第十六転調「それを人は何と読む」
「ねぇ、ヴェル?
この大陸に来てから様子が変じゃない?」
僕はヴェルの様子が明らかに変な様子だと思っていたが、ライズに来てから大変な目にあったな......
それに、長話する暇なんてなかったぐらいだ。
戦いが終わって話をする時間が出来たから
このタイミングで聞いておきたいと思ったから、今聞いてみているんだけど......
「バリス、私を心配してくれてたんだね、ありがとう」
ヴェルは一度族長に庇われた時はかなりショックを受けていたと思う。
「実はね、私はこの大陸に来た事がなかった......筈だったんだけどね、何故か昔の記憶が蘇って来たんだよ」
ヴェルの目線は遥か遠くに向けられていた
「昔の記憶?それって......」
そよ風かヴェルに転機の訪れを知らせるかの様に。
ヴェルの目線はは遠くを見ていなかった。
今この時を見ていた。
「私は小さい頃、ライズに迷い込んでしまっていたみたいだ......」
僕はヴェルの全てを知らない。
ヴェルも僕の全てを知らない。
僕が知っている彼はこんな表情をした事がなかった。
ヴェルはライズに迷い込んだ事があるという話は受け入れづらい不可解な現象だけど、何故か説得力がある。
それはヴェルの全てを語っている気がするから。
「ヴェル、君に何があったのかはわからないけど僕は信じるよ、君の全てを」
今はただヴェルを信じることしか出来ない僕でもヴェルは共に歩むと言ってくれる。
これほどまでに信じ合える人は僕は知らない、出会った事がなかった。
彼が初めて出来た仲間であり、親友なのだから。
「バリス、大事な事を伝えておくね、ピックも僕も過去に迷い込んでいるのを思い出したけどね、あの子に私は名乗ってなかったんだ」
つまり、当時の二人の関係までは知らないけど、お互いに名前は知らないという事だろうか?
「でもね、ピックの名は族長が口にしていたから知っていたけどね。
すっかり忘れていたから、ピックに呼び出された日は、不思議な感覚だった」
でも、そんな簡単に大切な記憶をヴェルが忘れる事があるのか?
もしかしたら何者かが裏で動いているとしたら......
「そういえば、ピックとはあの後話したのか?」
そう問いかけてみたけど、
「......話してないな、話したかったけど暇がなかったからね」
まぁ、そうですよねぇ
「私がどうかしたんかぁ?」
「ビックリした......っ!!」
突然現れるから怖いんだよ、この人
ーーヴェルとピックにしか話せないこともあるだろうし、少し二人にしてあげようと思って離れたけど、元が暇だったから手持ち不沙汰になってしまった。
「うぉおぉぉおお!!」
百!百一!百......
「オイ、昼間も鍛錬続けてんのかァ?
偉いなお前ェ」
......暇すぎて無意識に筋トレしてるところ族長に見られた??
「お前がヴェルの親友だったよな?」
「あ、はい!ヴェルはこんな僕でも共に歩むと誓ってくれた人だ!だから、僕も彼と共に歩む事を誓った!仲間であり親友だ!」
族長に凄く恥ずかしい事言った気がする。
「ハハッ!お前ェ、意外と根性あるじゃねぇか!!なら話してやらねぇとなぁ!」
話?何の話をされるの?
「奴だ、眠り姫についての話だ」
背筋が凍るように冷えてしまった。
「.......眠り姫」
僕が旅に出た目的は眠り姫を見つける事だ
この前の事件の際、眠り姫が突如として族長の体を乗っ取って攻撃を仕掛けてきたが
あの後眠り姫は何処かへ逃げていった。
「アイツに乗っ取られてわかった事があるんだがなァ、聞くかァ?」
聞かない選択肢なんてない!
「是非!」
族長の話は信じがたい話だった。
「アイツは人の禁忌に触れてるなァ、あれはなァ、禁忌の兵器と言った方が適切だろうなァ」
眠り姫はかなり手強かったけどまだ本当の力どころか、まだ特に力の一割も見ていない気がする。
「ワシら、ライズの人間は創力といえぬ程の力しか創力を発揮できない。むしろ持っているがそこまで強くないのがなァ」
前に聞いたがライズの人間はかなり創力で戦えるほどの創力を持ち合わせていないという。
その代わりに野生的な力で強くなっていったというのがこの人達だ。
「眠り姫の野郎ォ、ワシの体で創力を酷使しやがった.......」
創力をあまり持たない筈なのに使っていた?
