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第21話 「エリオット」

 目が覚めると、真っ暗だった。

 今何時だろう。

 そういえば、ここってガラス窓じゃないんだっけ。

 窓ガラスはこの町では見かけなかったし、木の扉なんだよなー。

 もしかしたら、城や領主の館なんかはあるかも。シグの館にはあったんだよな。

 たまにだけど、あのシグの館とそれ以外での時代が違う感じ…なんだろうな。

 まあ、いいや。またあそこを訪ねたときにでも聞いてみるか。

 起き上がって窓を開けると、空は薄っすらと明るくなっていた。

 夜明け前か。伸びをして深呼吸をする。


「………はー」


 ふと、下を見てみるとすでに武装して活動している人がいる。

 冒険者の朝ってやっぱり早いんだな。

 いや、よく耳を澄ませると家の中からも音がしていたり、煙が出ている家もある。

 日の出前から活動して日が落ちたら眠る。

 やっぱり電気とかがあるのとないのじゃ生活環境も変わるよな。

 ランプとかランタンのような道具もあんまり見ないし、消費していく油とかを考えると毎日使えるものじゃないか。

 冒険者ギルドは人がいないと問題だから明るかったけど。

 あれはランプとかランタンの明かりじゃなかったよなー。

 そこら辺もちょっと誰かに聞いてみよう。

 ゴルドーさんなら、そういう製品にも詳しいだろうし。

 店は、いつ頃から開いてるんだろうか。


「朝食済ませてから出れば………開いてるかな。…あーでも、皆が朝に活動するなら、時間ずらした方が込まないかも」


 行ってみないと分からないな。朝食を食べてから考えるか。

 1階へと下りると、同じ宿泊客がすでに食べていた。皆早いな。


「おはようさん。よく眠れたかい?」

「ええ、お陰様で」


 シグたちとダンジョンに入っていた時に比べれば、寝るための部屋で寝れるだけでも贅沢に思える。

 ダンジョンの中で寝泊りすると、どこから魔物が出てくるか分からないからぐっすりとは眠れないんだよね。

 場合によっては壁を背にもたれて寝るだけでも、寝れるだけマシっていう時があったぐらいだし。

 カウンターに座ると親父さんが話しかけてきた。


「朝食はどうする?パンとサラダだが、別料金で野菜スープを付けれるが」

「じゃあ、スープもお願いします」

「あいよ。銅貨2枚、200Gだ」

「はい」


 お金を出すと、既に準備が出来ていたのか、直ぐに出てきた。


「いただきます」


 んー!んまっ!

 この宿の食事は当たりだなー。

 食べ終わって、礼を言って外へ出る。

 既に外は日が差していた。

 ガルを迎えに行って、道に出ると既にかなりの人数が活動していた。

 とりあえず冒険者ギルドを覗くと、人が溢れていた。

 うわー、皆こんな状態で依頼を受理できるのかな。

 うん、無理。これは諦めよう。

 先にゴルドーさんの所に行こう。




「すいません、ゴルドーさんはいらっしゃいますか?」


 ゴルドー商会の入り口で声をかけると、ゴルドーさんを送ったときに迎えに出てきた男の人が顔を出した。


「あっ!先日の!すぐ呼んで参ります!!」


 僕の顔を見るなり、パタパタと駆け足で中へと入っていった。

 言葉通り、すぐにゴルドーさんが出てきた。


「これはこれは、シュウ殿。エリオットの引き取りですか?」

「ええ、そうです。冒険者ギルドに行ったら物凄く混んでいたので後にしようと思いまして」

「わかりました。どうぞ奥へと入ってください」


 奥の個室へと案内される。

 商談用の部屋かな。


「ではですね。エリオットの奴隷契約に関してなのですが、隷属の首輪と奴隷紋、どちらで契約なさいますか?」

「奴隷紋っていうのは?」

「体の表面に魔法で紋様を描く契約方法です。首輪と違って体さえ隠せば表面に出ないので、一見すると奴隷に見えません。首輪にも隷属の契約が付加されていますが、無理に外そうとすれば苦痛が伴い、最悪の場合、死に至ります。もし万が一、首輪が壊れた場合、壊された場合は奴隷が死にます。奴隷紋の方にはそれはありません。その分、少々値が張りますが。今回はお代は結構です」

「分かりました。なんか申し訳ないですね」

「いえ、シュウ殿は私と私の家族を救って頂きました。それだけでなく、奴隷を助けても頂きました。彼女らにとっては、あのまま盗賊達に使い潰されるよりは、誰かに買って頂く方が良いかと思います。基本的に使い潰す方には売らないと決めておりますので」

「僕がそういう人かもしれませんよ?」

「それはありません。私は商人です。これでも人を見る目には自信があります。確かにシュウ殿が記憶を失う前のことは分かりません。ですが、助けて頂いた時の強さを見ております。それだけの実力を持ちながら、それを私達家族どころか奴隷にすら使おうとはしませんでした。やろうと思えば私達の命も荷物も全て奪うことは可能だったでしょう?」

