第六転調『間①』
龍聖騎士団というのは、怪物に加えて変人もいるのか。
「カイザーさんも大変だな……」
一日があっという間に過ぎていく。
色々変わってしまったけど、この一日の短さは等しく変わらないんだ。
今思えば、この変わってしまった世界に疑問を抱いているのは、僕以外、誰一人いない。
いや、違う。
訂正する。眠り姫は何か知っていそうだった。
結局、あの娘は何者だったのか。有耶無耶になってしまった……。
それに、今日も遅いし、もう寝ようかな。
――何処かから数を数える声がした。
何かのカウントダウンか?
10、9、8……どんどん声が遠のいていく。
3、2、1……
「も〜いいよ!!」
!!!!
「はっ……ゆ、夢か??」
陽の光が僕の瞳に差し込んだ。
あの、刻まれるたびに遠くに行ってしまった声は、最後の一言だけ、一番近くで聞こえた。
窓の外から、庭に生えている木がこちらを見守るようにそこに留まっている。
そこに止まる渡り鳥を見て、少し疑問が湧いた。
「あれ?? 渡り鳥って、この時期にもう一つの大陸へ飛んでいくはずだったはず……」
いや、待てよ?
今の大陸は4つもある。
大陸が増えたことで、環境も変わっているのか?
「それにしても、大陸を跨げる渡り鳥が羨ましいよ……」
すると、
「あら? バリス、別の大陸に興味があったのね?」
「母さん?! 部屋に勝手に入って来ないでよ!」
「バリスったら! 照れちゃって!」
照れてるつもりはないけど……。
「大陸を跨いで旅しましょ!! って言いたかったけどね......母さん、大事な用事があるから一緒に旅行はできないのが残念だわ!」
「ちょ、ちょ! 待ってよ?! 話を勝手に進めないで! って……大陸、そんな簡単に跨いでいいの?」
「え? 気軽に跨いでいいのよ?」
「いや、だって! 不仲だった大陸同士、気軽に跨いじゃダメじゃない?」
「最近のバリスは冗談が上手くなったわね!」
母さんは話を続けた。
「大陸同士、友好的で有名な大陸関係だからこそ、気軽に行き来できちゃうの!」
大陸関係が良好なのか?
あの頃の気まずさは一体どこへ……。
この際、行けるなら行っておきたいな……。
「荷物まとめたわよ!」
「速っ!!?」
母さんは寂しそうな表情で、
「いってらっしゃい」
と言ってくれた。
「いってきます」
どうやら、元々知っていた大陸二つの名称は変わっていなかった。
今、自分たちが住んでいるのはメイズ大陸。
不仲だったもう一つの大陸、ライズ大陸。
それに加えて、新たな大陸の名称は、ノイズ大陸とデイズ大陸だ。
それぞれの大陸には特徴がある。
メイズは、創力を使用して生活する人が多い。
ライズは、創力には頼らずとも生き残れるように鍛えられた人が多い。
ノイズ大陸は、音楽などの芸術文化が盛んだそうだ。
デイズ大陸は、とある一日だけ聖龍が降り立つと信じている人が多い。
個性的な大陸が多いのは事前に聞いたけど……。
まず、どの大陸に行けばいいんだろう?
元々あったライズに行くべきか?
いや、まだ関係が治ったとは限らない……。
「そうだ! ノイズ大陸にしよう!!」
ノイズ大陸は芸術的な人が多いって聞いたし、面白そう!
まだ知らないことを知れる機会だ!
ノイズ大陸へ行ってみるか……。
しかし、ここで致命的な問題が発覚する。
「遠いな、大陸真反対じゃん! これ五日はかかるぞ?」
どうしたものか……。
「歴史上で語られてる伝説の移動アイテムがあればいいのに……って、あれはおとぎ話だったから、流石に実際はないよね」
その時……。
「なんだ? あれ? 降って来てるのって......隕石か?! やばい! こっちに向かって来てる!?」
あっ、間に合わないや……。
「うっ……? って、あれ?」
僕の目の前で、その隕石は静止していた。
隕石が止まった?
隕石にしては違和感がある。
無数の文字が刻まれている。
「何の文字だ?」
恐る恐る確認しようとした。
「うわっ!?」
突然、光り出してしまった。
そして、その隕石はなんと、変形したのだ。
「これは……!!」
それは、おとぎ話で伝説とされていたモノの姿だった。
「黒星と呼ばれているモノなのか?」
しかし、本物かもわからない。
なぜなら、おとぎ話の中のモノだから。
実在はしていないはずなのだ。
そのおとぎ話では、創力をここ黒星に注いで出力すると言われていた。
「創力を注ぐイメージ……」
黒星に何かが貯まっていくのを感じた。
「もしかして……」
そして、次の瞬間。
別の大陸にいた。
見たことのない街! 見たことのない商品!
