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第14話 「盗賊 と 王女」◆

■2017/02/15 挿絵を追加しました。




 人が踏み要らない薄暗い森の中。

 本来なら馬車を走らせることを想定していないような道を、2台の馬車がなんとか一列になって走っていた。

 そこに風切り音と共に飛来した矢が馬に刺さり、鳴き声を上げ戦慄きながら転倒すると、それに引っ張られるように馬車も横転した。

 そして、森の至る所から男達が武器を手に飛び出してきた。

 馬を操っていた御者が剣で斬り捨てられ、女の悲鳴が木霊する。

 盗賊達が馬車を襲い、中にいた人達を引きずり出した。

 男は斬り殺され、女は衣服を剥ぎ取られ順番に並べられていった。

 商人の喉に剣を突きつけられ、一際身形の綺麗な少女と女性が引きずり出された時、盗賊のかしらと思われる男がゆっくりと森の中から出てきた。


「ひーふーみー……おーおーいるいる。おう、テメェがこの商隊の代表か?」

「う……っぐ」

「正直に答えろ。さもないと今より痛い思いをして貰うことになるぜ?」

「そ、そうです」


 馬車が転倒したときに打ち所が悪かったのか、商人はうめきながらもなんとか答える。

 その答えに満足したのか、盗賊の頭はいやらしい笑みを浮かべると、さらに続けて質問を重ねる。


「名前は?」

「ゴルドー……と言い…ます」

「ふーん」


 盗賊の頭にとって、これから殺す相手の名前を聞く必要は本来無い。が、商人、身形の綺麗な少女、女性と目を移し、舌舐めずりをした。

 頭は確認できたところで奴隷商人を殺そうと剣に手をかけたとき、2台目の馬車から食料や商品、人を引きずり出していた盗賊が頭に声をかけてきた。


「お頭ぁ!呪われた奴隷がいます!!どうしやすか!」

「何!?」


 呪われている奴隷に手をかけると、手にかけた者が呪われる。それで済めば良いが、触れるだけ、近付くだけでも呪われるものもあると盗賊の頭は聞いたことがあった。


「放っておけ!そいつには手を出すなよ!お前が呪われるかもしれねぇからな!!」

「へ、へい!」


 盗賊の頭は呪い持ちに対して指示を出した時、森の奥から「ちょっ、まっ…ぁああ!!」という声とともに、バキバキと木々を薙ぎ倒す音が耳に入ってきた。


「なんか聞こえねぇか?」

「え?気のせいじゃねぇですか?」


 そう盗賊の手下が言った瞬間、白いのが横切ったと思ったときには、盗賊の頭の隣にいた手下と辺りの盗賊たちを巻き込んでいった。


「うわぁあああ!?」

「ぎゃぁああ!??」


 誰もが白い玉の通る速度に反応できず、盗賊たちの悲鳴が聞こえても我に返ることができなかった。

 そんな誰もが呆気にとられた空間に、空から何かが落ちてきて、吞気な男の声が響いた。


「あー死ぬかと思ったー………。おい、ガル。死ぬところだったぞ」

「キュィ!」


 男の声に応えるように白い玉―――芋虫が鳴き声を上げる。


「あ、丁度人がいるな。すいません、近くに町か村はありますかね?」

「うるせぇ!!なんなんだテメェは!?」

「え?何でいきなり剣を向けられてるの?」

「それ以上近寄るんじゃねぇ!!コイツを殺すぞ!!!」


 そう言って盗賊の頭が奴隷商人に剣を向けた瞬間、金属のぶつかるような音がして剣が切断された。


「………は?」

「キュゥゥウウウ!!!」


 すると、それを見た大きな芋虫が芋虫らしからぬ速度を持って、盗賊の頭を轢き逃げにして森の奥へと突撃していった。


「く、来るなぁ!!うわぁぁぁああ!!」






 やっべー。

 剣を弾ければ良いかなーって思って、スケイルファングの鱗に魔力を込めて投げたら剣が切断されたでござる。

 しかも、切断した上に奧に広がっている森の木々を貫通していったよ。

 他に使うときがあれば、用法用量を守って正しく使いましょう。危険過ぎる。


「お頭ァ!」

「テメェよくもお頭を!!」


 盗賊の2~3人が武器で襲ってくるけど、物凄く遅く見える。

 その間に、魔力を広げた分だけ周囲を知覚できる風魔法『サーチフィールド』で盗賊全てを確認。

 そこから更に魔力を電気に変換。

 腕から人差し指へと黄白色の放電現象がおこり、指を向けた盗賊たちへと走って行く。


