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第32話 「呪われた 狐耳族」

前話の更新の時に気付いたのですが、1万PVと2000ユニーク越えていた様で。ありがとうございます。



 狐耳族ルナーユ。ゴルドーさんから聞いた話だと、獣人の中で最も狡賢いと言われている種族で、社会の嫌われ者。

 あんまり関わらない方が良い、と言われてるんだけどね………。これを見るまでは。


【『鑑定』がレベルアップしました。『鑑定Lv2』になりました】

【呪いの効果で『鑑定Lv1』になりました。】


■名前:クスノ

種 族:狐耳族ルナーユ

年 齢:10歳

性 別:♀

レベル:7

クラス:ミコ(巫女)

状 態::【呪い:生死を彷徨う呪い(特級)】


 あー、とうとう人の名前まで聞かなくても見れるようになったちゃったか。僕の鑑定は。

 幸いにして、今居るこの場所は、暗くてこっちから見えるけど、向こうからは見えないようだ。

 しっかし、悪趣味な呪いだな。これなら、即死する方がまだマシに思えるだろうに。

 この世界には、呪いがステータスで見える人は限られているらしく、存在自体は信じられている。と言っても、見える人がごく一部しかいないので、信憑性が低く、母親が子どもに「あんまり悪いことをしていると……」という脅しとして使う程度らしいが。