「まあ……」

「そもそも善悪で言えば、善だけな人間はいません。シュウ殿は情報という対価をしっかりと提示したではありませんか」

「そうですね。情報は大事だと思ったので」

「商人はギブアンドテイクと、利益になる人かというのが重要です。その点で言えば、家族や奴隷たちの命を救っていただいたシュウ殿にはできる限り恩を返したいと思っています」


 なんか、通りすがっただけなのに、ここまで言われると買い被りな気がするよ。


「では、すぐにエリオットを連れて参ります」

「はい、お願いします」


 出されたお茶を飲みながら待っていると、すぐにゴルドーさんがエリオットと男の人を連れてきた。


「では、奴隷紋をお願いします。シュウ殿、血を一滴頂いても良いですか?」

「あ、はい」


 一緒に来た男の人は奴隷紋を使う人のようだ。

 エリオットの背中の服を捲り上げ、魔力により奴隷紋が描かれる。

 そこに仕上げとして、僕の血を垂らしたら完了するらしい。


「あうっ」


 血を垂らすと、奴隷紋が消えた。

 これで契約が―――


【スレイヴテイマー(奴隷調教師)のスキル『奴隷契約』により『呪い:隷属の契約(上級)』が発動しました】

【『呪い:隷属の契約(上級)』により、エリオットの所持者が永遠とわ 祝一しゅういちになりました】

【『呪い:Lv1の呪い(永級)』により、『呪い:隷属の契約(上級)』を無効化しました】

【呪いの効果でエリオットがLv1になりました。】


「えっ?」


 あー、これも呪いなのか。

 なるほど。確かに見方によればそう取れないこともないな。

 ってことは、事実上の奴隷解放じゃないのか?これ。


「どうされましたか?」

「いえ。初めての契約だったのでちょっと驚いただけですよ」

「そうですか。何かあれば仰って下さい」

「お気遣いありがとうございます」


 しゃがんでエリオットと目線を合わせる。


「僕の名前はシュウだ。よろしく、エリオット」

「………」


 頭に手を乗せて荒っぽく撫でる。

 年齢的に子供の性別って見た目では分かりにくいよね。正直、見た目だけだと判断に迷っちゃったよ。

 まぁそれでも白化個体アルビノっていうだけで、他は特に問題ないだろうし。

 もしかするとファンタジーっぽい世界だから魔法的な何かの影響なのかもしれないけど。

 ただ、僕は『永級』の呪い持ちだし、エリオットが本当に呪われていたとしても問題なかったんだよね。


「シュウ殿、他の奴隷を買う場合は、身に着けているのが服の代わりに布一枚だけというのがほとんどですので」

「ということは、この服と靴は」

「ウチではそうしているだけ、と覚えておいて下さい」

「分かりました。じゃあ、行こうか、エリオット」

「………はい」






「その、呪い持ちで……良かったのですか?」

「ああ、大丈夫です。それに、前にも言ったかもしれませんが、これは呪いとかではありませんよ」


 どっちかというと僕の方が呪われてるし。

 その所為で本当に呪われた子になってしまったけど。


「そうなのですか?」

「断片的にある記憶ですが、僕の居たところでは他の人より体が弱いっていうだけですから」


 白化固体は太陽の光に弱いとか聞いたことがある。光を反射する色素がーとかあった気がするけど、難しいことは分からないし覚えてない。

 でも、呪いと勘違いして白い布をかけて隔離していたのは良かったかもしれないな。

 体力がないのなら、これから鍛えて行けば良いし。

 僕の呪いの影響下なら、体力を鍛えてレベルを上げれば常人以上に鍛えることは十分に可能だろう。

 幸いエルフだし、森系のダンジョンなら少しは動けると思う。


「ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」


 ゴルドーさんに見送られて外へ出た。


「ガルー、行くぞー」

「キュイ」

「………っ!」


 ガルに驚いたのか、抱きついてくる。

 まあ、正直エリオットより大きいからね。


「服と靴はあるし、とりあえず冒険者登録だけしに行こうか」

「!………私も、戦う、の…ですか?」

「まあ、その内ね。ゴルドーさんに聞いたけど、体力的にあんまり起きてられないんだって?」

「……生まれつき…体が、弱い…ので」

「うん、だからちょっとずつ体力を付けていけば、外に出て走れるぐらいにはなるからね。とりあえず、そこを目標で」

「……………はい、分かり…ました。こほっ」


 あとは、栄養と十分な睡眠。衛生的な環境作りがいるかな。

 レベルアップもか。

 僕が倒したのでも、エリオットが上がるのかを検証しないとなー。

 色々と忙しくなりそうだ。




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