19、十五歳の誕生日(ルイン)
十五歳になった。
朝、目を覚ました僕は、窓から差し込む朝日を眺めながら、そんなことを考えていた。
今日から十五歳。
特別に何かが変わるわけではない。昨日までと同じ部屋、同じ天井、同じ朝の景色。それなのに、不思議と胸の奥がそわそわしていた。
「ルイン、起きているか?」
扉の向こうから父さんの声が聞こえた。
「はい、起きています!」
「なら、早く下りてこい。今日はお前の誕生日だろう?」
そうだった。
僕は慌てて着替え、階段を下りた。
食堂には、いつもより少し豪華な朝食が並んでいた。母さんが用意してくれた料理に、父さんも満足そうな顔をしている。
「十五歳の誕生日、おめでとう。ルイン」
「おめでとうございます、ルイン」
「ありがとう、父さん、母さん!」
二人に祝福されると、自然と笑みがこぼれた。
家族に祝ってもらえる。それだけで、今日という日が特別なものになった気がした。
食事を終えた頃、もう一人の来客がやってきた。
「お誕生日おめでとう、ルイン!」
顔を出したのはリゼットだった。
彼女はいつもより少し緊張した様子で、小さな包みを差し出してきた。
「これ、私からのプレゼント」
「僕に? ありがとう。開けてもいい?」
「うん」
包みを丁寧に開くと、中から現れたのは上品な装飾の施されたペンだった。
「わあ……綺麗だね」
「もうすぐ学園に入学するでしょう? 勉強で使えると思って」
「大切に使うよ。ありがとう、リゼット」
僕がそう答えると、彼女はほっとしたように微笑んだ。
その笑顔を見ていると、僕まで嬉しくなる。
十五歳。
大人に一歩近づいた年齢だ。
まだ知らないことも、できないこともたくさんある。それでも、これから少しずつ成長していけるのだと思うと、楽しみだった。
「ルイン、少し話がある」
父さんが真剣な表情で僕を呼んだ。
「お前も十五歳になった。以前から話していた王立学園への入学について、改めて説明しておこう」
王立学園。
十五歳になった者たちが集まり、魔法や戦闘、さまざまな知識を学ぶ場所だ。
もちろん、僕もその存在は知っていた。
「入学後は寮生活になる可能性もある。学ぶことも増えるし、今までのように家族がすべて面倒を見てやれるわけではない。自分のことは自分で考え、行動するようにしなさい」
「はい!」
「リゼットも一緒に入学する予定だ。互いに助け合いながら、しっかり学んでくるといい」
「うん、ルイン。一緒に頑張ろうね」
リゼットがこちらを向いて笑った。
「もちろん!」
王立学園での生活。
新しい友人との出会い。知らない魔法や知識。そして、今まで経験したことのない毎日。
考えるだけで、胸が弾んだ。
もちろん、不安がないわけではない。
僕はどこまで成長できるのだろう。新しい環境で、ちゃんとやっていけるのだろうか。
けれど、隣にはリゼットがいる。
それに、ここで過ごした日々も、家族から教わったことも、決して無駄にはならないはずだ。
「楽しみだな、学園」
思わず口にすると、父さんが満足そうに頷いた。
「ああ。だが、楽しむだけでは駄目だぞ」
「分かっています!」
そう答えたものの、期待に胸が膨らむのは止められなかった。
十五歳の誕生日。
それは、僕にとって新しい生活の始まりを告げる日だった。




