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勇者の君へ ——僕は平穏に暮らしたかった物語——  作者: R.R.
第二章 集い、始まる

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17/20

17、学園へ

中の人の仕事が増えたこともあり、今まで毎日2話投稿でしたが、これからは1日1話投稿にします。これからもご愛読よろしくお願いします。

しばらく経ち、ルネはほぼ同じ年になってしまったのか、セシリアのことを「おねえちゃん」ではなく「セシリア」呼びに変わった頃だった。


朝、セシリアは食卓に置かれた一通の手紙を見つめていた。


「……学園、か」


 王国から届いたその手紙には、十五歳になった者は学園へ通い、魔法や戦闘、歴史などの知識を学ぶこと、と記されていた。


 十五歳。


 今のセシリアとルネは、どちらもその年齢に当てはまる。


 つまり、二人とも学園へ行かなければならないらしい。


「ねえ、ルネ。これ、どう思う?」


「どうって……行かなきゃいけないんでしょ?」


 向かいの席でパンをかじっていたルネは、手紙をちらりと見て答えた。


「まあ、そうなんだけど……」


「じゃあ、行けばいいじゃん。学園って、どんなところなの?」


「それは……」


 セシリアは言葉に詰まった。


 知っている。


 よく知っている場所だった。


 かつて、セシリアが勇者として過ごした場所。そして、シトと出会い、何気ない日々を重ねた場所。


 楽しかった思い出もある。


 けれど、思い出したくないことも、そこにはたくさん残っていた。


「セシリア?」


「……ううん。なんでもないよ」


 セシリアは小さく首を振り、手紙をたたんだ。


 過去を思い出したからといって、今の自分が変わるわけではない。


 そう思おうとしても、胸の奥には、言葉にできない感情が静かに沈んでいた。


「私も一緒に行くよ」


 ルネが突然そう言った。


「え?」


「だから、学園。セシリアだけ行くのも変でしょ?」


「いや、ルネも十五歳なんだから、最初から一緒に行くことになるんだけど……」


「そうなの?」


「そうなの!」


 思わず声を張り上げると、ルネはきょとんとした顔をした。


 その様子がおかしくて、セシリアはつい笑ってしまう。


「もう。ちゃんと手紙を読んでよ」


「細かいところはセシリアに任せる!」


「任せないで!」


 いつものようなやり取り。


 それだけで、さっきまで胸の中にあった重たい気持ちが、ほんの少しだけ軽くなった。


 シトと過ごした日々は、もう戻ってこない。


 それでも、今のセシリアには、隣で笑うルネがいる。


 過去を忘れる必要はない。


 ただ、過去だけを見つめて生きる必要もないのだ。


「……よし。じゃあ、二人で学園に行こうか」


「うん!」


 ルネは嬉しそうに頷いた。


 こうして二人は、学園へ通う準備を始めることになった。


 そして数日後。


 セシリアとルネは、王国の学園の門の前に立っていた。


「……変わってないなあ」


 目の前に広がる建物を見つめ、セシリアはぽつりと呟いた。


 懐かしい景色。


 かつて歩いた廊下も、授業を受けた教室も、きっとあの頃と大きくは変わっていないのだろう。


 そして、この場所にはシトとの思い出が残っている。


 胸が少しだけ痛んだ。


「セシリア、早く行こうよ!」


 先に歩き出したルネが、振り返って手を振る。


「……うん、今行く!」


 セシリアは一度だけ学園を見上げ、それからルネのもとへ歩き出した。


 今度は勇者としてではなく、一人の少女として。


 新しい日々が、ここから始まる。


 懐かしい場所で、懐かしい思い出を胸に抱きながら。


 セシリアはルネと並んで、学園の門をくぐった。

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