10、黒い剣
僕は、戦場にいた。
一振り。
二振り。
剣を振るたび人が死んでいく。
見たことのない見覚えのある黒い剣だ。
彼らが剣から逃げるよう距離を空ける。
僕はそれでも彼らを殺さなくてはならない。
地面に魔力を張り巡らせ、彼らの近くまで魔力を流す。魔力を圧縮し、槍の様に物質化。
それを、敵に一突き。
一歩も動かなくても殺せる。
そんな僕を見て、彼らの1人が叫ぶ様に問う。
「どうしてこんなことをするんだ!!」
「ーーーーーーーーーー」
聞こえない。
僕はあの時、なんて言ったんだっけ?
いや、僕はそもそもなんで彼らを殺そうとしているのだろう。
◇
場面が変わる。
目の前に誰かいる。
誰だろう、この人は…..。
それに、なんか手足が今さっきより短いような……。
「魔王っっ…..」
瞬間、魔王は剣を向けて目の前で斬りかかろうとしていた。
危ない!!!
そう思うより早く、僕は体を傾ける。
その動きを利用し、魔王の懐に潜って圧縮した魔力を撃ち込もうとする。
魔王も分かっているように、撃ち込まれた魔力に耐える硬さの魔力の壁を局所的に張る。
その後も、鍔迫り合いの戦いが繰り広げられた。
「僕」は僕が気付くより早く、魔王の動きに反応している。
なんとかして、僕は魔王の心臓に聖剣を突き刺す。
「これで、僕は認めてもらえる……」
幼い声が、疲れた様子で物寂しい城の中でこだまする。
小さく、しっかりと、黒い力が魔王の中で脈動する。
聖剣は、その脈動に気付いたのか否か、黒い力を吸収し出した。
聖剣を持っている僕にも黒い力が流れ込んでくる。
熱い。
冷たい。
痛い。
苦しい。
憎い……
黒い力と共に感情もなだれ込んでくる。
まるで何千年分のような重さだった。
そして、聖剣は最初僕が持っていた黒い剣になった。
◇
場面が変わる。
たくさんの屍が積み上がっている。
また、僕は戦場にいる。
前回と違うのは、目の前にいる人だ。
銀髪で青い目、そして聖剣。
彼女の聖剣は彼女のように美しく、彼女のように優しかった。
彼女が聖剣を大きく振りかぶる。
速い。けど、まだだ。
僕は半歩下がって、彼女のバランスを崩す。
僕はすかさず、彼女を踏み潰す。
「流石勇者だ、耐えるとはな。だが……」
僕は一息、間を空けて。
「弱い」
彼女の顔が歪む。
その後、僕は彼女を痛めつけた。僕を、魔王を殺したくなるほど恨むように。
僕は戦場を後にして、人の気配がいない場所まで来た。
黒い剣を見る。
憎い。憎い。憎い。ニクい。ニクイ。ニクイ。ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ
彼女の顔が浮かぶ。それだけで気持ちが鎮まった。
「セシリア———」
僕は彼女と、黒い剣に誓った
「————————」
何を誓ったんだっけ?
◇
目が覚める。
いつもより少し早い時間に起きたようだ。
目元に違和感がある。僕は、泣いていたのか……
なんで泣いていたかは覚えていない。多分、悪夢でも見ていたんだろう。
僕はどこか言葉にできない寂しさを胸に残った。
朝の時間が空いたので、いつもより一回でも多く剣の素振りをしよう。
大切な人を守るために。




