↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の君へ ——僕は平穏に暮らしたかった物語——  作者: R.R.
第二章 集い、始まる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/20

12、パン屋 セシリア

1人のパン屋がパンをこねていた。


銀の髪と青い目を持った彼女は、その姿を粉まみれにしてパンをこねていた。


彼女はセシリア。


15年前に魔王を討伐した勇者で、平和になった世の中で港町にパン屋を開いている。


彼女のパンは町の中でもかなりの評判だ。


彼女は銀髪碧眼の整っている顔立ちと言えども、もう30代。




彼女は学生時代、とても大切な人を失った。


その関係で、本来学園に通うはずだった期間の半分を学生として過ごせてない。


その前も勇者として、あまり学園で馴染めなかった。


全体的に、彼女はあまり学生というものを過ごせていない。




「はぁ…..学生かぁ….」


彼女は失った「彼」を思い出す。


不満はない。後悔もない。だけど…..


「いかんいかん。全ては過去、終わったことだ。」


彼女は気を取り直して、透明な粒を摘む。


「これ、美味しそう….パンに入れるか」


普通の人なら、透明な粒をパンに入れない。食用のパンに。


しかし彼女は、元でも勇者。逞しいのだ。


この透明な粒は、港町に来た行商人から貰ったものだ。


行商人曰く、旅をしていたら拾ったらしい。


この判断がまさかあんなことに…..


   ◇


パンをかまどに入れて焼き始める。


セシリアはその間にテーブルの準備をする。


一人暮らしとはいえ、癖は抜けない。


セシリアは、何も飾られていない壁を見て感慨にふけっていた。




そこにはもともと、聖剣が飾られていた。


魔王を討伐した聖剣だ。


それは、とある少女に渡した。


その少女は5年前にこのパン屋に来たルネという子だった。


ルネは当時10才だった。


黒髪黒目で、整った顔立ち。

どこか失った彼を思い出させるような見た目。


セシリアは、そんな見た目に惹かれて一緒に旅をした。


なんてことない2人旅だった。


美味しいものを食べ、綺麗な景色を見て、古代の遺跡を少しだけ見る。


その旅を通してルネは、自分自身の生きたい人生を見つけた。


セシリアはそんなルネを見て、聖剣を託した。


自分の代わりにルネのそばにいて欲しいと。




「もう5年か」


何もない壁を見て呟く。


長いような、短いような、そんな日々だった。


「そろそろ焼きあがってる頃かな??」


かまどからパンを取り出す。


ホカホカと湯気がたちのぼり美味しそうだ。透明な粒さえ入っていなければ。


セシリアはそんなことも気にせずテーブルに盛り付ける。


「いただきます」


食前の挨拶を終え、チーズをパンに挟み、口に含む。


「うん、美味しい」


口からチーズがとろりと溶けているのはご愛嬌だろう。


  ◇


そのまま食事を済ませ、片付けをしているところだった。


視界が歪む。


吐き気がする。


明らかにあの透明な粒が原因だろう。


そうして、セシリアは意識を失った。



セシリア「全ては過去、終わったことだ。」


 シト 「過ァ去ォ!???」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。