第17話 「冒険者 ギルド」
結局、ガルに丸まってもらって冒険者ギルドがある建物まで転がしてきた。
じゃないと、お見送りをしてくれたゴルドーさんたちに申し訳なくなって、居たたまれない気分になったから仕方ない。
冒険者ギルドの建物の横に従魔用のスペースがあり、ガルをそこに転がしておく。
「大人しくしておくんだぞー」
その際に、スケイルファングの鱗とクラッシュスパイクの殻を積み上げて与えておく。
「キュィ!」
これで当分大人しくなる………はず。
途中で食べる物がなくなって、建物に入ってこないか心配になるな。早めに用事を済ませないと。
建物の扉を開き中へと入る。そこには入って正面に受付カウンターがあり、右側が酒場兼食事処、左側にはいくつもの小さな木の板が貼り付けられた掲示板があった。掲示板には依頼が貼り付けられているのか。
ゴルドーさんに聞いていた通りだな。
お昼時に来たからか、酒場で酒盛りをしている人が何組かいる。
朝早く依頼をこなして昼以降に英気を養う。余裕ができたら、そうやって美味しい物を探しに行くのも良いかもなー。
受付まで歩いていく。
受付は3カ所あり、今は空いているのか1カ所しか人がいなかった。
青髪ロングストレートの巨乳で綺麗なお姉さんだ。
やっぱり受付と言うのは容姿が重要なんだろうか。
「ようこそいらっしゃいました。本日はどういったご用件でしょうか」
「素材を売りたいんですけど、冒険者登録してからの方が良いと伺ったんですが…」
「そうですね。冒険者に限りませんが、どこかのギルドに所属していると買取金額に少しだけ上乗せされます。登録には銅貨3枚が必要になりますが大丈夫ですか?」
「素材の売却額から差し引くことって可能ですか?」
「可能ですが、その分の買取額は登録前という扱いになります。それでも構いませんか?」
「はい、大丈夫です。あと、冒険者登録と一緒に従魔登録をお願いしたいのですが」
背負っていた袋から『スタンプボアの牙 Lv1』4本と『バイトスネークの牙 Lv1』2本、『バイトスネークの皮 Lv1』2枚を出してカウンターに置く。
「従魔…ですか?」
「はい。今、外の従魔用スペースに連れてきているので」
「分かりました。では、確認させて頂きますね。あ、シトリア丁度良かった。悪いけど、外へ従魔の確認に行ってくれないかしら。姿は、えっと…」
「白いクロウラーです。名前はガルと言います」
「えー、私まだ休憩中なんだけど………」
面倒臭そうに文句を言っていた目が僕で止まる。
「あの、何か」
「ふーん。君、今日冒険者登録するの?」
「あ、はい。シュウと言います」
「………良いよ。行ってくるわー。けど、貸し一ね、シャロン」
「良いから早く行ってきてよ。受付が人を待たせちゃダメでしょ………っと、すいません。お見苦しい所を」
「いえ、仲が良いんですね」
「お恥ずかしい限りです。それで、素材の方ですが、これは………スタンプボアの牙とバイトスネークの牙と皮ですか?」
「ええっと、一緒にいた商人の人はそう言ってましたね」
「……少々お待ちください。査定に回しておきます。では、こちらに名前と年齢、出身地、得意武器や魔法適正など、書ける範囲でお書き下さい。字が書けない場合は、銅貨1枚で代筆も可能です」
「あ、代筆は大丈夫です。それより、ほとんど空欄になっても大丈夫ですか?なにぶん記憶喪失なもので」
文字はシグの館に蒐集してあった本を読みつつ二人に教えてもらったから、読み書きはほとんどできる。
「記憶喪失……ですか?あ、いえ失礼いたしました。最低でも名前さえ書いていただければ構いません。他のギルドと違って冒険者ギルドは基本的に誰でもなれますので。パーティーを組む場合などに参考にさせて頂くのに必要、というぐらいですので」
