて、そこへクスノを寝かせる。
それとは別に自分用とエリィ用の分も同じように作る。さらに、ガル用の寝床としてバリバリーフという巨大な葉っぱを敷く。
「よし、これで寝床は完成かな。次は食事だけど………ってどうかした?」
喋りながら食事用の机と椅子も作る。
「………シュウ様、これって………家ですよね?」
「うん。そうだけど」
「えーっと、ここはダンジョンの中…ですよね?」
「そうだよ?」
「野営、なんですよね?」
「そうだね」
「………野営で家を作るって……」
「あー普通じゃない………かな?」
魔法が便利過ぎて、冒険者としては失格かもしれないな…。
シグとダールソンさんの所で学んだことを全開にして暮らすと、世間とはかけ離れているんだったっけ…。




