第八転調『間③』
「カイザー……。さっき壊れたガラクタがその名を呼んでいたな……覇道帝?? だったよなァ?」
カイザーは面倒そうに頭を掻いた。
「お前が帝王だな? ウチのお気に入りにも手を出そうとしたんだってな?」
とてつもない威圧がぶつかり合っている
「あの小僧か? 今頃、悲鳴を上げて逃亡しているだろうよぉ??」
すると、今にも気絶しそうなヴェルは宣言した。
「バリスは逃げないよ……あの人は必ずやってくれる!!」
ヴェルの瞳に、嘘の言葉はなかった。
「ハッタリではないか? 所詮、不可能だろうな! この我から逃げるなど!!」
カイザーは言い切った。
「逃げるんじゃない、倒すんだよ」
カイザーは、その場で止まっていたように見えた。
しかし、帝王は足を切られていたのだ。本人が気づかない速度で。
「ッガ!? キサマかぁ?! 我の足を切り落としたのは!!」
その問いに、カイザーは動じなかった。
「答えろォ!!!」
帝王は深刻なダメージを負っている。
カイザーはまだ無傷。
まさに、圧倒的な強さだった。
だが、不吉な予感は続いていた。
ヴェルは感じ取っていた。
「まだ何がある……」
すると、帝王の体が膨らみ始めた。
カイザーは油断した。
「こうなれば、自爆だぁ!! カイザーは消さずとも、この大陸ごと消せば世界は混乱に陥るだろう!!」
流石のカイザーに打つ手はなかった。
切ったら爆破。切らなくとも爆破だ。
まさに、最後の自爆だった。
「キサマは後悔するが良い!! 自分は助かっても大陸は滅びるのだからなぁ!!!?」
その時だった!!!
突如として、蒼き炎が帝王を燃やし始めた。
「な、何だぁ?! コレはぁ?!」
自爆寸前まで膨らんでいた帝王は、膨らむ前の姿まで戻ってしまった。
カイザーは驚いた。
《蒼き炎は時を戻す》
遥か昔、帝王を封印した男は、蒼き炎を使い大陸の危機を救ったという逸話が記された記録がある。
その蒼き炎は、時間の流れを逆にする。
この炎は、まさにそのものだ。
帝王は再び、同じ炎に阻止されてしまった。
「まさか、生きていたのか? いや、奴が生きているはずはない!!……なら何故?!」
帝王は気づいてしまった。
怒らせてはいけない力を目覚めさせてしまったのだ。
やがて、蒼き炎は傷だらけの帝王を焼き尽くした。
帝王にトドメを刺したのは、あの時と同じ蒼き炎だった。
カイザーはすぐさま、飛ばされたヴェルの元へと駆けつけた。
「少年? 生きているか? これを飲めば大丈夫だ!!……気絶しているのか??」
――ヴェルが目を覚ますと、寝室にいた。
自分の横で、ぐっすり寝ている人がいる。
ありがとう、バリス……。キミのおかげで無事に帰って来られたよ。
「目覚めたか? 少年!」
カイザーが花束を持って部屋に入ってきた。
「あっ、ありがとうございます……。ところで、あの後どうなってしまったんでしょうか?」
カイザーは少し険しい顔で答えた。
「何故か帝王は蒼き炎によって焼け尽きてしまったんだが、どうにも蒼き炎は突如として発火したんだ」
話についていけないヴェルだったが、一安心した。
「帝王は倒されたんですね……。なら良かったです」
カイザーはヴェルの背中を叩いて褒めた。
「仲間のために命を張れる奴は、支え合える仲間になるんだ」
カイザーは嬉しそうだった。
「バリスに仲間ができたんだな……。バリス、良い仲間も持ったんだな!!! 大事にしろよ!!」
ヴェルは、回復傾向にあると診断されたため、じきに退院できるとのことだった。
「バリス! 是非俺の騎士団に!!!」
相変わらず、うるさいのは変わらないが
「嫌だよ!! っていうか、何でいるんだ!?」
この男の本質も変わらない
「助けを求める声がしたからだな!」
ありがとう、ヴェルを助けてくれて、
「危機探知機かよ!?」
漫才を見るかのように、ヴェルは笑っている。
本当に良かった……!!!
