第四転調「私を見つけて」
あの異変が起きた日から、母さんを一度も見ていない。
陽が暮れた街は、静かな夜の世界へと姿を変える。
こんなに探しても見つからないなら、もしかして、もう家に居たりするのか? と思った。
「でも、この目で見たんだよな……母さんが息を引き取る姿を」
それでも僅かな希望を抱いて、我が家だった場所に帰ってきた。
「相変わらず、豪邸だなぁ……こんなとこに住めるはずないんだけどな」
っていうか、これ入っていいの? 勝手に入っていいのか?
いやいや、ここは僕の家のはず……はず、だよね?
恐る恐るドアに手を伸ばしていると……
「あら、バリス。帰ってきたのね!」
聞いたことのある、最近のようで懐かしい声を身近に感じた。
「母さん……!!」
「母さん!……ただいま!!!」
「どうしたの? そんなにいつもより甘えちゃって~! 母さんが恋しくなっちゃった??」
「そんな冗談よしてよ! 母さんが亡くなってしまうんじゃないかって心配したんだよ!!」
「何を言っているのよ。母さんはあなたの勝手に側から居なくなったりしないわよ」
あの時、母さんは亡くなったと思っていたけど、生きていたんだ!
きっと、疲れていたんだと思う。
だけど、この家は我が家なのだろうか?
「母さん、この豪邸は?」
「あら、バリス? 忘れたの?? 我が家よ??」
「母さん本当に言っているの?」
「あら? 本当の事言ったのに? もしかして、バリス何かの病にかかってしまったのね、母さん、心配だわ!! バリスが病気にかかってしまったら一大事ですもの!!」
「病気……? 待てよ?? 母さん、病気はどうしたんだ? 今の体調は?」
「病気? そんなもの、生まれてこの方かかったことがないわよ? 健康に生きてますからね!」
僕の母さんは、過去に僕を魔物から守るために傷を負い、そこから重い病気になってしまった。
なのに、今は健康そのものだ。
元気なのはいいことなんだけど、異変が起きているのか?
母さんは母さんだ。親子だからか、確信を持って本物の母さんだと思える。
じゃあ、なんであんなにも重い病気を、こんな数日で何事もなかったかのように元気になっているんだ?
……!!!
「母さん、昔、僕を庇って魔物に傷を負わされたのは覚えてる?」
「何を言っているのかはわからないけど、そんな事は起こさせません! 色々動き回ったでしょ? きっと、疲れているのよ! 今日は休みなさい」
そうか。そうなのか。
どうやら今の母さんは、魔物に傷を負わされてすらいないみたいだ。
確かに僕の記憶では、僕も魔物に襲われた。
だけど、今の母さんの返答は、とぼけることもせず、素直に覚えていないというより、そんな事はなかった、といった発言に感じ取れた。
もしかしたら、街や僕以外も変わってしまっているのか?
本当に謎だ。
……疲れたな。
今日一日中ずっと頭を回していたから仕方ないな。
今日は寝よう。
――早朝。
「おーい! キミがここに住んでいると噂を聞いたんだけど!! 起きているか!!」
朝一から、熱血的な大声がベッドに響く。
耳に届くとかのレベルではない。三階の寝室のベッドをギシギシと揺らしているのだ。
起きないわけがない。
「近所迷惑なんで、本当に、静かに、さっさとお引き取りください。」
「おぉ! やっぱり居たか! 俺だ! 俺! 騎士団長やってる!!」
新手の詐欺師か?
「うるさいので、帰ってください。母が寝れないので、早く……いや、違うか?」
僕はこの手の人間には、優しくできない。
とても、めんどくさいからだ。
「さっさと失せやがれませ! 騎士団長様! (((マジレス)))」
これは、流石に効果あったでしょ??
「……おぉ! まさか、俺への愛情表現か?」
あ、ダメだ……この人、極度の脳筋だ。
愛と筋肉で、世界が構築されてるタイプの人間だ。
無理無理。会話が成立するわけがない。
諦めだ。この人に何をしても、帰ってくれなさそうだ。
早急に要件を済ませて帰ってもらおう。
母さんの睡眠時間を守るために……!!
「あの~、早く要件済ましたいので、手短にお願いしますね?」
「応!!」
うるさっ……歩く拡声器かよ。
「うる……少し声が響いておりますので、場所を変えましょうか」
「応!!!」
脳筋め!!
――話を手短に話せとは言ったが、早口すぎて何も聞き取れなかったので、五回ほど同じ話を聞き直した。
「つまり、要件は? 騎士団の勧誘ですか? 騒音の下で仕事はできませんので、お断りしますね!」
「あぁ、そうか? そこまで無理強いはしない」
あれ? 案外話は通じるのか?
無理矢理入団させられるかと思ってたから……少し安心だ。
「それはそうと、本来、規則で騎士ではない国民は魔物に手を出してはいけない決まりなんだけどな……」
訂正しよう。安心できない。
罰を下してくるのか? こんな理由で刑罰を受けるのか?
嘘だろ??
