第七転調『間②』
僕は、ヴェルトンに案内をしてもらう代わりに、旅に同行するという交渉を交わした。
そして、ヴェルトンに案内してもらっている最中だ。
「バリスくん、凄いね。元々の生活から全く異なる生活に変わってしまったのに、すぐに慣れてしまうんだね!」
「全然凄くはないよ!! 慣れているというより、知っているような不思議な感覚だ」
話が噛み合うって、嬉しいものだ。
「よし! バリスくん! ここが聖堂だよ!」
「ここは、神聖な音色を奏でて聖龍の加護に感謝を伝えるところだよ!」
「神聖な音色……どんな音なんだろう??」
すると、
「そうだね……バリスくんは聴いたことないなら、聴かせてあげる!!」
お! 聴けるのかな? 生で!!
「......!!」
何か創力を使ったようだったけど、小声だったから聞こえなかった……。
その時、目の前に光り輝くピアノが生み出された。
「これは君の創力なの??」
ヴェルトンは頷いて、演奏を始めた。
「これが……神聖な音色!! 光の溶け込むように、闇に光を差し……希望を与えるような音の連なり……とても、美しい!!」
この時、僕は芸術の感性を知った。
更に、ヴェルトンを囲うように雲の間から光が差した。
これが彼の創力なのか?!
「あぁ、この音を奏でると心が洗われるよぉ〜」
演奏を終えたヴェルトンは、清々しい表情だった。
「感動したよ、音楽はここまで人を魅了するんだね!!」
ヴェルトンは嬉しそうに、
「うん! わかってくれた!!? 音楽は感情だと私は思っているんだ!! 音は生きているから、心で奏でるんだよ」
気持ちが高まったヴェルトンは、音楽理論を教えてくれた。
とても興味深いものだった。
その後、ノイズ美術館や、とても大きな演奏広場にも案内してくれた。
こんな良い大陸が忘れられていたことに驚きだ。
ところで、ヴェルトンは普段どんな生活をしているんだろう?
「ねぇ、ヴェル!」
「なんだい?」
「普段ヴェルはどんな生活をしているんだ?」
「ルーティーン的なことを聞いているのかな?」
「ルーティーン? まぁ、そんなところかな?」
僕はルーティーンなんて言葉、使ったことないけどね……。
「朝起きたら、まず顔を洗って支度して朝食を食べる! 何事も始まりの音が大事だからね!」
始まりの音……つまり、初めの一歩が肝心ってことかな?
「朝は演奏するために体をほぐしているんだ! これをしてないと、出したい音も上手く出ないんだよね……」
準備運動みたいなことかな?
「そして、ある程度ほぐしたら、演奏練習しているよ! 毎日やっていて、怠るのは音楽家としての矜持が許さないから絶対にしない」
凄いな……毎日練習しているのか! 見習わないとな!!
「朝はそんな感じかな? 昼も音楽とか鑑賞したり、演奏したりして過ごしているよ」
なるほど……。
「本当に音楽が好きなんだね! その気持ちが伝わってきたよ! さっきの演奏でも伝わってきた感情は、それなんだね!」
すると、ヴェルトンは微笑んで、
「ありがとう、バリス」
と言ってくれた。
そして、ヴェルトンは真剣な表情で話をし出した。
「あのね、バリス。私は親がいないんだ」
僕は、その話を真剣に聞いた。
「親は私が幼い頃に、とある奴に消されたんだ」
消された??
「そいつは、この世界の神を名乗っていたそうだ」
神って、この世界を邪竜から守っていた守護神だったはず??
「気がついたか? 元々、神は人間を邪竜から守る存在だったはずなんだ」
それどころか、邪竜の話はここ最近聞いてない。
むしろ、聖龍の話をカイザーが言っていた。
そして、この大陸の聖堂は聖龍の加護に感謝を伝えるためにあると、ヴェルトンは説明していた。
「邪竜は聖龍だったんじゃないかと、私は考えているんだ」
邪竜は聖龍だった??
じゃあ、何故神はヴェルトンの親を消したんだ?