聴いたことのない音!
ここは……!!
「ノイズ大陸か!?」
すると、びっくりした様子でこっちを見ていた男の人が声をかけてきた。
「お兄さん、どこから現れたんだ? 急に現れたように見えたが??」
「あはは……僕にも理解できてないです」
なんじゃそりゃ、と呆れられてしまった。
確かに、ここはノイズ大陸だ。
楽器や絵画などの芸術文化を感じる街だ。
「この大陸、いつからあるんだ? 知らなかったんだが?」
「君! もしかして、メイズ大陸の人か?」
「あっ、そうですけど……どちら様ですか?」
「私の名は、ヴェルトン・ソ・ナチュ。ヴェルとでも呼んでください」
声をかけてくれたのは嬉しいが、不安だ。
色々変わったけど、性格は変わって居ない。
初対面で話しかけて来たヴェルトンに何を話せばいいかわからなくなってしまい、
「こ、こんな凄い大陸があったなんて知らなかったなぁ」
と、会話というより感想が出てしまった。
すると、ヴェルトンは驚いた表情をして尋ねてきた。
「君は、大陸が二つだったのは覚えているのか?」
息を呑んだ。
当たり前のことのはずだった。
でも、何か違和感を感じた。
他の人は、覚えていないどころか、今が当たり前だと思っている。
けど、僕と眠り姫は、どうやら覚えていたみたいだった。
そして、もう一人。
「君も何か覚えているのか?」
「覚えているさ……でも、君も覚えているのか??」
そうか、そうだったのか......
「あぁ、覚えている。あの日のことを……」
――バリスが絶望した日のことだった。
「あの日、僕はこの大陸にはいなかった。
そもそも忘れられていたんだ。僕たちの存在すら、大陸のことも。」
「しかし、突如として、この世界に忘れられていた僕たちは、再び存在することになったみたいなんだ」
何を言っているか、全くわからない。
だけど、何かが知っていると訴えているように感じた。
「ごめんね、そこはわからないけど……じゃあ、君たちはどこにいたの?」
「どこにもいなかった。って言った方が適切かな? そもそも、存在が消えていたようなモノだった」
その中でも、唯一記憶がハッキリしているのは、ヴェルトンただ一人だけだったという。
「他のみんなは、今の世界が当たり前だと思っている」
「それは僕も同じだ」
「君もそうなら安心したよ……私一人じゃなかったんだ」
確かにそうだ。
世界に一人だけ、突如として当たり前じゃなくなるのは怖い。
僕もそうだ。
今、少しホッとしているのは、安心できたからだ。
「しかし、困ったことに、この世界自体がおかしくなっているのは、もうわかっているよね?」
「あぁ」
この世界単位で異変が起きているのは確かだ。
「どうやら、強かった人が弱くなっているみたいだ。それに、弱かった人が逆に強くなってしまっているんだ」
「そうか、だから最弱だった僕が、あんなに騎士団長に勧誘されることになってしまっているのか……」
「しかし、どうやら僕は割と平均的だったからか、何も強さは変わっていないんだ」
下が上に上がって、
上が下に下がって、
真ん中は真ん中のまま。
何かヒントになりそうな情報だ。
「どういうことかわからないけど、明らかな異変なのは確かだ」
ヴェルトンは衝撃的な情報を言い出した。
「それに、私の創力が変わってしまっているんだ」
「元々私は厄災と言われるほど創力が厄介なモノだった。しかし、今の私の創力は真逆の効果があるんだ」
創力が変わったのか?
「それに、どうやら全員変わっていたみたいだけど、みんなして元の創力の効果ではなく、今の効果しか覚えていないんだ」
「謎に近づいた気がしたけど、また遠くなってしまったな……」
謎は増える一方だ。
解決策すら出ていないんだ、どうすればいいんだ......
「だから、どうだ? 私も旅に同行させてほしい」
ヴェルトンは何かを探している目だった。僕の旅に着いてくるのか?
「一人旅だったし……一人増えても問題ないけど……うーん?」
「そうか、代わりにこの大陸を案内する! それでどうだ?」
「それは有難い! 交渉成立だな!」
この大陸の存在すら知らなかった僕にとっても良い条件だった。
こうして、旅仲間としてヴェルトンが仲間になった!
――私の音は消えはしない。
悲しみの音、忘れられた音。
そして……交差する音階。
再び思い出す時が来るまで……。
あなたに託しますよ。
『想奏の指揮者』
第六転調をここまで読んでくださってありがとうございます!!
「何が起きているんだ?!」
「この謎が気になる!」
「続きが気になる!」
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この謎が解けるかもしれないと思った方は是非Xで
【 #反転世界の考察 】でポストしてくださったら嬉しく思います!
では、次の転調で会いましょう!!!