「『ショックボルト』」


 放電現象が駆け抜けた後には、全ての盗賊が地に沈んでいた。

 いやー魔法って本当に便利だね。

 魔法を覚えてから、使わなかった日がないと言っても過言じゃない。実際毎日使っているし。


「あ、大丈夫ですか?」


 呆けたままの商人っぽい人に声をかける。思ったより若いな。商人としてはかなりのやり手なのかな。

 ついでに『鑑定』。


■名前:ブライアン・ウィルソン

種 族:人間

年 齢:37歳

性 別:♂

レベル:28

クラス:マーチャント(商人)


「え、ええ……ゴホッ!ゴホゴホッ…ゴホッ。助けて頂いてありがとうございます。私は商人のゴルドーと言います。こちらは妻と娘です……ごほっ」


 ん?偽名か。

 まあ、いきなり一瞬の内に盗賊たちを無効化したから怖がられてるのかね?

 そのままゴルドーさん(偽名)の後ろにいる、身形の良い二人の女性を『鑑定』で見て納得した。


挿絵(By みてみん)

イラスト:心太


■名前:サーシャ・アーシリア・ルルイエ・ルビーライト

種 族:人間

年 齢:9歳

性 別:♀

レベル:8

クラス:プリンセス(ルビーライト王国第3王女)

状 態:【呪い:記憶を1週間しか保持できない(特級)】


■ 名前:カナタリス・レイクリット

種 族:人間

年 齢:22歳

性 別:♀

レベル:56

クラス:ガーディアン・メイド

状 態::【呪い:ルビーライトの血筋に近付くほど能力ダウン(特級)】


 王女とお付きのメイドって感じか。しかも特級の呪い付き。って事は、妻と娘っていうのは偽装か。

 ステータスを見る限り、呪いがなければこのメイドさんは盗賊に負けるはずはないっていうぐらい強い。

 この若さで、この強さ。盗賊っていう比較があるからこそ分かるけど、並の努力ではこの強さは手に入れられないだろう。

 うーん。町か村まで行くのにこの商人達を名乗る人を頼るのは良いと思う。案内してもらえれば助かるし。

 とりあえず、道案内をお願いしたいから軽く恩は売っておこう。回復ぐらいはね。


「『ヒール』」


 咳き込んでいたゴルドーさんに治癒魔法をかける。

 王族と関わるデメリットとしては、権力とかあるところに深く関わると面倒事に巻き込まれる確率は高い。変なしがらみも多いし。

 メリットは、困り事があった場合に後ろ盾になってくれるところ。いざという時少しは頼れるコネができること。頼りにし過ぎないのがとても重要。

 恩を売っておくっていうのは悪くない。


「これで大丈夫だと思いますけど、どうですか?」

「え?ええ……もう大丈夫です。あの、あなたは?」

「シュウと言います。とりあえず、被害の確認と馬車を動かせるかどうか確認して下さい。僕は盗賊達を拘束しておきますから」

「何から何までありがとうございます」

「いえ、こちらも村か町に行くのに便乗したいだけですから」


 拘束する方法はどうしようか。土で簡単な拘束具でも作るか。総石製ならかなり丈夫だろうし。

 怪我人を『ヒール』で治療しつつ、周りにある荷物を避けながら歩いていると、白い布が被せてある四角いものから小さな声が聞こえた気がした。

 試しに捲ってみると、鉄の檻があり、中には髪が白くて目が赤く、耳が細長い10歳ぐらいの子どもが居た。

 馬車が転倒した拍子に打ったのか、僕を見たので力を使い果たしたのか、気絶した。

 この子もヒールしておかないとな。

 他にも確認漏れがないように、サーチフィールドを使いながら確認していく。

 うん、さっきの子みたいに見えない所に生物はいないな。

 近くの盗賊から装備を取り上げて、他に隠し持っていそうな場所を探っていく。あ、これ手で探る必要ないな。

 水魔法『ウォーターバブル』で首から下を水で包み、服以外の物を水に弾きだす。

 ついでに口の中にも水を流し込んで確認しておく。毒とかで自殺されると面倒だし。

 『ウォーターバブル』を解除する前に、石でゴツい拘束具を作って嵌めておく。

 そんな感じで盗賊達を全員拘束し終わる頃には、ゴルドーさんの方も被害状況の確認が終わっていた。


「シュウさん。こちらは終わりました。こちらの治療までしていただいてありがとうございます」

「ああ、いえ。被害状況はどんな感じでしたか?