この幸せと思える間が、ずっと続けばいいのに……。
その頃……ある地下の施設では……。
「幸せは夢のように覚めるモノだよ……バリス君、あなたは私を……!!!」
僕たちはノイズ大陸から、次の大陸へと進もうとしていた。
「ノイズ大陸とは一旦お別れだね」
僕らは思い出を振り返りながら前を向いた
「故郷から離れたことなかったから、新しい感覚や雰囲気を知れると思うと楽しみだよ!」
「そうだね。次の目的地は、不仲だったから行きたくなかったけど、ライズ大陸に行くか……」
胸を躍らせながら進む
「ライズか! 自然が豊かなんだろうね!!」
そんな期待を抱いて、ライズ大陸へと向かった。
ーーいざ、その地に降り立ったのだが、
期待したのは、自然豊かな大陸だった。
しかし、その大陸の自然は崩壊しかけていた。
一難去ってまた一難と言うのは、こういうことか……。
この大陸に何があったのか?
すると、野蛮な人たちが集まってきた。
「オイ! どこの大陸から来た輩だァ??? ァァン???」
ダメだ、もうプレッシャーが……。
「アンタ達ィ!! よそ者を可愛がるのは程々にしなさいよ!!!」
大柄の女も来た。
「族長! ワリィ! この騒動の中、珍しくて可愛がっちまったぜ……」
え? 今の、可愛がってくれてたのか?
明らかに脅しに来てる感じだったよね???
「ワリィ事したなァ……ァァン?」
威圧が消えてないよ……。
「威圧がかかっているので、もう少し離れてもらえますか? あんまり私の友を怖がらせないでほしいんですけど?」
ヴェルは僕を庇ってくれた。
「お前ェ……気に入った!!! この旅客を歓迎してやっちまえェ!!!」
もう全面戦争してるみたいな言い方だよ……。
もう怖いです。
この争いの真ん中に座らせられているこの状況が、拷問みたいです。
何故、こんな拷問だと思うことになったのか。
それは、たった三日前のことだった。
ーー僕たちはライズ大陸へと辿り着いた。
そして、ライズ大陸に上陸して、即騒動になりかけた。
しかし、ヴェルの威圧を族長は気に入ったためか、歓迎してくれると言い出した。
その通り、この大陸でしか味わえない料理まで振る舞ってくれたのだが、
そこまでは良かった。そこまでは良かったはずだった。
ある問題が発生するまでは……。
「酒だ、酒を持って来い!」
(お酒好きが全体的に多いのかな?)
すると、酔っ払った大柄の男は族長に話をし出した。
「族長〜! 俺の息子とぉ! 族長の娘ェ! もうそろそろ〜、合わせてもらってもぉ〜!」
かなり酔っているようだった。
しかし、族長はかなり否定的で、
「お前ェの息子に娘を合わせる顔なんて無いんだよ!!」
族長が嫌がるのも当然だろう。
親が決めた相手と交際する流れで会うなんて、嫌に決まっている。
しかし、族長に対し、その男は執拗に言い続けた。
それに耐えきれなくなった僕は、
「あの、族長、困っているでしょ! やめてあげてほしいです!」
と言ってやった。
こんなにも出迎えてくれた族長に、恩返しのつもりで言った。
すると、族長の表情は更に悪化していた。
「おい、バリスよ。この大陸の人間ではない貴様が首を突っ込むな!!」
あれ? お怒りにさせてしまった??
すると、ヴェルは察したのか、弁明をしてくれた。
すると、族長はかなりお怒りの様子で、僕らを睨みつけた。
すると、先ほど族長に話をしていた大柄の男が声をかけてきた。
「ごめんな、族長と話していたことは族長の娘さんのための話だ。なのによぉ? 族長は何故かそれを受け入れてくれないんだよな」
僕も余計なことに首を突っ込んだので、言えたことではないが、絶対執拗に言い続けたからでしょ。
「でもよ、別の大陸の人間が来たの久しぶりだろ? そこまで言わなくていいんじゃねぇか?」
若い男が族長に言った。
族長の発言もヒートアップする。
「若造、もう発言は考えてから命を捨てる覚悟を持って言えよ? つまり、お前は言える立場ではない」
次は、かなりマッスルな老人まで声を上げた。
「幾ら族長じゃろうて、娘には自由を与えてやれんのか? 責任を負い過ぎじゃ」
話についていけなかった。
予想いたのは、族長の娘に男は息子を合わせようとしていた。
それは娘が嫌がるから断っているのだろうと、思っていた。
しかし、男を止めると逆に怒り出す。
発言は命を捨てる覚悟を持って発言しろと言うのは、どういうことだ?