「そうですか。ありがとうございます」
パーティーか。
呪いがある僕は、あんまり組みたくはないなー。
パーティを組んだ途端に、パーティメンバー全員がLv1になりましたでは間違いなくトラブルの元だろうし。
名前は………シュウでいっか。
不都合があれば向こうが言ってくるだろう。
年齢は、鑑定で16って見ることができるけど厳密には分からんしなー。それ以上生きていたはずだし、ごっちゃになっている。
出身地は……異世界は………どういう扱いになるんだろう。記憶喪失なのは間違いないし書かなくても良いかな。分からないことは記憶喪失で通せば良いか。
得意武器は剣、魔法適正は……あー、どうやって書こう。ダールソンさんに魔法を教えて貰ったけど厳密には適正を無視してる使い方してるし。
悩んでいると受付の人が助け船を出してくれた。
「魔法適正は知らない方も多いので、書かなくても大丈夫ですよ。記憶喪失ということですし、簡単な物ならココですぐに調べることができますから」
じゃあいっか。
あとは、ガルを連れているから、得意なことに魔物調教って書いておこう。
名前と得意武器、魔物調教以外は空欄で出した。
「はい。確認いたしますね。後は、従魔の確認ですね。そろそろ戻ってくると思うのですが…」
「シャロンー!シュウ君の従魔を確認したよー」
「ありがと。では、こちらのカードに血を一滴垂らしてください」
灰色の厚さ1cmぐらいのカードと、領収書を刺しておく針の土台みたいなのを差し出してくる。
「あ、針はこっちで準備するので大丈夫です」
何人も使っていて衛生面が気になるし。
現代日本と違って、注射針みたいに一人ひとり換えたり消毒したりはしなさそうだしなー。
それに、どこから呪いのことがバレるか分からないから、人の持ち物もあんまり拾わないようにしないと。
背負い袋に手を入れて骨生成で針を作る。
その針を指に刺しギュッとすれば血が一滴浮かび上がってくる。
血を垂らすとカードが白い光に包まれて、収まったときには灰色だったカードは木目のカードに変わった。木製かな。
「はい。ではギルドカードの説明をさせて頂きます」
受付嬢さんの話によると次の通りらしい。
ギルドカードにはランクがあり、下から10~6級と細かく呼ばれる木級と5~1級の鉄級があり、その上に銅級、銀級、金級、白金級、水晶級に分かれている。
木級と鉄級が合わせて10段階に分かれているのは、駆け出しを細かく分けることで無謀な依頼を受けて死亡するのを防ぐためらしい。
銅級以上になると、自分の力量をしっかりと把握し始めるため、無謀な依頼を受けることが少なくなる。
ただ、それでも0にはならないとのこと。これは特に僕は気を付けないとな。Lv1だし。
金級まで行くとかなりの有名人で、活躍している人が多いため二つ名が付く。だから、それに憧れて一つの目標にする。
白金級以上は一種の達人、賢者などその筋のエキスパートで一代限りの貴族として扱われる。僕には縁がなさそうな話だ。
銀級の稼ぎが一般家庭4人で不自由なく暮らすには十分らしいので、とりあえずこのぐらいを目標にすると良いと教えてもらった。
あと、お金を預けることができる銀行のようなシステムがあって、これによって必要以上にお金を持つ必要がなくなる。
「おまけで、シュウ君が銀級や金級ぐらいになって稼いだお金を預けると、その額に応じて担当受付嬢にボーナスが入るから頑張ってねー」
「ちょっとシトリア。今は私が話をしているんだけど」
「担当受付嬢?」
「基本的には、受付をした私がそうなります」
「私に変えて欲しかったら気軽に相談してねー。私はいつでも受付中だから」
「は、はあ………」
この受付嬢さん、シャロンさんが僕の今後の担当になる………のかな?
