第九転調『それぞれの道、違えど道は繋がり合う』
「私の名は、ピック……ピック・ラ・ナチュ」
ピックは、強くなればいいと言った。
今まで、強くなろうとは思わなかったな……。
でも、どうすればいいんだ?
ピックは丸太を持って来て、説明を始めた。
「見ての通り、これはただの丸太だな? この丸太をピッタリ九十度、縦に切ってもらう」
丸太を切るだけで強くなれるのか?
すると、ピックはお手本を見せると言い出し、その場で丸太を用意した。
「ライズの人間は、戦えるほどの創力を持たない」
創力を使わなかったんじゃなくて、使うほどの創力がなかっただけなのか?
「だから、ライズの人間は自然で生きて来た」
だから、強靭的なパワーがあるのか。
「パワーばかり頼ってしまっているお前ェらにはなぁ!! 頭を使えって言っとんだろうがよぉ!」
多分だけど、言っていることは正しいんだけど、
問題なのは、かなりスパルタ指導であること。
それでも、ライズの人たちはその指導を受けようとした。
それだけの実力があるのだろう。
そして、次は僕にもトレーニングしてくれるそうだ。
「お前、力を使いこなせてないな? だから勝てないんだよ」
力を使いこなせていない?
どういうことだ?
「お前からは覇気がタダ漏れてるんだよ。コントロールできてない奴ほど漏れる」
ピックが言うには、この覇気の元をコントロールできれば、覇気が溢れることはないそうだ。
「まずは原因から見つけるために丸太を背負って走れ。とにかく走れ」
結局は肉体的スパルタだった。
すると、ピックは足を止めた。
「お前は……ノイズの人間は音楽から一旦離れろ。自分を見つけろ」
音楽を離れるなんて、ヴェルには辛いことだ。
ましてや、ノイズの誇りを一時的にとはいえ……ノイズ?
「あなたにはわからないだろうね。この辛さが、今までにないほどに自信を砕かれることを」
ヴェルは自信を失っていた。
……そうか。
自信を失っているヴェルには、自分を見つけ直す機会を与えているのか?
「ヴェル、無理はしないでほしい。でもね、自分と向き合うことも大切じゃないかな?」
すると、ヴェルは立ち上がった。
「バリスが、そう言うならそうなのかもね。少しだけでもやってみるとするよ」
……ヴェル!!
「さて、お前ら、トレーニングは明日からやるからなぁ? しっかり休んどけよ?」
明日からトレーニングなのか。
今は原因なんてわからないけど、理解できれば強くなれるんだ。
やる以外の選択肢はない!
「あ、そうそう。お前、ノイズのお前、ちょっと裏来い」
え、ヴェルを裏に?
……大丈夫かな?
――そして、裏に連れて来られたヴェル自身も、何故連れて来られたのかわかっていなかった。
「ヴェルトン、覚えてる? あの日、あなたが救った人を覚えてる?」
ヴェルトンの脳裏に、懐かしい記憶が浮かんだ。
ーー8年前のことだ。
当時、十もいかない子供だった。
親を失い、彷徨っていた私は、気がつけば見知らぬ地にいた。
そこで倒れている少女を見つけたが、それどころじゃなかった。
私自身も彷徨っていたのだ。
自分の家族を失い、自信を失って彷徨う。
まるで亡霊のようだった。
助けられるほどの余裕はなかった……。
しかし、その少女の前に猪のようなモンスターが現れた。
その少女が危ない状況だと認識した時、すでに私の足は次の一歩を踏み出していた。
「追いかけて来ているよ!! 怖い怖い!!」
そのモンスターたちは猛スピードで追いかけて来ていた。
「うわっぁ!」
少女を抱えたまま逃げていた私は、木の根っこに足が引っかかってしまい、転んでしまった。
幸いなことに、倒れたことによって、モンスターの視界からは突然消えたように見えたそうだ。
あのモンスターは嗅覚が鈍いタイプだった。
「怖かった……あっ、キミ、大丈夫??」
少女を抱えて転んでしまったが、どうやら怪我はしていないようだった。
「あれ、ここは……って、わぁあ?! あなた誰?!」
当たり前だが、お互い初対面だ。
「変なことしてないよね!?」
私はまだ九歳だ。
そんなことするわけないだろう。
「してなさそうね……ところで、此処は何処かしら?」
この子も同じく迷っているみたいだった。
「私も迷ってしまっていて……とにかく、人がいる村や街があれば、そこに行ってみよう」
その少女は笑顔で返事した。
「うん!!」
かなり森の奥の方まで来てしまったが、その先に明かりが見えている。
「この先に人がいればいいんだけど……」
ようやく、辿り着いた!!
村に辿り着いた!
「やっと、着いた……」
お腹が空いてしまった。
「私たち、助かるのかな?……え?」
辿り着いて気が抜けたのか、私は空腹で倒れてしまった。
「――っと!!」
――何処か懐かしいような記憶を見つけた。
「どう? 思い出した? って、完全には思い出せないよね」
あれ?
この子、こんな口調だっけ?
さっきまでかなり荒い口調だったのに……。
「君は、私を知っているのかい?」
少女は何処か遠くを見つめながら言った。
「何処かで会ったことがあるような気がしただけ。もしかしたら知らない人かもしれないのにね……バカみたいね、私」
「とにかく、明日からはトレーニング! するからね! 頑張って着いて来てね!」
やっぱり思い出せない……。
……私も知っている気がするのに。
「わかったよ。君がそこまで言うのだからね、やらせてもらう!!」
――次の日。
トレーニング初日は、ハードな一日目だった。
体力面の向上として山の斜面を走った。
「野生過ぎる……あれで創力使ってないの?」
「そうみたいだね。一度も使っていないのは確かだ」
自然で生きて来た人たちは強いのは確かだった。
ヴェルと一緒に、僕にトレーニングをしていた。
ヴェルのトレーニング内容は、自分を知ること。
僕のトレーニング内容は、漏れてしまっている覇気の元を見つけてコントロールすること。
「ヴェル、無理はしてないよね?」
ヴェルは指を交差して組みながら、言った。
「無理はしてないよ?」
なら、良かった......
「バリスは原因に近づけたの?」
僕自身も、分かっていないことだらけだ。
「まだ、わからないんだよね」
自分に何が起きているのかもわからないのに、原因を見つけるなんて難しい。
どうすればいいんだ!!
すると、ヴェルは創力について話し出した。
「バリスは知っているかな? 創力はね、頭で想像することによって使えるんだよ」
それは誰もが知っている当たり前のことだ。
……当たり前?
「私はなんとなく気がついていたんだよ。バリス、キミの創力は私を助けたんだ」
「……え、いつ?」
ヴェルは膝から崩れ落ちた。
「無意識だったのか……。バリス、キミは私に創力を使ったことがあるんだよ」
僕の中では、僕の創力は、
『想像したものを出せる』
だけだと思っていたけど、
……僕が創力を無意識に使っていた?
第九転調をここまで読んでくださってありがとうございます!!
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では、次の転調で会いましょう!!!