「この世界では、聖龍は神から生物を守る存在とされているんだ」
神は僕たちの敵になったのか??
「もし邪竜が聖龍なら? 神はなんで私の親を襲ったのか? それでも謎は多いんだ」
まとめると、元々邪竜から世界を守っていたはずの神を名乗る者は、ヴェルトンの親を消した。
そして、敵だったはずの邪竜は、聖龍の可能性があった。
つまりだ。
神の認識が変わっているのか?
それとも、邪竜の本当の正体はなんなんだ??
「そう簡単にはわからない。でも、私は親を消した神を名乗る奴を見つけて、仇を討つ。
君となら、世界の真実を見つけられると思うんだ!」
そうだ、この世界で元々の記憶があるのは僕らだけだ。
それに、あの眠り姫も何か関係があるのかもしれない。
「ヴェルの旅の目的はわかった。僕は眠り姫を探しているんだ」
「眠り姫か。噂はこっちの大陸まで流れてきているよ」
「何か知っているか?」
「それが、最近眠り姫の噂は聞いていないんだ」
そうか……でも、
「お互い、世界の真実を知りたいのは確かだな」
二人の旅の目的が決まった。
ヴェルトンの目的は、《神を名乗る者を見つけ、親の仇を討つ》ことだ。
僕の目的は、《僕は自分が知らないこの世界の謎を知りたい。そのためにまず、眠り姫を見つける》ことだ。
一方、その頃……。
「あぁ〜あ、もう壊れちゃったの? ガラクタばっかりだな〜」
「貴様ァ!! 我らの誇りを破壊した挙句、ガラクタだとッ??」
「そんなに怒るなよ〜! 人生最期のフィナーレだぜ? 楽しんで逝けよ?」
大陸全体に雑音が響いた。
「……!! この音は?!」
「なんだ? とても不吉な割れた音だった……」
「これはかなり深刻な問題が発生したみたいだ……」
ヴェルの表情は、どこか不安を訴えていた。
「心当たりがあるんだな? 事情はわからないけど、僕にも分かる……」
これは嫌な予感がするんだ……。
「もし僕たちにできることがあるのなら、できることをしよう!」
すると、ヴェルは悟ったように言った。
「無理だ……あれは遥か昔、この大陸を壊滅寸前まで追い込んだ、この国の帝王だ……」
自国の帝王?……
しかし、今考えている暇はない。
「ヴェル、君は音楽に限界を悟ったことはあるか?」
「……ない、な」
「そうだろ? 俺は限界はないと思ってる」
「何故君が偉そうに言えるんだ!!! 音楽は君が思っているより深いんだ!!!」
僕はヴェルを信じて言い返す
「ヴェルは本当に音楽が好きなんだね。僕は初めて君に音楽というモノを教えてもらったあの時、芸術に無限の可能性を感じたんだ」
ヴェルは、困っていた僕に声を掛けてくれた。
これから起きる難題を乗り越えていこうと誓った友達だから、こんな程度の問題で挫ける人じゃないと教えてくれた!!
だから、
「ヴェル、君の音楽はここで終止符を打つのかい?」
すると、ヴェルは顔色を変え始めた。
「……アハッ!! あぁ、そうだ! まだディベロップメントになっていないよ!!」
ヴェルは覚悟を取り戻したようだった。
やっぱり、彼は真の音楽好きだ。
「ヴェル! 僕はまだ自分の創力の使い方を一つぐらいしか知らないんだ!」
街中を駆け抜けながら、作戦を話した。
「本当にどの口で言ってるのかが一番の謎だよ!……マニュアルは授かってるでしょ? それを見たら」
普通はそうなんだよね……。
「マニュアル貰ってないんだよね。だけど! 僕は被害を最小限には抑えようと思う! 避難は任せて!」
ヴェルは勿論と言わんばかりに
「そりゃ、頼りになるな! じゃあ私はこの国の騎士団が到着するまで、時間を稼ぐよ!」
ヴェルになら、託せる気がした。
「一番危ないことかもしれないけど、今この場でヴェルしかできないことだろうから、頼む!!」
轟音が鳴る方へと向かってきたが、どうやら辿り着いたみたいだ。
「あ〜れぇ? 音の出ない楽器は要らないんだけど? このガラクタ、もう音出ないから、次はキミね?」
そこには、原型を留めていない楽器だったモノがあった。
「やはり、お前か……帝王!!!」
「おぉ? 有名人になったのかぁ! 名が馳せたんだなぁ??」
明らかに人を辞めているのがわかるほど、禍々しいオーラがある。
これが覇気なのか?
