第15話 「ルイズリー の 町 へ」
「シュウ様は記憶喪失なのですか」
「ええ、少しは教えて貰ったんですけど、知らないことが多くてですね。お礼を貰うよりは色々と教えて頂けた方が助かります。あと、様付けは勘弁して下さい……」
「分かりました。それぐらいでしたらお礼とは別で構いません。何から話しましょうか」
「そうですね……」
ここからは長くなるのでQ&A形式で。
Q:お金について
A:単位はゴールド。銅貨(100円)、銅板(500円)、銀貨(1,000円)、銀板(5,000円)、金貨(10,000円)、金板(100,000円)、白金貨(1,000,000円)。
()内は価値を聞いて大体で解釈した金額。一般的な4人家族が一ヶ月暮らすのに必要なのが金貨4~5枚ぐらい。
Q:町に入るのに必要な物は?
A:ギルドカード。なければ銀貨1枚でも可能。ギルドカードは冒険者、探索者、商業、工業など様々。
お金がない場合、持っている物を担保に置いていくか、素材を預けて換金して貰う。換金の手数料として1銅貨差し引かれる。
Q:冒険者と探索者って?
A:どちらも魔物を倒した素材で生計を立てているが、探索者はダンジョン専門。
探索者がダンジョンコアを破壊することは、冒険者でドラゴンなどの強力で大型の魔物を倒すのと同等の価値がある。
勇者以外では滅多に出ないらしい。
というかいるんだな、勇者。
Q:種族は?
A:人間、エルフ、ドワーフ、獣人、精霊、魔族等々。特に獣人は種類が多い。
Q:宗教とかある?
A:アルファルディア教という女神アルファルディアを奉った宗教がある。この大陸のほとんどの国の国教。
Q:この辺の気候、自然災害の有無、頻度
A:極めて穏やか。四季に近い物があり、偶に台風と地震、豪雨がある程度。
Q:この国の名前と大陸
A:大陸はアルファルディア、大陸の真ん中にロイヤル湖という大きな湖があり、その北に今いるルビーライト王国があり、東にリカルデ王国、西にレイラント神聖国、ロイヤル湖を挟んで南側にラースイット帝国という国があるらしい。
今向かっているのはルイズリーという町でルビーライト王国の東に位置する町。
「へぇ、そのルイズリーっていう町にはダンジョンがあるんですか」
「ええ、ダンジョンは各国にいくつかありまして、今目指しているルイズリーにもダンジョンがあります。ダンジョンで栄えている町ですね」
「ダンジョンで?」
「ええ。ダンジョンの魔物が残す素材や魔石、宝箱から出てくるアイテムや魔道具、採取できる薬草や鉱石等々。資源がとても豊富ですから、仕入れに来る商人が後を絶ちません。逆に、ダンジョンのある土地では作物などが育ちにくいため、食料は周りの町から買い取っている状況ですね」
そういえば、シグの話でもあったっけ。
ダンジョンは、魔力を溜め込むから倒すとそこの土地が豊かになるって。
ということは、作物が育つのにリン酸とかカリウムとかの成分を気にするよりも、魔力が土地に満ちているかどうかの方が重要になるってことなのかな。
「あとは、海が近いので海魚が入ってくるぐらいでしょうか」
「へぇ、海かー!」
この世界にも魚、カニ、エビ、貝類、タコ、イカ等々美味しい物はあるんだろうか。探してみる価値はあるなー。
「キュイ!」
「ん?………ああ、ガルそのまま進んでくれ。ゴルドーさん、ちょっと魔物が寄ってきているんで倒してきます!」
「あ、シュウ殿っ!」
手綱(餌)をゴルドーさんに渡して、御者台から飛び降りて森の中へと入る。
少し進むと、サーチフィールドに引っかかった魔物と遭遇した。
黒い六角形の鱗に毒液が垂れる牙、赤い二股の舌をチロチロと出す体長4mの大きな蛇がいた。
バイトスネークという名前の魔物で、名前の通り噛み付かれたら獲物が死ぬまで離さない。
毒で死ねば良し、死ななければその強靭な顎の力で相手を噛み砕く。
という特徴を思い出している間に戦闘は終了している。
【レベルアップしました。Lv2になりました】
【レベルアップしました。Lv3になりました】
【レベルアップしました。Lv4になりました】
【レベルアップしました。Lv5になりました】
【レベルアップしました。Lv6になりました】
【レベルアップしました。Lv7になりました】
【レベルアップしました。Lv8になりました】
【レベルアップしました。Lv9になりました】
【レベルアップしました。Lv10になりました】
【呪いの効果でLv1になりました。】
ダンジョンを5つもクリアさせられた経験もあって、『鑑定』を使わなくても相手の大体のレベルが分かるようになった。
以前、『鑑定』をして情報量の違いがあったけど、あれは僕が知識として持っているかどうかで表示量が変わるというのも分かった。
だから、今の僕が『鑑定』を使うと、自分のステータスと同じぐらいバイトスネークの情報を見ることができる。
さて、バイトスネークは牙、皮が素材で、肉は食料になる。
うん。ガルをスケイルファングの鱗を餌に走らせているけど、今日、明日の2日ぐらいは食料を確保しないといけないな。
バイトスネークを担ぎ上げて急いで馬車を追いかける。
ダンジョンボックスはバレると面倒だし、アイテムボックスも相当な貴重品で、ダンジョンを5つクリアした中にも1つあっただけだ。
それを持っているだけで、狙われる原因になる。
まあ、記憶喪失なのに、無詠唱で魔法を使って盗賊の一団を軽く倒している時点で、大分目立つだろうからあまり意味ないかなー。うん、やりすぎた。
大分飛ばしてきただけあって、すぐに馬車に追いついた。
「ゴルドーさん、戻りました」
「ああ、シュウ殿。無事でしたか。………それはバイトスネークですか?」
「ええ、そうです。バイトスネークは火を通せば食べられるので、今日の夕飯で使いましょう」
「でも、もう積むところがありませんが…」
「ああ、盗賊たちを入れているところに放り込むので大丈夫ですよ。………ほいっと」
「うわぁあああっ!!!!」
「ば、バイトスネークだぁ!!!」
「た、助けてくれぇ!!」
ああ、もう起きてたのか。
当分放っておこうか。
人を襲っておいて命があるだけマシだろうに。
町の警備の人とかに渡して、その後生きていられるかは分かんないけど。
「あの、シュウ殿……大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。毒のある牙はすでに取ってありますし、死にはしませんよ。それに………人を襲っておいて命があるんですから、あれぐらいマシでしょう」
「そう、ですね」
「あ、ゴルドーさん。夜営の準備っていつ頃から始めたら良いですか?」
「そうですね、そろそろ準備を始めた方が良いかも知れません。火をおこす準備をしないと魔物や獣に襲われますからね」
「じゃあ止めますね。ガル」
「キュイー!」
「ゴルドーさん。夜営の準備ってそちらでお願いしても良いですか?僕ではちょっと分からないことが多いので」
「分かりました」
「僕は適当に狩りでもして食料を調達してきます。ガル、いざという時は頼んだぞー」
そういって、スケイルファングの鱗やクラッシュスパイクの殻を積んでおく。
「キュィキュイー!!」
夜営に必要なものってなんだろう。火をおこすための薪と、飲み水、食料ぐらいか?