 けど、見えるということは、呪術なり呪法なりが使える奴がいるということ。

 呪われたダンジョンは、その場所で死んだ人がとても多く、そこで死んだ人の怨念がダンジョンに反映されて、呪われたダンジョンやアイテムができる。

 だけど、森で出会った王女とメイドの呪いは、恐らく誰かが意図的にかけた呪いだろう。でなければ、メイドに付いていた呪いがあんなにピンポイントな効果な訳がない。

 僕は、鑑定とダールソンさんから得た知識で知っているし、何より僕自身が呪われているから呪いはあると分かる。僕の呪いも、人がかけた呪いに間違いないからね。


「シュウ様。お願いが…あります」

「助けて欲しいって?」

「………はい」


 エリィも奴隷だったから、あの狐耳族ルナーユの子と、僕に引き取られる前の自分が重なったのかもしれない。


「良いよ。僕もあの子を引き取ろうと思ってたしね」

「え………?い、良いんですか?」

「うん、良いよ。もう一人養うぐらいは問題ないし。ガル、悪いが先行してくれ。攻撃された場合は反撃して良いから」

「キュィ!」

「シュウ様…」

「僕が引き取らないとあのまま死ぬだろう。あの子は呪われているようだからね」

「え………?」


 モゾモゾとガルが通路から部屋へと出て行く。


「おっ!クロウラーじゃねえか!しかも白色なんて珍しいな!」

「稀少種か!特殊なスキルを持っているかもしれねえ!!」

「逃げられないように、いつものでいくぞ!!」

「おうっ!!ほらよっ!!」

「……うっ!!」


 一人の男が、鎖に繋がれた狐耳族ルナーユの奴隷を、鎖を引っ張ってガルの前に出す。

 これがいつもの(・・・・)か。胸くそ悪いな。

 探索者がガルに攻撃する前に姿を現す。


「なんだ、テメエ!その白いのは俺等が先に見つけた獲物だぞ!!」

「俺等の獲物を横取りする気か!?」


 奴隷を囮にして、魔物がそれに集中している間に横なり後ろなりに移動して攻撃する。仮に正面に攻撃されても、奴隷が攻撃されるだけで済み、探索者は怪我一つない。

 この世界では、奴隷の扱いとしては、こっちの使い捨てにする扱いが普通らしい。気分は良くないが、禁止はされていない。

 冒険者ギルドはできるだけしないように言われていて、使い捨てにする人がいないわけではないけど、冒険者が相手にする魔物は、体内に人の破片や残骸が残るためバレやすい。

 でも、探索者はダンジョン内の事なので、死んでしまっても気付かれない。ダンジョン内で死んだら、ダンジョンに吸収されるだけだしな。証拠も残らない。


「その白いクロウラーは僕の従魔だからね。攻撃するのは止めてくれ」

「そうやって嘘吐こうったって、そうはいかねえぞ!!」

「あ?白いエルフとクロウラーって、今朝レオン達をボコボコにしたやつじゃねえか?」

「ってことは、コイツが?」

「ああ、5対1で勝ったっていう奴だ。法螺ほらだろうが」

「近くにはドランの野郎も居たようだし、ギルド長を見たって奴もいた」

「だよな、こんなガキが一人で倒せる訳がねえ!」

「へっへっへ、おいガキ、そこの白いエルフとクロウラーを渡して謝るんなら、レオン達のことは水に流してやるぜ」


 話を聞いていると、今朝の訓練で打ちのめした奴の仲間か。


「じゃねえと、俺達『蜥蜴の尻尾(リザード・テイル)』に手を出したことを後悔して貰うことになるぜぇ?」


 なるほどな。そういう戦い方をしているから、そんな名前なのか。

 というか、後悔してもらうなんて言いながら、すでにこちらを囲い始めている。どちらにしろ逃がす気はなさそうだ。


「二つ、聞きたいことがあるんだけど」

「へっ!良いぜ、今は気分が良いから答えてやろう」

「じゃあ遠慮なく。その子に呪いをかけたのはあんた等か?」

「はあ?お前、呪いなんて信じてんのか!?ばっかじゃねえの!!そんなモンあるわけねえだろがっ!!」

「ゲハハハハッ!!この奴隷は、俺達の元に来る前は、とある貴族のところにいたらしいぜ!!」

「そこの貴族が狐耳族ルナーユに個人的な恨みがあるとかで、強力な魔法が付与された首輪型の魔道具を使ったらしいがな」

「だから、奴隷の首輪にかかっている魔法で苦しめてんだけどな!」


 貴族、お金持ち……その辺に呪術を扱うクラスが居るのは間違いない。王女達の件もあるしな。


「じゃあもう一つ。ダンジョンで他のパーティに干渉するのはマナー違反じゃないのか?」

「禁止されてねえんだ。問題ねえな。それに、禁止されていてもバレなきゃ良いんだよ、バレなきゃ。なぁ?」


 まあ、そうだと思ったよ。

 こいつ等相手に遠慮する必要はなくなったな。


「じゃあ、これは聞きたいことっていうか、交渉なんだが」

「おお?なんだ?命乞いか?」

「いや、その奴隷は種族的に嫌われているんだろう?どうかな、10万ゴールドで売る気はないか?それだけ傷付いていて、捨て値同然の奴隷に10万ゴールドはかなり破格だと思うんだけど」


 そう言って、金貨10枚を見せる。


「まあその場合は、奴隷を扱っている商人の所まで一緒に来てもらうことになるけど」

「へへっ!テメェ、バカじゃねえか?」

「テメェをこの場で殺せば、全部手に入るじゃねえか」

「ああ、言葉が足りなかったね………」


 ここらでちょっと強気に出ようかな。


「今なら10万ゴールドで、見逃して(・・・・)やっても良い(・・・・)


 僕の上から目線な物言いと、その挑発的な内容が癇に障ったのか、探索者たちがキレた。


「テメェ……覚悟はできてんだろぉなぁ!!」

「泣いても許してやらねえからな!!」


 なんで、こういう奴等って言うことが大体一緒なんだろう。

 探索者が飛びかかってこようとした瞬間、一人の男が反対の通路まで吹っ飛ばされていった。

 その正面には拳を振りぬいた僕。

 風魔法『エアインパクト』。空気の振動で相手を吹っ飛ばしたり、空気の衝撃で体の内部を攻撃する魔法。


「「「「は?」」」」

「交渉決裂か。まあ、そうだね。タダで譲りたくなったら、頷いてね。それまで、今の奴と同じように吹っ飛ばしていくから」


 そこからは一方的だった。

 相手が一歩動くごとに、一人ずつ壁や通路に吹っ飛ばされていく。

 そして、最後の一人は吹っ飛ばさずに、片手でこめかみを掴んで持ち上げる。


「あがっ!!いだだだだだっっっ!!!」

「タダで譲ってくれるよね?」

「だ、誰がっ!!あぁああああー!!!!」


 さらに力を込めると、ミシミシと頭蓋骨が軋む音が聞こえる。


「タダで、譲ってくれるよね?」

「あだだだだだっ!!!わ、分かった!!分かったから!!!」

「よし、じゃあ言質はとったな」


【『呪い:Lv1の呪い(永級)』により、『呪い:生死を彷徨う呪い(特級)』を無効化しました】

【呪いの効果で、クスノがLv1になりました。】


 うん。この呪いに必要なのは、僕のものっていう明確な認識。


「当分起き上がれないだろうけど、頑張ってくれ。さっきの吹っ飛ばして壁にぶつかった音で結構な数のゴブリンたちが近付いてきているから」

「な、何言って…あぁああああぁぁぁっ!!!」

「お前たちはこの子に、それ以上のことをしてきたんだろ?なら、ゴブリンに嬲り殺しにされるぐらいわけないだろうに」

「て、テメェっああぁああ!!!!………」

「気絶したか。行くよ、エリィ、ガル。この子の命は一刻を争う」


 泡を吹いて白目になって気絶した男を放り出し、クスノに治癒魔法のヒールをかけながら、お姫様抱っこで持ち上げる。


「ガル、後でクラッシュスパイクの殻とホーンウルファントの角を山積みにして出す。通る途中に出た魔物を全部蹴散らしてくれ」

「キュィ!!!」

「エリィ。悪いけど、ちょっと飛ばして戻るから、頑張ってついてきてくれ」

「は、はい!」


 クスノが少しでも早く、ちゃんとした場所で休めるようにしないと。

 本当に今日が正念場になりそうだ。




ストックなんて、なかったんやー。

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