「音楽を侮辱し、音楽を生み出す楽器まで破壊することをして、何が目的だ!!」
ヴェルは問いかける。
「目的? キミ達には理解できないかもだねぇ?」
ヴェルの心から悲しみと怒りの感情が滲み出ていた。
「理解などしたくはない!! バリス!! 避難は任せた!!」
無事であってくれ!!
「あぁ!! 任せ――」
一瞬のことだった。
「行かせぇよなぁ? 当たり前だろぉぉ??」
帝王はさっきまで、離れたどこかにある店の前にいたはず……。
距離も取っていた。
なのに、目の前に現れた。
「速すぎるって……」
帝王は音が無い拳を繰り出した。
「ほぉ?? 流石に驚いたわぁ! まさか俺の拳を止める奴がいるとは!!」
ヴェルだ。
ここまでの実力者だったのか!!
「バリス!!! 帝王は僕が倒す!!! だから、君は多くの人を助けてあげてくれ!! 頼む!!」
あぁ! バリスならできるさ!! 帝王にトドメを刺すのはキミだ!!!
「小僧、さては余裕ないだろぉ?? 友の為に死ぬ覚悟があるのかぁ!! つまらんのぉ!!」
「バリスは遠くに行ったことだし……」
「死ぬ覚悟などない!! 生きる覚悟ならある!!」
「大口を叩くことができるのは勝者の特権だ!!」
そして、ヴェルを捉えた帝王が、無音の拳を無数に繰り出した。
無音の拳に、空気に抵抗する音がした。
……『想奏』
ヴェルは自身の創力を発動した!!
「音を置き去りする我の拳に音がしているのか?!」
「テンポを上げただけですよ。
でも、表現としては、ここの範囲のテンポが早まっているんですよ……あなた以外のね??」
「そんな程度で、この我を倒せるとでも?」
「遅すぎて何を言ってるのかわからないですよ!」
「では、失礼!! 《バイオニスト》!!!」
ヴェルの創力によって、蒼炎のようなバイオリンが生み出された。
「ほう? 優雅に演奏の時間などしてる余裕はないぞぉ!!」
そのバイオリンの弦に、弓毛が触れた……。
「ゥガッ?!」
帝王の身体中に切り傷が刻まれていく。
「私の創力、想奏は想像した楽器を生み出し、その楽器で奏でた感情が現実になる力だ」
「音の感情が現実に? ふざけた創力だか……その楽器ごと壊してくれる!!」
「何?!」
ヴェルは物凄い速さで殴り飛ばされた。
「あーあ、逆らってなかったら楽に逝けたのにねぇ!」
幾つもの建物を貫くほど飛ばされたヴェルは、瀕死ながらも息をしている。
「何故だ? あの渾身の一撃だったはずだっだ……無事だと??」
ヴェルも、何故生きているのか理解できなかった。
「まぁ、いいかぁ! もう一発入れれば流石にご臨終だなぁ!!?」
次の一撃の構えをした帝王の拳は、切断されていた。
「何が起きた??!」
帝王の前に現れたのは……
「龍聖騎士団、団長!! カイザー登場だぜ!!」
カイザーだった。
第七転調をここまで読んでくださってありがとうございます!!
「何が起きているんだ?!」
「この謎が気になる!」
「続きが気になる!」
と思って頂けたらブックマーク!!
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参考になりますので!是非お願いします!
Xでも《Innovate》として活動しております!
この謎が解けるかもしれないと思った方は是非Xで
【 #反転世界の考察 】でポストしてくださったら嬉しく思います!
では、次の転調で会いましょう!!!




