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第24話 「服 と オネエ」



 ゆっくりルイズリーの町へと歩いていたけど、体力のないエリィにはやっぱりきつかったようだ。

 今は僕が抱えて歩いている。


『魔法というのは―――聞いているかね?シュウ君』


 ダールソンさんの言葉を思い出しながら、エリィと手を繋いで歩く。

 えーっと、魔法っていうのは、


「魔法というのは、魔力と呼ばれる物を変化させて形作り、発動するものなんだって」

「………ゴメン、なさい…。よく分からなくて…」


 うん、僕の説明が悪い。人にちゃんと教えることができるってすごいよね。

 魔力という形の決まっていないエネルギーに指向性を持たせる。んだけど、この説明でもまだ分かり難いな。

 イメージが大事とも言われたけど、僕のイメージってアニメとか漫画、特撮や映画のCGなんだよなー。

 これを口で説明するのは難しいし。


「ああ、うん、そうだね。魔力っていうのは何処にでもあるんだ。この吸っている空気の中、土の中、水の中、そして僕たちの体の中。その魔力にどうなって欲しいのかをお願いするのが魔法、かな?」

「お願い…する?」

「そう。例えば、火になって欲しいってお願いすると……」


 人差し指からロウソクのような小さな火が灯る。


「水になって欲しいってお願いすると……」


 今度は掌から、水の球体を浮かべる。


「こんな風にできるんだ。始めは魔力を感じにくいと思う。だから、僕がエリィに魔力を流すから、手を繋いでいる所に集中してて」

「は、はい」


 ゆっくりと、僕の中にある魔力をエリィと繋がっている部分から流し込む。


「……あっ」

「分かった?」

「シュウ様から、私の中に……暖かいのが…入って…きます」


 あれ?魔力って暖かいっけ?

 人によって、感じ方は違うのかな。


「その流れているものを感じ取って、空気や木の中とかから同じものを探してみるといい」

「……難しいです」

「最初は仕方がないよ。でも、これからエリィには少しずつ色々なことをやってもらうつもりなんだ。武器の扱い方や魔法のように自分を守ることができる力、解体や採取、料理などの生きていく上で必要になるもの」

「?………なんで、ですか?」

「一番は自信を持てる何かを身に付けてほしいから、かな?」

「自信を…持つ?」

「うん。今までエリィは体が弱くて、あんまり動くことができなかったってゴルドーさんに聞いたんだ」

「…うん」

「得意なことや自分が自信を持ってできることが一つあるとね、元気になれるんだよ」

「元気に…?」

「そう。僕の居たところでは、病は気からって言葉があってね。病気っていうのは気の持ち用でどうにかなるっていう意味なんだ。勿論、気持ちだけではどうにもならないこともある。けど、人は好きなことは頑張れるんだよ。それが体が少し辛い時でも、病気の時であっても。そんな時は休んだ方が良いんだけどね」

「………」

「僕にも色々と事情があってね、僕一人で出来ることはそう多くはないんだ。だから、僕ではどうしようもなかったり、エリィだけができることもあるかもしれない。そんな時、僕に力を貸して欲しいんだ。料理はその一つかな」

「あんなに、おいしいのに…ですか?」

「ありがとう。でも、僕の料理ってなんとなくでしか作ってない大雑把な料理だからね。それと、料理に限らずだけど、僕にしか見えてないものもあるし、逆にエリィにしか見えないものがあると思う。早い内に相談できる相手が欲しかったんだ」

「私に、できる…でしょうか?」

「とりあえずやってみよう。そうすれば、意外なことができたりするもんだから」


 記憶喪失でもあるし、この世界のことはシグの館で本を読んだり、シグやダールソンさんに聞いた話しか知らない。

 僕の呪いの検証も、僕が料理しても素材や料理がLv1になるけど、他の人が料理をしたらどうなるかとか、レベルやステータスの上がり方とか。

 僕の持ち物は総じてLv1になるけど、エリィが持ったり取ったものはLv1になるのかならないのか。自分だけでは試せないことは一杯ある。


「僕は記憶喪失だからね。世界を知るためにいずれは旅に出るつもりなんだ。美味しいものや綺麗な景色、人が住んでいる場所、住んでいない場所、それ以外にも魔物のいるような危険な場所も行くつもりだ」

「…はい」

「その中に、エリィの行きたいと思える場所があった時、床に臥せっている状態では行くことができないし、今の体力のないままではベッドから長時間出ることができない。僕がいつも抱えて連れて行けるわけじゃないからね」

「……はい」

「これからも森に入ったり、ダンジョンに入ったりするつもりだから、エリィには体力を付けてもらいたいんだよ。エルフだけが知っている美味しいものとか綺麗な場所があるかもしれないし、エルフであるエリィにしか見えないものもあると思う。そういった場所にできれば一緒に行きたいからね」