いや確かにそうだ。
かなり創力を使っていたようにも見える。
歪だったが、かなり使っていたな......
「つまり、眠り姫は禁忌に触れているかもしれなくて、族長の体を乗っ取った上に創力を強制的に酷使したという事ですか?」
族長は創力なくてもかなり強いのに、創力なんて持ったら大陸がどうなるかわからないから......
「腹が立つのはこれだけで済んだら良かったんだがよォ、アイツ本体じゃねぇわ」
本体??じゃあ、アレは一体?
「アイツの創力で生み出された人の体乗っ取れるような遠隔の創力だ、乗っ取られた側からするとなァ、気色悪いんだよォ!クソッタレがぁ!!!」
マズイ、族長がブチギレた。
今夜は寝れそうにないな......
ーー族長を落ち着かせるのに半日もかかった。
今思うとあの人に創力は与えるのは非常に危険だ。
この大陸が滅んでしまうかもしれない。
それにアレが本体じゃないなら、本体は何処にいる?
恐らく遠隔で飛ばしているなら、この大陸にはいない可能性が高い。
なら、次の大陸へ向かう時が来たのかもしれない。
ヴェルにも伝えないとな!
ヴェルは確かあそこに......
「あっ、いたいた!ヴェル!......ヴェル?」
ピックと思い出を語っているのかな?
懐かしむ表情を二人で浮かべてる。
「流石に邪魔できないや」
また後ででも言えるし、いいかな?
『力の継承者よ、時は常に進んでいるのを忘れるな。秒針は完全には止めれぬ。奴が目覚める前に......奴を探し出せ』
「くっ、この声は聞いた事がない声だったが、誰かが語りかけてきた?
いや、忠告だった。
「大丈夫かい?バリス?」
ヴェルか、二人の時間を邪魔しちゃったか......。
「本当、急に倒れんなよ、心配したじゃねぇかよ」
素直じゃないけどピックも心配してくれてるのか
「ごめんね、もう大丈夫だよ。
でも、大丈夫じゃない事がある」
ヴェルに伝えないといけない。
「僕はさっき誰かわからない声を聞いた。
それも危険を知らせているような忠告だった」
でも、確信はない。
それでも、それでも!!!
「信じるよ、バリスが言うのなら
信じるよ」
ヴェル......
「お前ェの話はよくわかんねぇけどよ、私は慣れているんだよなァ、何故かよ、信じてやる。それだけだ」
ピック......
そんな話をしてもヴェル達は真面目に聞いてくれる。
僕は心の何処かで安心していたのは事実だ。
だから歩もうと思う、次の大陸へ、
「次の大陸に行こう、僕たちなら、大丈夫だ、きっと乗り越えられる!!」
ヴェルの目はようやくかと言わんばかりに光っていた。
「おい、ヴェルまた私を置いていくのか?」
ヴェルは少し動揺している。
流石のヴェルも女の人には弱いのか
「決めた、私着いていくからな?お前ェらに着いていく」
は?
「この前時期族長とか戦いの後散々言われてたよね?大丈夫なのか?」
「いや、問題ねぇよ。母さ......族長には好きにしろって言われてんだよォ」
「ヴェルはいいのか?」
「いいんじゃないかな?私も仲間が増える事は喜ばしい限りだ」
まぁ、うーん、いいかな。
「わかった。けど、こことは違う困難が待っているかもしれない。
それぞれの目的を掲げて、歩んでいくが......」
ヴェルが手を差し出して言った
「それでも一緒に来るか?」
その時止まっていた時間は動き始めた事を海の漣が告げた。
「はい!......喜んで!!!!」
なんか含みがある気がするが、ピックが仲間になり、三人旅になった。
「これで晴れて二人の旅からおさらばか......」
今思えば、こんなに旅して無くならないこの大金が恐ろしいよ、貧乏だった頃を忘れそうになりそうだ......
「次の目的地は、行った事がない大陸が一つ残っていたから、そこに行こう思う!」
「もしかして!」
「何処いくんだよ」
聖龍を信仰している信者が多く礼拝堂などの大陸!!
「デイズ大陸に行こう!」
待ってろよ!眠り姫!必ず見つけ出してやる!!
ーーその頃とある地下の施設では
「まだかなぁ?結構苦戦してるようだね!
でも、君なら私を見つけれると思ってるよ」
『私を止めてみせてね、製作者を継ぐ貴方の力で......ね??』
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