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第5話:いざヴェルティア王国王都へ 中編

 ソルト村からヴェルティア国王都までの道のりは平坦続きで苦労なく思われるが、果てしない荒野に放り出されるのと同義である。

 バクが身をもってそう感じ始めたのは出発から二日が経過した頃だった。


「なあ、長くね?」


 イライラを隠せずにいるバクとは対照的に「そうね」と冷静な返事をするエル。

 ただ、彼女も冷静なわけではなく無駄な体力を使いたくないだけなのだ。


「王都の道間違えたんじゃねぇの?」


「……」


「なあなあ、迷子になったんじゃねぇの?」


 エルの額には血管が一本、また一本と姿を表し始めて片眉を釣り上げていた。


「なあなあ、エルの魔法で涼しくしようぜ。遮るもんもないからくそ暑いんだよな」


 頭の後ろに手を回して文句を言いながらも呑気な足取りで進んでいくバク。その背後で怒りが頂点に達してるエルが拳を構え、氷を纏った。


 ボゴッ!


「痛ってぇぇぇ!」


 氷の鉄槌を脳天に落とされたバクが痛みに抗うようのたうちまわってはエルに見下される。

「どう? 少しは冷えた?」


「俺が欲しいのはそういう氷魔法かないんだけどな」


『はっはっはー。ざまあないな』

 脳内AIはバクから勝手に寿命を奪うという制約のもと健在しており、一年たった今では相棒のよう……にはいかないが定期的に現れてはバクを罵って遊んでいる。


『だから、勝手に俺の寿命使うなや!」

 バクは脳内AIに怒りを向けたはずだったが、表情にも漏れていたせいでエルが勘違いをしてしまう。


「何? 何か言いたげね? 言ってごらんよ」


「違うんだよ。今のはエルにじゃなくて」


「この見晴らしの良い場所で私とバク以外に誰がいるの?」


『確かに。おっしゃる通りだ!』

 実体のない脳内AIは依然、やりたい放題である。


 こうしてバクの頭に三つほどの山を作り、二人は王都付近の森林に入り込んでいた。


「バク、見て」

 そう言ってエルが指差すところのには馬車道が出来ていた。

「もうすぐ近くってことだよな」


「うん。この森を抜けたらすぐなはず!」


「ちょっと見てみる!」

 バクはそう言って、手のひらを地面に向ける。

 ボンッ。ボンッ。ボンッ。ボンッ。と小さな破裂音を鳴らしてその爆風に乗って空に浮く。


 木の枝を避けながら森を突き抜けると目の前に広がる光景にバクは衝撃を受けていた。


『なあ、あれって、宮殿ってやつかな?』

『そうですね。地球で言うのならインドとかに近いかと思います』


『じゃあカレー?』

『それはどうでしょう。あくまでも見た目の話ですので』


『カレーパウダーとかあったらポップコーンもカレー味に出来るよな』

『あれ? 塩派ではなかったのですか?』


『一年も塩食ってりゃ飽きるだろ』

『それはそうですね』


 期待に胸を膨らませたバクがエルの元に戻ると彼女が臨戦体制に入っていたのですぐに魔力感知を試みる。

 魔力感知はバクが不得意としていた魔法の応用で、習得したのも最近であり感知できる範囲も極めて狭い。


 そのため敵の配置を確認するためでなく、自身に降りかかる攻撃を感知するという使用方法に切り替えていた。

 すると、魔力の気配がバクの張っていた魔力感知網に引っかかった。


 ボンッ!


 バクの破裂音が森林内に響き渡る。

 その音を聞いたエルが音の鳴った方へとやって来るののだが、決着はすでについているようだった。


 装備も付けずに身軽な格好をした金髪青年と馬乗りになり炎を纏った拳をチラつかせているバク。


「バク、その人が気配のあった……」

「多分そう、なんだけど。お前さ、なんで泣いてるんだよ」


 無抵抗なままに涙を垂れ流す青年は控えに言ってもかなりの美形なのだがそう感じさせないほどに号泣して叫び出す。


「俺は誰も斬りたかねぇぇんだぁぁ!」


 彼の大声に驚いた鳥たちもバタバタと空に逃げてしまう。

 一先ず、悪意のある敵ではないと判断したバクが彼の上から降りる。


「あんた、斬りたくないって言ってるが斬りかかって来たじゃねぇか」


「あれは俺じゃないんだよぉ〜。信じてくれぇ〜」

 そう言ってバクの足に縋るようにして泣き喚く。


 弱いものいじめでもしているような、そんな気分にさせられたバクとエルはため息を漏らしつつも腰を下ろして彼の言い分を聞いてあげることにした。

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