「………それは」

「うん。これは僕の願望だから、あんまり気にしなくて良いよ。でも、世界は広いから、エリィのその白い髪を嫌うことなく一緒に居てくれる人が僕以外にもいるかもしれない」

「………」

「あ、エリィのことを邪魔だと思ったわけじゃないよ。それに、僕はエリィの白い髪は好きだよ?細くて綺麗で、太陽の光が当たると輝いて見えるし」

「………っ!」

「でも、僕以外にも受け入れてくれる場所があるなら、そんな素敵な場所を探してみるのも良いと思うんだ」


 ダールソンさんやシグのような、僕の呪いのことを聞いてもそのままで居てくれる変わり者もいるんだし。

 できれば、ダンジョンテイマーっていうのを知られても大丈夫な場所に行きたいものだ。


「そこでなら、エリィも人目を気にすることなく堂々と歩けると思う」

「……ぅ…ぐすっ………はい…」

「だから、ちょっとずつでもできることをやって欲しいんだ」

「っ………はい!」


 僕の服に顔を押し付けて泣いているエリィの頭を撫でる。

 何か、泣いている姿ばかり見ている気がする。

 今は、悲しくて泣いている訳じゃないだろうから良いか。






 夕方、冒険者ギルドに戻って、エリィが取った薬草だけを換金する。僕が取ったものは、スキル『調合』を取得するための練習用だ。

 依頼を完了した後、ギルドカードの名前について聞いてみる。


「ところで、シャロンさん。ギルドカードの名前って変更できますか?」

「名前、ですか?」

「ええ。恥ずかしながら、この子を男の子だと勘違いしていたので、名前の変更ができるならしたいのですが」

「わかりました。手数料として500Gかかりますが、よろしいでしょうか?」

「はい、お願いします」


 エリィのカードを渡して、名前をエリオットからエリィに変えてもらう。


「はい、完了しました。どうぞ、カードです」

「ありがとうございます。それでですね、女の子用の服が売っているオススメのお店ってどこかにありますか?」

「そうですね。………それでしたら、この町の東の方にある商業区に『オリヴィエ服飾店』という元冒険者の方が開いているお店があります。その元冒険者の方が趣味で開いているお店なのですが、店長さんのセンスが良いので女性の冒険者の方も利用されるようですよ」

「『オリヴィエ服飾店』ですね。わかりました、ありがとうございます。ちょっと行ってみます、シャロンさん」

「はい。お気をつけて」






「ここか。シャロンさんが勧めてくれた店は」


 センスが良いって言ってたっけ。

 ダールソンさんやシグに聞いた話だと、新品の服を買うのは貴族とかの特権階級ぐらいらしい。

 だから普通、服を買うと言うと中古服のことを指すんだとか。

 でも、シャロンさんが勧めてくれた店は、上級冒険者が自分で稼いだお金で開いた趣味の服屋らしく、他にはない服が揃っているんだとか。


「あら、男の子が来るなんて珍しいわね。今日はどういった御用かしら?女の子にプレゼントかしら?」


 店の看板を見上げていると、中から身長180cmほどの線の細い人が()()()が出てきた。


■名前:オリバー

種 族:人間

年 齢:31歳

性 別:♂

レベル:48

クラス:アサシン(暗殺者)

状 態:ふつう


 前世ではお目にかかることのなかったオネエというやつか。


「あら、お痛しちゃダメよ。見る系のスキルだと思うけれど、それは無粋だわ」

「!?」


 『鑑定』したのに気付いた!?

 女の(?)勘ってやつか。………恐ろしい。


「あら!あなた可愛いわね!ぜひ着飾らせてほしいわ!!」

「きゃっ!…シュ、シュウ様ー!!」


 呆気に取られている間にエリィが拉致されていった。

 追いかけて店の中へ入ると、色取り取りの服が店のスペース一杯に飾られていた。


「きゃー!かわいいー!!これも!これも着てみて!!」

「シュ、シュウ様!た、助けて…」


 何だこれ。


「あら、さっきの坊やね。用件を聞くのを忘れていたんだけど、何だったかしら?」

「先程はすいませんでした」

「いーのよ。2回目はないと思ってくれれば♪」


 冗談のように言っているけど、本気の目だ。気を付けよう。


「で、用件は何かしら?」

「あ、はい。シャロンさんにこの店のことを聞きまして。その子、エリィの服をいくつか見繕ってもらいたくて訪ねさせていただきました」

「あら、シャロンちゃんが?良いわよー!タダにしちゃう!!」


 即決!?


「え!?いや、それはさすがに…」

「ノンノン♪代わりといってはなんだけど、条件があるの」

「………何でしょう?」

「そんなに警戒しなくても良いわよ♪このエリィってを気の済むまで着飾らせて欲しいの♪久々にビビビッてインスピレーションが沸いたのよ」

「え?それは、エリィ次第ですけど」

「良いかしら?」

「え、えっと、でも…」

「(ご主人様にキレイな姿…見せたくない?)」

「是非お願いします!!」


 あれ?さっきまで渋っていたのに。

 何がエリィにそこまでさせるのかな。


「という訳で、エリィちゃん。借りていくわよ~♪」

「あ、はい」




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