第二十一転調「聖龍の試練」
「バリスくん、逃げないでよ!
私はあなたを消さないといけないから」
眠り姫はどうやってここに入って来たんだ?
アーサーは確か、ここに入るには聖龍の力で生み出された空間と言っていた。
どうやって入って来たのかはわからないが、マズイ状況なのは変わらない。
アーサーも完全には回復していない上に、
僕はまだ秘伝の技とやらを教えてもらっていない。
ハッキリ言って勝ち目はない。
「アーサー、どうして黙り込んでいるの?
あっ、まさかバリスくんを庇おうなんて考えてないよね?」
その問いに対して、アーサーは僕の目を見た。
「スリープ、君には謝らないといけない、あの日キミに授けた力が利用される事になったのは私の責任だ」
その言葉には責任感と喪失感を感じた。
アーサーとスリープは過去に何かがあったのだろうか......
「アーサー、あなたがどうしようと手遅れなの、バリスを差し出してね」
このままいけば、眠り姫は確実に僕を消しに来るだろう、死への恐怖で僕は神経が麻痺しているのも、足が動かないと気がつくまでわからなかった。
この恐怖の原因は眠り姫だけではなかった。
わからない程の悍ましい影が眠り姫からこちらを見ているのだから。
「スリープ、背後に隠れているのは何者だ」
アーサーも気がついたみたいだ。
でもあれは触れてはいけない存在なのだと自分自身が訴えてくる。
「アーサーとバリス、あなた達は知らなくていい、どうせここで消えるのだから!」
眠り姫が動き出した。
ーー『現聖』《遂魔》
眠り姫が使う技、全てが喰らえば終わりだと言っていた。
確かに喰らえば終わりだ。
眠り姫が今発動したのが見えたが、この何もない空間に裂け目が開いてしまった。
その中から明らかに戦ってはいけないような化け物が封印されているのが見えた。
でも、僕はその場で固まる事しか出来なかった。
アーサーは僕を庇ってくれているのに僕は何一つ行動出来ていない、これまで強くなろうとしたあの日も、あの時も何の為だったのか、わからなくなってしまっていた。
「バリスよ、お主にはまだわからない事が山ほど在ると思うが、自分の歩んで来た道は忘れてはいけない」
アーサーは言った、これからの道は見えないと、
「バリスよ、お主が歩んで来た道は必ず自分を導いてくれる、誰でもないお主の道だ」
歩いて来た足跡が浮かび上がるように
僕の歩いて来た道はここにあったのを忘れていた。
「アーサー、ありがと.......」
すると突然眠り姫の猛攻が止まった。
それと同時に血の滲むような悲鳴が聞こえた。
「アーサー、うっ......辞めろッ、喋るなッ!!!」
何故か眠り姫が悶絶している。
「バリスよ、これが私が最後にお前に教える事がある。
秘伝の技であり、聖龍奥義。この奥義はその使い手によって名を変え、変化する技だ」
秘伝の技を教えてもらえるのは有難いが、今の状況で、教えてもらう時間があるのだろうか?
「バリスよ、心配ないもう教えずともお主の中にある。そう先程教えたのだから」
そうか、そうだったんだ。
「僕の歩いて来た道はこの道だ.......」
足跡が浮かび上がっていく中で全ての道を振り返る。
「そして、全てを今に集めた時、秘められし力を導き出せ」
『聖龍奥義』 《ディドゥース・パスロード》!!!
その一撃は眠り姫へ導かれた。
「聖龍王、製作者を継ぐ者よ、お前達は必ず抹消する、計画を遂行する為に」
すると先程出していた裂け目から封印されていた奴らが解放された。
眠りから覚める時が来たのだ。
ーーそして、眠り姫は姿を消した。
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