第一二転調「導かれし者」
勝てる見込みはないと確信はなかったが、私を動かしたのは族長を守りたいという思いだった。族長は私を庇って傷つき、体まで乗っ取られてしまった。だから私はピックを守り抜く。ピックにはヴェルが言ったことがどう伝わったかはわからないが、この感情は懐かしく温かい。
眠り姫はヴェルにバリス君との関係を聞いたが、ヴェルは語る道理はないと答えた。眠り姫は何かを思い出しているのか、水平線を見渡した。そして、彼も同じことを言っていたと呟いた。
「なんの話だ?」とヴェルが尋ねると、眠り姫の姿は消えていた。足跡もない。ピックにケガがないか確認しようとしたその時、
「油断大敵だよ」
背後から眠り姫が現れ、ヴェルは何者かに刺された。眠り姫はさっき突然消えたはずなのに、足跡もなく再び現れた。
「今ね、キミに刺したのはかなり強めの毒を仕込んだナイフだよぉ」
これは一本取られたね
ヴェルは完全な敗北を味わった。
「ホント、キミが演奏会を始めたら困るからね、特に蒼い炎は私でも対処できないよ」
ピックがヴェルの元へと駆けつけた。
「ヴェルは私が守る! もし、ヴェルを始末するなら代わりに私を倒してからにして!」
「ほぉ? 面白いねぇ、キミ!
彼と仲がいいのかぁ、関係が切れちゃったらごめんね!」
眠り姫は腕を振り下ろし一撃でピックを吹き飛ばそうとした。
「待てよ、その子には手を出すな」
猛毒を喰らって立つことすら不可能な状態だが、ヴェルは鍛え上げられた精神力で立ち上がった。
ピックは涙を堪えた。
「ピック、助けた命粗末にしないでくれ」
彼は思い出したのだ。
自分の中に欠けてしまった記憶を繋ぎ合わせて再生した。
しかし、毒の効果も凄く強い。
跡数分以内で私はお陀仏だろう。
「蒼炎が苦手なんですね? わかりました」
お望み通り、《バイオニスト》!!!
「刻まれた音は響きあなたへと届く」
怒りの感情を込めて演奏を行なう。
そこには怒りのおとだけではなかったおとだけではなかった。
思い出したあの日の声を、その音色を乗せて
「フィナーレだ」
演奏が終わった頃には、眠り姫は乗っ取っていた族長の体から抜け出して逃亡した。
「母ちゃん!......大丈夫か?」
ピック、良かった、キミが無事で......
「ヴェル!!! しっかりして!」
毒が回っている。
無茶をしすぎた。
すると、ピックは私に向かって手を添えた。
「想援者であなたの毒を抜くけどいいよね?」
想援者? 創力の名称だろう。
だが、ライズの人は皆、毒を抜くなどの創力すら持たないのだ。
「心の底からこの想いを込めて、エモーション!!」
体を蝕んでいた毒が抜けていくのがわかる。
だけど、問題点がある。
「病などは治せるから、毒は抜いたけど!傷までは治せない......ど、どどうしよう!?」
そこへ彼が帰ってきた。
「バリス? 無事だったのかい?」
バリスはかなりの一撃を喰らっていたが無傷で帰ってきた。
「ヴェルこそ、大丈夫そうじゃなさそうだ。
少し見せてもらえるか?」
そう言うとバリスは何かをブツブツ言い始めた。
「ヴェルの傷が治る!完治する!」
何かを宣言している様だった。
あれ?痛みが引いていく。
「あっ、傷が無くなってる!?」
「バリス!キミがやってくれたのか?」
バリスの創力について遂に、原因を見つけたのか!
「ピックに崖から突き落とされて○ぬと思った。その時思ったんだ。死にたくないと」
ピックには聞きたい事があるが、バリスの話を続けて聞くことにした。
「怖いぐらい毎回のことだけど、○ぬと思った時にはそんな事を思って言っていたんだ」
しかし、疑問が浮かんだ。
「つまり。バリスは○にそうな時に生きたいと言えば○しなないのか?」
本当にバリスの創力は謎が深すぎる。
「それなんだけど、生きるか○ぬかとかではなくて」
「「「言った事が実際に起こるんだ」」」
信じれないが、それでしかこれまでの謎に筋が通らない。
でも彼自身は変わってはいないんだ。
だから、
「私は信じるよ。とにかく、君は私を驚かせるのが得意だね......」
バリスは安心したのか腕を回した。
そういえば、族長の具合は大丈夫なのだろ うか?
「族長の具合は如何でしょうか?」
すると族長は何事もなかったかの様に、笑い話にして話した。
「あんなのに体乗っ取られたのかぁ!ワシはァ??!」
やはり似ている。
族長とピックは似ている。
でも、
「ピック、キミは本当は.......」
ピックはいって欲しくなかったそうだ、
人差し指で口封じされてしまった。
族長も取り戻したのだ、一難去ってまた一難な一日だった。
「ピック、少し二人で話したい事がある」
そう言って、ピックを連れ出した。
「ピック、キミはずっと覚えていてくれたんだね」
ピックの目には涙があった。零れ落ちた涙がその感情を語っていた。
「ヴェルトンはあの日、ノイズに無事帰った時、私はノイズに帰らなかった。一体、何故だと思う?」
ピックは語り出した。
ライズと自分の関係を......
第十一転調をここまで読んでくださってありがとうございます!!
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