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第1話:転生したのに得られたスキルは『ポップコーン』でした⁉︎ 前編

 意識を取り戻した時、辺りは真っ黒なモヤに覆われた何もない場所だった。


「ここ、どこ」


 呟いた声が一切反響せず、このモヤに呑み込まれていく。

 肌寒くて居場所も分からない状況で恐ろしさよりも居心地の良さを感じる違和感。


「おー。やっと目覚めたか」


 どこからか聞こえてくる陽気な声。


「誰だ」


「誰だって、んー。なんて言えばいいのかな。難しいな〜」


「い、いいから答えろ。お前は誰で、ここはどこだ。俺は、死んだのか?」


「質問多くない? 欲張りすぎじゃない?」


「……」


「まあまずは姿を見せようか」


 声の主がそう言った途端、目の前に白い光が現れた。

 その光は眩しさというよりも神々しさを放っており、次第に人の形へと変わっていく。


「もう見えた〜?」


「見えてる」


 形を変えた白い光から浮き出てきたのは、如何にも怪しい教祖のような男。

 しかも、容姿の整った美形である部分なんか特に気に食わなかった。


「んじゃー、サクッと状況説明しちゃうよ〜」


 おまけにこのラフな話し方。

 全てが気に入らない。


「これから君を別の世界に転移させるんだけど、僕から授けられるスキルって何もなくてね。厳密にいうと君が生前最後に欲したものがスキルになるって感じなんだけど」


「えっと。話が飛び過ぎてよく分からないんですけど」


「細かいことは転移した後に脳に送るから」


「送るってどういう。それにスキルってなんだよ」


「あ、ごめん、もう時間ないから。それにしても僕がこんな短時間で追い出されてしまうなんて、君は並外れた精神力なんだね」


「精神力?」


「それじゃあ、もう転移させるんだけど。もし、何か困ったら脳みそに聞いてみるといいよ」


「いや、だから、こっちの質問に答えてよ」


「じゃあ、期待してるよ。バク君」


「バクって誰だ……」


 そう聞き返した瞬間に当たりが白い光に包まれ目を閉じる。

 数秒すると冷たい風が髪を撫でるように通り過ぎて目を開ける。


「う、嘘だろ」

 目の前に広がる広大な草原と大地、そして何よりも信じ難いことは恐竜のような生き物が大量に生息しているということだった。


 ここはなんなんだ。

 そう考えた時、脳に直接語りかけるような声がした。


『ここがどこかはプログラムされておりません』


 そう言えば脳に送っておくとか意味の分からないことを言っていたな。

『さっき俺と話した光の人間は誰なんだ』


 バクはそう質問しながら遠くにいる獣への視線も外してはいなかった。


『あなたの指す光の人間とは神です』


『じゃあ、俺が転移された理由ってのはなんだ?』


『死んだからです。今回は、特別に神が蘇生し元の身体での転移となりました。しかも、全盛期の肉体まで巻き戻してから転移させております。感謝しろよ、カス』


 こいつ、今カスって言ったか?


『じゃあ、スキルがどうとか言ってたけど』


『ステータス見ろ』


『ステータスってどうやって見るの?』


『ステータスって言えよ。ゴミみたいな質問多いと無視するぞ』


 どうやら舐め腐った性格のAIを脳に埋め込まれたらしい。


「ステータス」

 言われた通りに唱えてみると、目の前には光のプレートのようなものが生成された。


 名前:バク

 ユニークスキル:ポップコーン

 効果:ポップコーンの種を生成、調理し食べれる状態で放出する。

 適正魔法属性:水


 ステータスプレートを眺めながらも、獣の一匹が低く唸り声を上げたのが聞こえた。


「は。スキル、ポップコーンってなんだよ。効果とか見てもマジで食うだけじゃねーか。生成したポップコーン食べるとレベルアップとか、RPGのレアアイテムみたいな効果もないのかよ」


『それは、あなたが生前の最後に欲したものがポップコーンだったからです』


 言われてみればそうだった。

 もし、あの時に空を飛べたらなとか思っていたら飛行系のスキルだったってことか。


 バクは恐竜のような猛獣が生息する草原にいることすらも忘れて頭を抱えていた。

 その最中に地面が微かに揺れたことで顔を上げる。数が増えている。


『ちなみにさ、良くある異世界転生とか転移だったらレベル表記とかあると思うんだけど、この世界ではレベルって概念はないの?』


『はい。そもそもステータスプレート自体も転移者のみが得たスキルのようなものです。この世界に住む人々は適正魔法と天性の才であるユニークスキルを調べるだけで以降の成長は数値化されていません。その点はあなたの居た世界と同じだと思ってください』


 なんとなくだが自分の置かれた状況が理解できてきた。

 俺が持っているのはポップコーンが作れるというゴミスキルに水系統の魔法ってことか。

 このままじゃ獣に喰われて死ぬ運命だな。


『魔法ってどう使うの?』


『データがないので分かりません。原住民に教わることを推奨します。他に聞きたいことはありますか? 特にないようでしたらシステムを凍結します』


『他に聞いておいて方がいいことはある?』


『いえ、基本的なことはお話ししたかと。あとはご自身で情報を集めてください。そして、誤解しないでくださいね。この世界はあなたの生きてきた世界とは異なりますが、現実です』


『ああ、分かってる』


『どうか長く生きられることを願っています。それでは』


 不吉な言葉を残してからは脳内にいくら話しかけても応答がなくなっていた。

 その時、バクは自分を囲むように集まり始めた恐竜のような獣たちを眺めていた。


「スキルとかでなんとかなるって思って情報収集優先してたけど、どうにもならなそう」


 その口元は引き攣りながらも微かな笑みが浮かんでいる。

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