基本的に依頼は、同ランク内で受けることを推奨。パーティーなら1ランク上まで可能。
期限内に依頼が達成できなければ依頼額の半分を支払わなければならない。
依頼票と依頼の内容が違う場合はすぐに報告すること。
犯罪など、ギルドに相応しくない行動をした場合はカードの剥奪、罰金、指名手配される………等々。
様々なことを説明された。
「あ、そういえば奴隷は冒険者登録できますか?」
「ええ、できますけど……実際、奴隷を連れて魔物の討伐依頼に向かう人はいます。ただ、次お会いした時には命を落としたのか、居なくなっていたり奴隷が変わっている場合などがありますので、ギルドとしてはあまり推奨はしておりません」
「なるほど。分かりました、ありがとうございます」
「では、こちらがカードになります。基本的にカードには名前、冒険者ランクが載っています。裏には受けた依頼の達成、失敗を新しい方から5件表示されていますので、もし依頼を忘れてしまったときは裏をご確認下さい」
「あ、あとこれ、従魔の証だから見える位置に身に付けさせておいてね。あと、無くさないように。ギルドカードもそうだけど、無くすと銀貨5枚かかるから」
「ありがとうございます。今、何か依頼を受けたいのですが、構いませんか?」
「はい、大丈夫です。10級ですので、薬草の採取、ホップリ5匹の討伐、訓練の3つになります」
薬草の採取、どんな魔物が相手かは分からないけど討伐、はまだ分かるけど…
「訓練?」
「はい。冒険者に成り立ての方は自己流で戦うことが多く、戦い方や知識などを上のランクの方に教えてもらうことで、初心者冒険者が死ぬ確率を少しでも下げたいというギルドからの依頼になります」
なるほど。確かに冒険者としては僕は初心者だから、訓練も良いかもしれない。
ちょっとここから馬車で3日ぐらいの距離に用事があるから、それを終わらせてから受けてみようかな。
「訓練はいつでも受けることが可能なのでしょうか」
「そうですね。訓練官の都合というものがありますので、予め日時を決めていただけると合わせやすくなります」
「分かりました。そうですね………個人的な用事を済ませてきたいので、3日後の午前中に訓練を予約しても良いですか?」
「宜しいのですか?その、スタンプボアやバイトスネークを倒せるほど実力があるシュウさんにはあまり意味はないかもしれませんが」
「いえ、冒険者としては初心者なので、常識を学んでおきたいんです。なにせ、記憶喪失ですし」
「分かりました。そういうことでしたら、3日後の午前中に予約を入れておきます。都合が悪くなった場合は早めに言ってください」
「はい、分かりました。それと討伐に関する依頼で質問なのですが、ホップリというのはどういった魔物なのでしょうか?」
「ホップリというのは、30cmぐらいのジャンプする草の塊のような魔物です。一体一体はとても弱く、放っておいてもそれほど問題はないのですが、繁殖力がとても強く、他の魔物の餌にもなっているので定期的に間引きしないと他の強い魔物が大量に発生してしまうのです」
魔物界における生態系を支えている魔物か。
「では、そのホップリの討伐をお願いします。とりあえず色々と試してみたいので」
「分かりました。ホップリの討伐証明部位は、頭頂部に生えている一際長い草ですのでお忘れなく。では、ギルドカードをこちらに」
「はい」
「鉄級である6級までは、依頼自体はあちらの掲示板に書かれていますが、常設依頼なので初回以外は事後報告でも構いません。5級以上に上がられた場合はあちらの掲示板からこちらへと依頼を持ってきて下さい」
「分かりました。色々と細かい質問をしてすいませんでした。それと、ありがとうございました」
「いえ、冒険者は命がかかっている職業ですので、情報収集はとても大切だと思います。ですので、今後もできるだけ情報収集をして下さい。シュウさんの今の対応を見るに、大丈夫かと思いますが」
「記憶喪失で知らないことが多いからですかね」
「それでも、です。では、気を付けて行ってきて下さいね」
「頑張ってねー、シュウ君ー!」
シャロンさんとシトリアさんに見送られて外へ出る。
従魔のスペースにいるガルの所まで行くと、与えておいた鱗や殻が全てなくなっていた。
「キュィ!」
危ない。もう少し出るのが遅くなっていたら、冒険者ギルドの建物内に入ってきていたかもしれない。
渡された従魔の証(ペンダント型)をかけようとして、ふと気付いた。
「これ、どうやって身に付けておけば良いんだ?」
ガルが大きすぎて入らないんだけど…。
まあ、ダンジョンボックスから紐でも出してガルに巻いておけばいけるかな。
そんなことを考えていると後ろから声をかけられた。
「おめぇ、ちょっとツラ貸せや」
振り返ると、酒場で飲んでいた冒険者4人がそこに立っていた。




