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第20話 「宿」




 ツァロとテールナーに指示を出して、馬車の車輪の跡を調べるのと、仮にこの場所に騎士団以外で誰か来るならクロウというカラスの魔物を使って監視させるようにお願いしておく。

 そして、僕は急いでガルを担いで、ルイズリーの町の塀が見える所まできた。

 時刻は既に夕方。空が少し茜色になってきている。


「はー………疲れた」

 ちょっと無茶し過ぎたな。

 ここに来るまでに、ホップリを5体倒して、触覚を5本ブチッと千切った。

 ホップリは、本当に草の塊だった。

 というか見た目はワカメみたいな細長い草の集合体みたいなやつだった。

 それが、ウサギのようにピョンピョン跳ねる姿は酷くシュールで、妙に愛嬌があったし。

 しかも、攻撃する時にも抵抗する素振りはほとんど見せないし。

 なんだろう………毬藻まりもを眺めているような和む生物?植物を相手にしているようだった。

 仕留めた後も、雑草を引き抜くが如くブチッといくのはちょっとした罪悪感すら感じてしまいそうだった。

 人型の魔物や人間を殺すより、こっちの方がキツかった………。

 討伐証明部位以外はいつも通りダンジョンボックスへと放り込んでおく。

 魔物の食料になる魔物なんだったら、僕のダンジョンで召喚してみようかな。

 ダンジョン内の魔物にとっては、魔力さえ満ちていれば大丈夫だから、ホップリを放つ意味はないかもしれないけど。

 そういえば、ホップリの討伐は事後報告で良いんだっけ。余分に討伐しておこうか………。

 いや、明日エリオットを引き取って一緒にやっていけばいっか。

 明日と明後日は薬草採集とホップリの討伐をして。明明後日しあさってには訓練を入れてある。

 僕だけだし、そんなに急ぐ必要はないな。


「そろそろ帰ろうか、ガル。………って何してんの?」


 振り返れば、ガルがホップリをムシャムシャと食べていた。

 本当に何してるの。

 おお、ホップリが逃げようとする姿を始めてみた気がする。

 いや、単純に僕が倒すときは一発で終わっていたから、こういう姿を見れなかっただけかもしれないなー。

 しかし、このホップリ。どこまでガルが食べたら活動を停止するのか…。私、気になります!

 植物系の魔物なんだろうけど、そもそも植物系の魔物はどこまで傷つければ活動を停止するのかよく分からない。

 魔法生物のようにコアがあるのかもしれないが…。うん。そこら辺もいずれ調べてみよう。


「ガル、そろそろ帰らないと門が閉まるかもしれないから、食べるのもほどほどにしておけよー」

「キュィ!」


 声をかけると物凄い勢いで食べ始めた。

 その勢いたるや、吸引力の変わらないただ一つの掃除機みたい。

 あ、吸い終わった。


「今日の宿も決めないといけないから少し急ごうか。ガル、走れる?」

「キュィ……ップ!」


 ゲップを出す白い芋虫か…。

 見世物小屋に放り込むだけで、人気者になりそう。

 ダメだ。檻ごと食べつくして即脱走するな。

 ガルに少し急がせて、なんとか日が落ちる前に門の前に到着する。


「できるだけ早めに戻ってきた方が良い。時間によっては早く閉めることもあるからな」

「すいません。色々と試していたら遅くなりました」

「まあ、次からは気をつけるようにな」

「ありがとうございます」


 ギルドカードと従魔の証を見せて南門を通る。

 朝や昼に通った時には露店が出ていたりして賑やかだった道は、夜になると冒険者と冒険者を相手にする客商売の人が多く、そこかしこの建物から喧騒が外へと溢れている。

 日が落ちて夜になっている所為か、既に帰る人がちらほらといる。

 そうか。街灯とかがないから日照時間に生活が左右されるのか。

 シグやダールソンさんが魔法を使ったりして、時間に関係なく起きてるから、それが普通だと思っていたよ。

 あの二人そもそも夜に起きてるタイプだから当てはまらないわ。

 ダールソンさんはアンデットだから眠らないし。いや、元人間だから寝るのかな?

