第12話 「ダンジョン 整理 と スケルトン」
「よしっ!お前の名前は『タルタス』だ」
【名前が承認されました。】
■名前:タルタス
種 族:アンデット・人型種
年 齢:0歳
性 別:♂
レベル:Lv1(永級)
クラス:スケルトン
状 態:隷属
ダンジョン防衛用に、とりあえずこのスケルトンのタルタスを強くしよう。
Lv1から上がらないんだし、数をこなして技術を身に着ければ、ちょっとしたレベル差ならどうにかできるかもしれない。
「よし、タルタス。軽く打ち合おう」
骨生成で密度を上げた骨でナイフぐらいの棒を作る。
鉄の剣を縦に振りかぶってきたのを横に避ける。横薙ぎにしてきたものを骨で受け止める。手に伝わってくる衝撃が軽いな。
そもそも剣の扱い方も剣道の授業を少しやった程度だし、あれは両手で扱うからちょっと違うしなー。
と、手を止めて僕が悩んでいると、
「シュウ様。私、剣の扱いなら多少の心得がありますわ」
「え?」
見た目からは想像もつかないんだけど。
「ふふっ、見た目ではそうは見えないと思いますが、これでも『剣術Lv5』のスキルを持っております。ですので、多少のお相手はできますわ。もちろん、メインは魔法なので少々…ですが」
「えーっと…なら、少し良いか?あ、打ち合うだけのものがないな…」
「大丈夫ですわ、獲物はこちらで用意いたしますわ!!」
「ああ、悪いね」
そう言って、持ちやすいように柄に革が巻かれ、真っ直ぐに伸びた平べったい40cmほどの打撃武器。
―――所謂、「鞭」を持たされていた。
「………」
「さあ!始めましょうか、シュウ様!!…あふんっ!」
「………」
「良いですわ!その調子です……ああっ!」
バチンッという音とともに、剣道で言う小手が決まって悦ぶシグ。
「…はぁ………はぁ…はぁ…もう終わりですの?こういうものは本気にならなければ身につきませんわ!」
「………」
お前の所為でやる気が削がれてるんだよ!!
と、顔に出ているかもしれないけど言わないでおく。
そうやって少しの間、鞭で打ち合った(卑猥な意味は一切ない)。
「シュウ様、少しはお力になれましたか?」
「………」
ひじょーに!………不本意ではあるけど、物凄く勉強になった。解せぬ。
具体的に言うと、棒や剣と違ってしなるため、実際に当てようと思うと思ったより遅く相手に当たる。つまり、お互いに避けやすくなる。
その上で、剣道のように相手の竹刀に合わせて自分の竹刀をぶつける、ということをしようと思うと防御が遅れるし、しなるから逸らさないと半端に当たる。
だから、攻撃するにも防御するにも予測して行動しないといけないから思ったより頭を使う。先読みに大分慣れさせられた。
しかも、クリーンヒットを狙うには当てる瞬間だけに力を集中する必要がある。じゃないとペチっという情けない音しか鳴らない。
ふざけている様で、思ったより勉強になった。
ただ、シグの趣味に付き合わされたのは間違いない。
今も満足気な表情をしているから、うまいこと利用されたんだろう。納得はいかないが。
「ふふっ、シュウ様の力になれたようで何よりですわ!」
肌がツヤツヤして、キラキラした良い笑顔をしている。殴りたい、その笑顔。
実際に『剣術Lv1』と『鞭術Lv1』を取得できた。
鞭の方は正直いらなかったわ…。
そういえば、シグとダールソンさんに教えてもらったけど、スキルというのは覚えたから使えるようになるんじゃなくて、ある一定以上使えるからスキルとして覚えるらしい。
これを知ることができたのは結構大きいな。
つまり、スキルレベルが上がるとそれだけ技術が上がっているということ。
これならレベルに関係なく技術を上げることで、強くなることは可能かもしれない。
まあ、レベルアップに比べれば微々たる物だろうけど。
「よし、じゃあ今度こそ打ち合おうか、タルタス」
本当にあれで勉強になったことは納得がいかないけど、さっきよりかは大分マシになったことが分かる。
タルタスに少しでも良いところ、ダメな所を教えていく。
30分ぐらい打ち合っていただろうか。始めに比べて僕もタルタスも剣の扱い方がうまくなったと思う。
僕はシグから続けて打ち合っていたのもあって少し疲れたけど、タルタスはまだまだ動けそうだ。
スケルトン…というかアンデットって疲れ知らず睡眠いらずだから、長期戦は避けないと危ないな。
「これで一旦止めにしようか、タルタス」
僕の言葉でタルタスは直立になる。
これ、城とかに置いてありそうな全身鎧にスケルトンとか入ってたら分からないやつだな。
奇襲とかに使えそうだ。ここは洞窟だからやらないけど。
それにしても、はぁー…疲れたー。
深呼吸しとこう。
「………すぅー…はぁー…」
そういえば、この30分ぐらいでどのぐらいMPが回復したんだろうか。
ステータスで確認してみると、ほぼ全回復している。
んん?もしかしてMPって簡単に回復するものなのか?