「男は私以外盗賊に斬り殺されてしまいました。残っているのは女ばかりです。それと、申し上げ難いのですが、矢に毒でも塗られていたのか、馬が2頭とも泡を吹いて死んでしまいました。……仮に、荷物を捨てて行ってもこの人数ですから、町まで辿り着くのはかなりキツいでしょう」


 男は僕とゴルドーさんの二人。それ以外は女性が十数人、か。

 馬が一頭でも残っていれば、町まで走って貰って救援が出して貰えたのに。


「んー…近くの町までどれくらいですか?」

「……馬車で3日、というところですね」


 徒歩ではキツいな。


「馬車自体は無事でしたか?」

「多少傷んではいますが、使えないことはないと思います。ただ………馬車を起こすだけの男手が足りないのでそれも不可能になってしまいました。助けて頂いたのに申し訳ない」

「ああ、いや。気にしないで下さい。うーん……ちょっとだけ時間を貰っても良いですか?」

「それは構いませんが……私たちも荷物を整理しないといけませんので」

「ええ、分かりました。じゃあちょっと馬車を起こしますね」

「は?」


 歩いて馬車に近付き、見てみると車輪の軸が折れていた。

 ふーむ、これは骨生成で作れるかな。

 いや、ここは森の中だから木材は豊富にあるか。

 でも、水分を多く含んでいるから木材としてはすぐに使えないかな。やっぱ骨かー。

 シグ達の所で学んだ魔力操作で分かったことだけど、骨生成を使うときに、予め魔力で形を作ってから骨生成をすると、そのままの形で骨を作ることが出来る。

 だから折れた軸を覆うように魔力を展開。

 補強するように骨で覆うだけで軸ぐらいなら補強できる。魔法ってすごい。

 そして、体内と馬車に魔力を巡らせて持ち上げる。


「よ…っと」


 続けてもう一つも同じように起こす。

 よし、これで馬車の方は良いかな。

 引き手がいないけど、ガルに引かせればいっか。速度が遅いのが難点だけど。


「これで馬車は使えると思います。馬代わりにガル、さっき森の奥へ行った白い芋虫に引かせますので、これで移動に関しては大丈夫です。あとは何かありますか?」

「その、大変言いにくいのですが、捕らえた盗賊を乗せる余裕があまりなく……」


 そういえば、ダールソンさんが言っていたっけ。

 商人は、余分なスペースを作るぐらいならギリギリまで商品を積み込むって。

 王女とメイドがいる時点で偽装なんだろうけど。


「大丈夫ですよ。とりあえず乗り込んで出る準備をお願いします。盗賊はその間に運べるようにしますから」

「わかりました。本当にありがとうございます。今は持ち合わせがありませんが、この御恩は必ずお返しいたします」

「ああ、いえ、お気になさらず。困ったときはお互い様ですから」

「命を救われて御恩を返せないようでは商人の名折れ。私どもにできることなら何なりとお申し付け下さい」

「あっ、はい」

「キュィ」

「ああ、ガルも無事に戻ってきましたし、話は移動しながらにしましょうか」


 乗り込むのを確認してから魔法で土と石のリアカーを作り、盗賊たちを放り込む。ついでに逃げられないように蓋をしておく。呼吸ができれば問題ないだろう。


「ガル、馬車を引いてくれるか?」

「キュィ(首?を横に振る)」

「スケイルファングの鱗やr―――」

「キュィ-!!!」

「待て、まだ引くんじゃない!まったく……」


 ガルの体を掴んで止める。そうしなければ、僕が乗る前に行ってしまうところだった。


「シュウ様、こちらは全員乗りました」

「ああ、はい。じゃあ行きましょうか。ガル」

「キュィイイ-!!!」


 ガルの前にスケイルファングの鱗をぶら下げて出発した。




2016/10/01 ●「頭」を「お頭」にしました。

2016/10/12 ●王女の年齢を11から9に変えました。

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