薪は拾ってきた方がいいだろうけど、水は魔法、食料はこれから狩りにいくし大丈夫かな。
まあ、いざという時はダンジョンボックスから何か出せばいっか。
「いただきます」
バイトスネークと狩りで仕留めたスタンプボアという猪のような魔物の肉、それと森の中に生えていたハーブや山菜を提供した。
それを、ゴルドーさんの奥さんということになっているメイドさんがスープや串焼きなどにおいしく調理してくれた。ややこしいな名前で呼ぼう。
量が量なので、馬車に一緒に乗っていた奴隷にも振舞った。
猪丸々一匹と、それを越える大きさの蛇なんて食べきれないよ。
ゴルドーさん、サーシャちゃん、カナタリスさん、奴隷たちにも好評だった。調理したのはカナタリスさんだけどね。
カナタリスさんの料理は本当においしい。さすがはメイドさんである。
ふと食事中に視線を上げると、王女さまがこちらをじっと見ていた。
えーっと…なんだろう。
試しに手を振ってみる。
すると、メイドさんの後ろに隠れてしまった。
まあ、盗賊を一掃しちゃったし、怖がられているのかもなー。
「ごちそうさまでした」
ジーっと王女が見つめてくる。
「それはなあに?」
「ん?それ?」
「ごちそうさま………っていうの」
「あー…食事を食べる前と後にする挨拶…かな?」
「食事に…挨拶?」
「うん。僕の居た所では作ってくれた人や食材に感謝をするんだ。命を奪って頂くっていうことで食事の前にいただきますって言うんだ。で、終わったら頂いたっていう挨拶をするんだよ」
「そうなんだ…」
記憶がいつから1週間なのかは分からないけど、ちょっと難しかった…かなー。
すると、サーシャ王女は手を合わせて、
「ごちそう…さま………。これで…良いの?」
「うん。それで合ってるよ」
「あと、遅くなったけど、ありがとう。お父さんとお母さんを助けてくれて」
「どういたしまして」
そのまま、サーシャ王女と話しているうちに眠ってしまった。
「そういえば、ゴルドーさん。後ろの檻に入っていた子って奴隷ですか?」
「え?……ああ、あの子…エリオットですか。ええ、奴隷です。呪われているようなので、隔離してありますが」
呪われている?
横目で『鑑定』をしてみる。
■名前:エリオット
種 族:エルフ
年 齢:10歳
レベル:3
クラス:ノービス
状 態:ふつう
ん?状態を見ても呪いじゃないな。
…ああ。『鑑定』がなければそう見えるのか。
アルビノ個体とも言われる白化個体は、遺伝子疾患による病気というだけで呪いではない。
まぁ、地球でもアルビノの原因が分からない中世の時代なら、呪いとか言われて迫害を受けたりしてたかもしれないから、あんまり変わらないか。
この世界は、医学より治癒魔法があるから、それで治らない白化固体っていうのは、原因不明で呪い扱いってわけか。
僕は『鑑定』が使えるからステータスに呪いがないのは確認できるしね。
「奴隷って、僕でも買うことってできますか?」
「え?ええ、可能ですよ」
「奴隷の相場っていくらぐらいですか?かなり高い印象があるんですけど」
「そうですね。戦闘や働き盛りの男、容姿が整っている女性などは高いですね。逆に年寄りや子供などは安めですね。欠損があったり犯罪を犯した奴隷などは安いですね。商人の匙加減ではありますが」
「ふーん。エリオットの場合だといくらですか?」
「は?あ、いえ、エリオットですか? シュウ殿には命を救って頂いたので、お金は不要です。ただ、その……ダメとかではないのですが……呪い持ちですよ?」
「大丈夫ですよ。それは分かっていますから」
「分かりました。意思は固いようですね。ルイズリーの町に着いたら、いつでも私の店に来て下さい」
「ありがとうございます。ゴルドーさん」
エリオットを買うことに決めた。
■2016/10/06 「東にリカルデ王国、西にレイラント神聖国」 を 「西にリカルデ王国、東にレイラント神聖国」に修正しました。




