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勇者の君へ ——僕は平穏に暮らしたかった物語——  作者: R.R.
第一章 天才、ここに誕生

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10/20

10、黒い剣

僕は、戦場にいた。


一振り。


二振り。


剣を振るたび人が死んでいく。


見たことのない見覚えのある黒い剣だ。


彼らが剣から逃げるよう距離を空ける。


僕はそれでも彼らを殺さなくてはならない。


地面に魔力を張り巡らせ、彼らの近くまで魔力を流す。魔力を圧縮し、槍の様に物質化。


それを、敵に一突き。


一歩も動かなくても殺せる。


そんな僕を見て、彼らの1人が叫ぶ様に問う。


「どうしてこんなことをするんだ!!」


「ーーーーーーーーーー」


聞こえない。


僕はあの時、なんて言ったんだっけ?


いや、僕はそもそもなんで彼らを殺そうとしているのだろう。


         ◇


場面が変わる。


目の前に誰かいる。


誰だろう、この人は…..。


それに、なんか手足が今さっきより短いような……。


「魔王っっ…..」


瞬間、魔王は剣を向けて目の前で斬りかかろうとしていた。


危ない!!!


そう思うより早く、僕は体を傾ける。


その動きを利用し、魔王の懐に潜って圧縮した魔力を撃ち込もうとする。


魔王も分かっているように、撃ち込まれた魔力に耐える硬さの魔力の壁を局所的に張る。


その後も、鍔迫り合いの戦いが繰り広げられた。


「僕」は僕が気付くより早く、魔王の動きに反応している。


なんとかして、僕は魔王の心臓に聖剣を突き刺す。


「これで、僕は認めてもらえる……」


幼い声が、疲れた様子で物寂しい城の中でこだまする。


小さく、しっかりと、黒い力が魔王の中で脈動する。


聖剣は、その脈動に気付いたのか否か、黒い力を吸収し出した。


聖剣を持っている僕にも黒い力が流れ込んでくる。


熱い。


冷たい。


痛い。


苦しい。


憎い……


黒い力と共に感情もなだれ込んでくる。


まるで何千年分のような重さだった。


そして、聖剣は最初僕が持っていた黒い剣になった。


        ◇


場面が変わる。


たくさんの屍が積み上がっている。


また、僕は戦場にいる。


前回と違うのは、目の前にいる人だ。


銀髪で青い目、そして聖剣。


彼女の聖剣は彼女のように美しく、彼女のように優しかった。


彼女が聖剣を大きく振りかぶる。


速い。けど、まだだ。


僕は半歩下がって、彼女のバランスを崩す。


僕はすかさず、彼女を踏み潰す。


「流石勇者だ、耐えるとはな。だが……」


僕は一息、間を空けて。


「弱い」


彼女の顔が歪む。


その後、僕は彼女を痛めつけた。僕を、魔王を殺したくなるほど恨むように。


僕は戦場を後にして、人の気配がいない場所まで来た。


黒い剣を見る。


憎い。憎い。憎い。ニクい。ニクイ。ニクイ。ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ


彼女の顔が浮かぶ。それだけで気持ちが鎮まった。


「セシリア———」


僕は彼女と、黒い剣に誓った


「————————」


何を誓ったんだっけ?


      ◇


目が覚める。


いつもより少し早い時間に起きたようだ。


目元に違和感がある。僕は、泣いていたのか……


なんで泣いていたかは覚えていない。多分、悪夢でも見ていたんだろう。


僕はどこか言葉にできない寂しさを胸に残った。


朝の時間が空いたので、いつもより一回でも多く剣の素振りをしよう。


大切な人を守るために。

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