「なあ、シグ」
「なんですか、シュウ様?」
「魔力の回復ってどうすれば良いんだ?」
「魔力ですか? そうですね。魔力回復薬という薬を飲むか、魔力が多く含まれている食事を取るか…一番は睡眠ですわ」
「睡眠か…ってことは0近くまで消費したら、今日はもうコアに魔力は注げないよな」
だとしたら…どういうことだ?
とりあえずもう一度魔力を消費してみるか。
もう一度ダンジョンコアに手を触れて魔力を流し込んでみる。
【『怨恨』のダンジョンがLv2に上がりました】
【呪いの効果により、『怨恨』のダンジョンがLv1になりました】
うん。とりあえずスケルトンをもう一体召喚しておこう。
【モンスター召喚により、スケルトンLv1を召喚しました】
始めはタルタスって名前を付けたから、次はチで始まる名前にしようかな。
………チ、チ………チェスターだな。
■名前:チェスター
種 族:アンデット・人型種
年 齢:0歳
性 別:♂
レベル:Lv1(永級)
クラス:スケルトン
状 態:隷属
「よし、タルタスとチェスターは軽く打ち合っててくれ。タルタスはチェスターに教えるように動いて、チェスターはタルタスから動きとかを学ぶように。あと、魔石はお互いに壊さないようにな」
そういえば、魔力に余裕があるからもう100DPぐらいなら使えそうだな。
宝物庫の拡張しておこうかな。これからダンジョンに向かうらしいし。
再びダンジョンコアへと手を触れて魔力を流し込む。
【『怨恨』のダンジョンがLv2に上がりました】
【『怨恨』のダンジョンコアの最大DP値が100から200になりました】
【呪いの効果により、『怨恨』のダンジョンがLv1になりました】
ん?
今違うアナウンスが聞こえたような…。
確認してみるとさっきまでLv1で「0/100DP」だったDPが「0/200DP」に変化している。
呪いの所為でレベルは上がらないはずなんだけど…。
まあ、いっか。
使える物が増えたならそれに越したことはないしね。
早速、200DPでできることを表示してみる。
■200DP
・宝物庫の前の部屋に扉をつける。
・罠を設置する(紐を引っ張ると石が落ちてくる)
・宝箱(空)を設置する。(初回のみ)
うん。ショボイ。
本格的なダンジョンって、本来はかなりダンジョンが成長しないと作れないんだなー。
とりあえず部屋広げておこう。
魔力を補充して部屋の拡張を2回しておく。
もうちょっとステータスが高ければなー………。
でも、これで今日はダンジョンスキルはほぼ使えない、はず。
あとは、MPの回復速度を細かく見ていくだけだな。
それにしても、考え事をしている間、休むことなくタルタスとチェスターは打ち合っているな。
あ、タルタスがチェスターの頭を飛ばした。
【スケルトンがLv2に上がりました】
【呪いの効果により、スケルトンがLv1になりました】
うん。タルタスも僕の配下扱いだし、呪いの効果はかかってるよね。
【スケルトンの『復活Lv1』により、復活しました】
なるほど。スケルトン側だとこういう風になるのか。
お、復活してまた打ち合っている。
「シュウ君、そこを掴んで引っ張ればクラッシュスパイクは簡単に引き抜ける」
「あ、本当ですね。これは大分楽になりますね」
「で、そのトゲを根元からこう折ってだね…」
「ふむふむ」
ついでに時間が勿体無いから、ダンジョンボックスこと宝物庫の中身を整理している。
食料、素材、魔石等などある程度、宝物庫から出して、仕分けて、分類して戻していく。
「で、スケイルファングはこの骨に沿って鱗を剥がすと…」
「おおー!こんなに簡単に取れるんですねー!」
「うむ。さらに、この骨を掴んでナイフでこっちとそっちに分ける。それで、こっちの肉は焼いた方が美味い。そっちの肉は煮込み料理にすると良い」
「なるほど。勉強になります」
「それとクラッシュスパイクの殻を外側にそって割ると、良い感じの器になる。町まで持っていくことができたら加工して貰うと良い」
「これは助かりますね」
そんな感じで30分ほど。
ダンジョンスキルやダンジョンボックスの整理をしている間に、スケルトンたちのアナウンスが何回か聞こえた。
始めの方はタルタスが一方的に勝っていたが、打ち合いを重ねるうちにチェスターが倒されるまでの時間が長くなり、とうとうチェスターが1回勝った。
その頃になると、どっちも『剣術Lv1』を取得した。
あれ?これ僕より強くなっていくのでは…?
「では、シュウ君。そろそろ近くのダンジョンへ向かうとしようか」
タルタスとの稽古もそこそこにダールソンさんが声をかけてくる。
「でも、このダンジョンどうしましょう?」
「大丈夫だ。出るときに魔法で同じように入り口を塞いでおこう」
「よろしくお願いします」
タルタスとチェスターに続けて訓練を続けるように指示を出しておく。
もし鉄の剣が劣化して折れたら素手での訓練に切り替えること。それと、ないとは思うけど侵入者がきたら撃退するように追加で指示を出しておく。
ダールソンさんが魔法で入り口までの洞窟を元に戻し、ダンジョンへと出発した。