 確認したことないから分からないな。あの人たちは色々と変わっているし。


「おいしそうな匂いだな…お腹空いてきた。ガル、早く冒険者ギルドに行って宿探そうか」

「キュィー」


 冒険者ギルドでホップリの討伐報告をすると報酬を貰って、宿の話を聞く。シャロンさんとシトリアさんは居なかった。

 従魔を連れて止まれる宿は一つしかないらしい。

 お礼を言って、ガルを連れてそこへ向かう。

 宿の名前は『ホップリの宿』だった。ホップリが魔物の餌扱いだからかな?

 まさか、従魔のご飯ってホップリだったりして………まさかね。


「いらっしゃい!食事かい?宿泊かい?」


 宿の扉を開けると、酒場!っていう感じだった。

 正面にカウンター席があって、左にテーブル席が広がっている。

 右側に宿用のカウンターと2階へと上がる階段があって、部屋は1階と2階に分かれているようだ。

 宿用のカウンターにいる女将さんは恰幅のいいおばちゃんだった。


「両方でお願いします。あと、従魔がいるんですけど、いくらですか?」

「従魔込みで一泊銀貨3枚だよ。食事も付いてる。何泊予定だい?」

「とりあえず一泊でお願いします。あと、従魔はどうしたら良いですか?」

「ちょっと待ってな。おーい!テストル!」

「何、母さん」

「外に従魔がいるらしいから、連れてってやんな!」

「分かった。僕はテストル。案内するよ」

「あ、僕はシュウと言います。よろしくお願いします」


 外に出ると、ガルが引っくり返ってゴロゴロ寛いでいる。本当に芋虫か?コレ。


「クロウラーか。それも白色。珍しいのを連れてるね」

「ええ、まあ。森の中で出会って懐かれちゃいまして」

「キュ~?」

「こら、ガル。お前の寝床まで連れてってくれる人だぞ。ちゃんとしないと」

「キュィ!」

「…随分と賢いな。珍しい色だからか?そもそもクロウラーや虫系の魔物は人に従うということをしない魔物だし、違う個体として―――」

「あの、テストルさん?」

「あ、ああ、すまない。魔物に興味があってね…。色々な従魔を見てきたけど、君のは特別珍しいみたいだ」

「確かに変わっているとは思います」

「食べ物はこっちで用意する。それも料金に入っているから」

「お願いします」

「うん、後は母さんの方に行ってくれていいよ」

「わかりました。ガル、大人しくしておくんだぞー」

「キュィー」


 店に入ると、さっきのおばちゃんが声をかけてきた。


「もう良いのかい?」

「はい」

「ご飯はここで食べるかい?それとも部屋に運ぶかい?」

「じゃあ、ここでお願いします」

「分かった。カウンターに座りな。あんた!」

「あいよ。そこに座りな。今日のメニューはサラダ、パン、シチューだ。酒とおかわりは別料金だ」


 とても体格の良いダンディなヒゲを生やした渋いおじさんが出てきた。


「わかりました。いただきます」


 シチューをすくって食べてみる。


【呪いの効果で、シチューLv38がシチューLv1になりました】


「うまいっ!」


 何の肉かは分からないけど、トロトロに煮込まれている。

 惜しむらくは、呪いの所為でそのままのおいしさにならないことだろうか…。くそー!

 しかも、素材以外にも料理の腕をこのレベルまで磨いている何よりの証拠。

 一時的に呪いを回避する方法はなにかないだろうか。

 今日はよく動いたのもあって、すぐに全て平らげた。


「おいしかったー………。ごちそうさまでした。とてもおいしかったです!」

「それはなによりだ」


 席を立って、女将さんの方に行く。


「はいよ、鍵。部屋は2階の突き当たりだ。部屋から出るときは鍵をかけるように。物がなくなってもウチじゃあ責任とれないからね」

「わかりました」

「あんた、礼儀正しいね。気に入ったよ!ゆっくり休みな」

「はい、ありがとうございます」


 部屋に入って鍵をかける。

 明日はエリオットを迎えに行こう。

 依頼で入る報酬からするとこの宿はかなりキツイけど、盗賊たちの所から持ち出したお金があるから当分は大丈夫かな。

 長い一日だったなー…。




ストックががが。

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