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第5話:いざヴェルティア王国王都へ 後編

「俺さぁ。小さい頃から触れるものなんでも斬れちまう体質で」

 涙ながらに語り出す金髪の青年の話をバクは頷きながら熱心に聞いていた。 


 一方、エルは泣き虫な男だと蔑むような視線を向けている。

 そのことに気がつくこともなく金髪の青年が話を続けた。


「多分、ユニークスキル。なんだろうけど、本当になんでも斬っちまうから王都では俺の立ち入りを固く禁じられているんだ。昔、王様の住む宮殿の先っちょを眺めてたら切断しちゃったことがあって」


「そんなこと出来んのか!?」


 明らかに興味を示すバク。

 それを静止するようにエルが耳打ちをした。


「凄い能力だけど危険だよ。見た感じ制御できてないでしょ」

「じゃあ、教えてやればいい。俺たちもカルメルに習ったんだ」


「もしそれで襲って来たらどうするの」

「どうするって。そんなことする奴には見えないが」


 二人だけのヒソヒソ話をじーっと見つめる青年は再び涙を浮かべて嘆いた。

「俺の悪口は見えないところでしてよぉぉ〜」


 このなよなよした態度がエルの癇に障ってしまい、彼女は氷魔法を使おうとするがバクがなんとか落ち着かせる。

 

「まあまあ。焦ったい気は分からんでもないが、こいつ可哀想じゃん。なんとかしてやろうぜ」

「なんで私も」


「だって、二人で教えた方が早くね?」

「本気でスキルの使い方教えるの?」


 バクはなんの躊躇いもなく頷く。そのまっすぐな瞳にエルは弱く、それによって臨時修行を行うことになったのだが。


「よーし。まずは自己紹介!」

 バクが溌剌とした声を上げると青年は背筋を伸ばして名乗り始める。


「はい! 俺はオースティン・アルバートだ!」

「ふむ」とバクが頷きエルに視線をやる。

「エルよ」


(ん? なんで名前だけ? まあいいか)


「俺はバクだ。これからスキルの使い方を軽く教えようと思う!」


 オースティンは目を輝かせて「バクさんもスキル持ち?」と尋ねる。


「そうだ!」


「さっき、俺の斬撃を吹き飛ばした凄い爆破がスキルか!」


「いや、ポップコーンだ!」


「ポ、ポ、ポップ、ノーン?」

「ポップコーンな」と苦笑まじりに言い直す。


 やはりポップコーンという穀物はこの世界では流通していないようだ。

 塩などがあるわけだから全てが前の世界と異なるわけではないにしろ、コーラを探す旅が長そうだと感じていた。

 

 バクは掌にポップコーンを生成し、口に入れる。

「これがポップコーンだ。美味いんだけど食べてみる?」


 オースティンは無言のまま首を縦に振りポップコーンを口に運んだ。

「んっ。んー、んんんん〜!!!」と、言葉にならない音を立てて目を見開く。


 その姿を見てバクはあははと腹を抱えて笑い出した。

「エル。こいつ面白すぎないか?」


 エルはそっぽを向いたまま「みっともない」と吐き捨てる。

 明らかに冷たい態度を取り続けているエルのことが気になっていたバクだが、彼にスキルの使い方を教えなくては死人が生まれてしまうため修行を急いだ。


 それに心優しきオースティンを人殺しになんてしたくはなかった。


「よし、じゃあまずはスキルが何たるかを説明するぞ」

「はい!」


 すっかり師匠のような面をしているバク。

 彼もこうやってカルメルから稽古をつけてもらい魔法もスキルも自分の力に変えていったのだ。


「いいか? まず、スキルとは魔法の自動化だ。普段魔法を使う時ってのは魔力を集めて、生成するものをイメージする。もしくは決められた術式に当てはめて生成する。だけど、スキルってのはそういう工程を全部吹っ飛ばす」


「つまり、スキルは魔法と同じ、ということなのか?」


 バクは頷き話を続けた。

「王都ではどう言われてるのか分からんが、俺の師匠の師匠が言っていたらしい」


「随分と遠い人からの教えだな」とオースティンが笑みを浮かべた。


「だけど、結果俺はポップコーンを生成するだけのスキルだったのが、こうやって」

 ボオッ!

「炎も纏えるようになった。ちなみに適性は水属性な」


「ええええ! 凄すぎる!」

 目が飛び出そうなくらいの驚きを見せるオースティンに「スキルを知ることが大事なんだ」と真剣な面持ちで呟く。


 オースティンは何度も頷いたのちに「じゃあ、俺のスキルは何ができるんだ!?」と尋ねる。

 バクは「知らねーよ」と一蹴した。


「どんなスキルなのかは当人が知っていくしかない。だから、俺から教えられるのはスキルを暴発させない方法だけだ」

「それはどうやったらできるんだ」


「いいか? スキルってのは持ち主の感情やもっというと心音に起因してる」

「心音?」


 これはバクが自ら見つけたスキルの法則だった。

 スキルが魔法の自動化だとしてどんな時に使用できるのか、それを探る実験を自らの体でおこなって来たのだ。


 その結果として身の危険を感じた時にスキルの発動難易度が下がり、なんなら少し暴発すらしてしまう。

 使いこなすコツさえ掴めれば制御も放出も簡単なのだが、まずは制御する感覚を覚えるのがオースティンには先決だと判断していた。


 だが、これからだというタイミングでエルが口を挟む。

「バク、教えてるところ悪いんだけど。明日はもう測定日だから」


 そう言われて空が暗くなり始めていることに気が付いたバク。

「あ、しまった。今日中に王都に入らないと」


 慌てるバクの姿を見たオースティンが口を開く。

「俺は王都に入ることが出来ないが案内なら出来る。少しでも恩返しをさせてくれ」


 そう告げたオースティンに甘えるような形で三人は歩き始めていた。

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