「聞いているのか?? そんな絶望的な表情しないでくれよ……別に刑罰なんてしないんだけど??」
「んぇ?? じゃあ、何を狙っているんですか?! 母さん? 母さんは、絶対に一本たりとも触れさせません!!」
「そんなことするわけないだろ!! 俺を何だと思っているんだ? あくまで言っておく事があったから、それを言おうとしたら、キミが突然絶望しだしたから困ったんだが??」
「すみませんでした」
「言いたかった事は、もし誰かが襲われていた場合や、襲われそうになったら、自分一人で突っ切るな。俺たち騎士団を頼れ」
「わかりました、ありがとうございます」
「あと、もし自分で誰かを助けたいと思った時は、いつでも俺に言ってくれよな⭐︎」
やっぱり、勧誘かよ。
「そう言えば、自己紹介がまだだったな」
「俺は龍聖騎士団団長のカイザー・ソ・フラットだ」
「僕はバリス・ド・フラット……よろしく」
「騎士団長とか肩書きは気にすんなよ? 気軽に助けを求めてくれよな!」
カイザーは、来た道と逆の方向へと行ってしまった。
「まさか、方向音痴なのか??」
とにかく目が覚めてしまったけど、ベッドはフカフカだったなぁ……。
木の床に皮一枚敷いて寝ていたのが、嘘みたいだ。
それより驚いた事があった。
この豪邸に住んでいるというのは本当だった……。
更に判明した事だが、王族……の家庭らしい。
元貧乏市民が、王族に成り上がる事なんてあるのか??
いいや、あり得ない。
本当に理解ができないことばかりだ。
そんな事を考えていた時だった。
(ねぇ、私は知っているよ? キミの謎の正体を私は知っているよ。だから、お願い私を見つけて)
「うっ……」
突然、頭に流れてきた少女の声。
どこか、切なそうで震えているような声だった。
本当に不可解な事ばかりだ……でも、その謎の正体を知っているのなら知りたい。
僕はその声の主を探し始めた。
って言っても、手掛かりが圧倒的に少ない。
とてもじゃないけど、見つけられるだけの情報が無さすぎる。
せめて、場所ぐらい教えてくれても良かったのに……。
困ったな……誰かに尋ねても情報が少なすぎて、話にならない……。
「おっと! そこのお兄さん!! ちょっと、見に来てくれよ!!」
「今そんな時間ないんで、すみません」
「そんな冷たい事言わないでくれよ~! きっと気に入る奴隷が見つかるからさァ?」
「奴隷商人ですか? ごめんなさいね、そんな腐った事には興味がないもので……」
奴隷制度なんて、悲しむ人を生むだけなのに……。
「そういや、新しく仕入れた娘で、眠り姫と呼ばれている寝たきりの美女を仕入れたんだぜ? 保証人が居ないから、他の奴隷商人と取り合いで苦労したわァ~」
眠り姫? 聞いた事ないな?
「眠り姫知らねぇんか? 珍しいなァ~」
「ずっと目を覚ますことが無いが、美しい美貌を持っているから、眠り姫と巷では噂になるほど有名な話題だぜ??」
「でも、僕には関係ないから……」
「眠り姫の噂なんだけどよぉ、ずっと眠っているはずなのに、襲おうとした男たちが不思議な声を聞いて逃げて行ったそうなんだよォ?」
「おかしいよな?」
寝ているのに声が聞こえるのか?
声が聞こえる……何処からともなく?
聞いた? いや、耳で聞いたのか?
「その声は、体感で聞いたのか? それとも、霊的なモノに近い感覚で聞いたのか?」
疑問を奴隷商人に問うと、
「ワイはその場には居なかったからなァ、そこまではわからんけど、その男達は幽霊とかほざいとったぞォ??」
「そうか、その眠り姫は何処にいるんだ?」
「お? お兄さん興味湧いて来た? よし、今回は初めてだろうし、サービスやァ!! 着いてきな」
「何処に行くんだ?」
「ワイの秘密の冷蔵庫やァ……ッ」
冷蔵庫?
「そこに行けば眠り姫を見れるんだな?」
「ご名答!」
その引くような笑い方は、狂気に満ちていた。
――辺りに建造物が無いところまで着いてきた。
「ここの下やァ!」
下と言って指を指しているのは、何も無いただの浅瀬の川だった。
「いや、何も無いけど……??」
その商売人は不気味に口角を上げて、
「まぁ、見ときィ??」
その商売人が三回拍手すると、川の底が開き、通路が現れた。
「これが、ワイの創力、隠蔽」
商売人は、この下に秘密の冷蔵庫があるんやァ、本来企業秘密ちゅうやつやァ、これがどう言うことかわかるなァ??
どうやら、気に入られてしまったみたいだ。
「着いたでェ」
「これが、秘密の冷蔵庫??」
デカすぎる。
昨日寝た豪邸の二十倍はあるぞ、コレ……。
「ビビったか? この中に眠り姫寝かせとるわァ」
「眠り姫以外は居るんですか?」
「いいやァ?? 眠り姫一人だけやァ」
この中に一人?
こんなにもデカい冷蔵庫の中に、少女が一人で眠っているのか?
「今回は特別やァ! 入ってみるかァ?」
「入れるなら入ってみるか……」
こうして、商売人がロックを外して、中へ入った。
そこには、氷のように眠っている女の子が居た。
(見つけてくれたのね。初めまして……私はスリープ・ソ・ディナスって言うの)
「やっぱり、キミか? 僕を呼び出したのは」
「おい? 誰と話してるんだァ??」
「この声が聞こえませんか??」
(聞こえる訳ないわ。だって、あなたの頭の中に話しかけているのだから……)
「見つけられたって事でいいんだね?」
(見つけてくれたね)
「じゃあ、あの謎の正体は何なんだよ! 教えてくれるんだろ?」
(教えて……あーげない!! 私を倒せたら、教えてあげる! でも、もう私をあなたは見つけられないと思うけど??)
一体どういう事なんだ??
第四転調をここまで読んでくださってありがとうございます!!
「何が起きているんだ?!」
「この謎が気になる!」
「続きが気になる!」
と思って頂けたらブックマーク!!
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正直な感想もお待ちしております!
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参考になりますので!是非お願いします!
Xでも《Innovate》として活動しております!
この謎が解けるかもしれないと思った方は是非Xで
【 #反転世界の考察 】でポストしてくださったら嬉しく思います!
では、次の転調で会いましょう!!!