先ほどの老人から言われたことが引っかかったのか、更に騒動はデッドヒートした。
そして、今である。
怒らせてしまった原因は僕らしい。
そして、この場が戦場になっていた。
殴り合いなどに発展したが、創力らしき力は使っていないことに気がついた。
創力なしでも、大木を拳で一本丸々貫通するほどの力を発揮している。
獣の争いのようだった。
すると、何かがこっちに向かってきていた。
「大鍋?」
避ける暇もなく、額に直撃した。
その場で倒れ込んだ。
目を覚ました時には朝だった。
騒動の跡はあれど、みんな帰ったのか?
「バリス! 大丈夫か??」
ヴェルの呼び声がした。
ヴェルの前に、誰かがいた。
「あんた達! 下がれェ!!! ここは、ワシが受け止めてやる!!!」
族長の声がした。
何が起きているのかわからない。
だけど、
「ヴェル! 下がるぞ!!」
……ヴェル??
「族長さん! あなた一人でもこの量は相手できないでしょ!! 私も戦います!」
ヴェルは戦う気か?
確かに族長は強い人だったのはわかるが、
今この時点で視界に映るモンスターの数は、ざっと1000は超えている。
流石の族長でも厳しいだろう。
最悪の場合……最悪の場合?
「おい、ヴェルトン!! お前がいると気が散るんだよ……邪魔だ。下がれ」
族長がヴェルに告げる。
まさかだとは思うが……一人だけでやる気なのか?!
しかし、ヴェル自身、このまま下がるわけにはいかなかった。
「このまま引き下がってしまったら、族長さんはどうなるんですか!! 自分の身も考えてください!」
すると、族長の雰囲気が変わった。
「お前達には生きてもらうからなァ!! ワシの分も倍にして生きろよ?」
族長はヴェルを後方の方角へと突き飛ばした。
僕たちは振り向かなかった。
気絶したヴェルを抱えながら、ひたすらに別れを告げた。
悲しみに包まれた、別れの足音がした。
――数日後、僕たちは安全な場所へと身を移した。
族長は帰ってはこなかった。
あの日、僕たちを襲ったのは、この大陸に住まうモンスターの大群だった。
この大陸は今、危機に陥っている。
ノイズ大陸もそうだった。
この中で最も前線にいたヴェルは、族長が命を張って逃がしてくれた。
それをヴェルがどう受け取るのか、僕にも理解しきれないことだろう。
ヴェルに残ったのは、後悔と虚しさのみだった。
僕自身も族長を救えなかった。
誰も止められなかったんだ。あの脅威を止められなかった。
族長を失った喪失感は、酷く胸を刺した。
そんな時、誰かが助けに来てくれるんだ?
一体、誰が立ち上がるんだ?
僕には無理だ……。
その暗闇に飲まれそうな時だった。
「オイ、ヘタレ共、そこで這いつくばっている暇あったら強くなれ」
何処かで聞いたような喋り方だ。
「お前ェ、前線でカァ……族長と一緒に戦おうとした馬鹿だろ」
ヴェルに話しかけた。というか、吹っ掛けたこの少女は誰なんだ?
それでも、ヴェルは口を開かない。
そんな様子を見て呆れたのか、その少女は立ち去って行こうとした。
その去り際に、その少女は告げた。
「私の名は、ピック……ピック・ラ・ナチュ」
その少女は、どこか族長に似ていた。
第八転調をここまで読んでくださってありがとうございます!!
「何が起きているんだ?!」
「この謎が気になる!」
「続きが気になる!」
と思って頂けたらブックマーク!!
もしよろしければ、評価ボタンお願いします!!
正直な感想もお待ちしております!
つまらないと感じたら⭐︎1つ
続きが読みたいと思って頂けたら⭐︎5つ
参考になりますので!是非お願いします!
Xでも《Innovate》として活動しております!
この謎が解けるかもしれないと思った方は是非Xで
【 #反転世界の考察 】でポストしてくださったら嬉しく思います!
では、次の転調で会いましょう!!!




