フィアナ、風紀委員との模擬戦を満喫する
その後、メイソン先輩に案内され、私は風紀委員室に通されました。
当日の見回り計画を立てるそうです。
「多少の手柄を立てたからって勘違いするなよ。エレナ学園長がどうしてもというから、仕方なくメンバーに加えるだけだ」
「はいはい、分かってますって」
一方的に敵意を向けられるのにも、正直、少し疲れてきました。
少し雑な返しになってしまった私に、周囲の風紀委員たちの視線が集まります。風紀委員の生徒たちの反応は様々でした。
「この少女が、テロリスト相手に大立ち回りを演じたっていうフィアナなのか?」
「どんなやつかと思ったら、普通の女の子じゃないか」
そんな反応もあったかと思えば、
「これが噂の魔王……、なんだな!?」
「腕の一振りで不可侵の結界を破壊したって噂の!?」
「俺は、ひと睨みしただけでテロリストが爆散したって聞いたぞ!」
「息を吐くだけで敵を氷漬けの彫像にしたらしいって!」
(ちょっと待ってください!?)
(噂に尾ひれがつきすぎです! あと魔王って言ったのは誰ですか!?)
こんなところにまで魔王呼びが広がっていて、私は泣きそうになります。
パン、パン!
そう手をたたき、メイソン先輩が場を収めました。
「映えある風紀委員ともあろう者たちが、そんな下らない噂に踊らされるとは情けない!」
まったくです! デマを広げるのはやめていだきたい!
うんうん、と頷く私をよそに、
「はあ……、学園長の命とあれば仕方がない。早速、見回りチームの編成を行うとするか」
ぶつぶつとメイソン先輩は、そんなことを言いだします。
「チーム、ですか?」
「ああ。不測の事態にも対応するため、三人一組で行う決まりでな」
「あ、それなら大丈夫です。私、友だちと回る予定なので!」
友だちと一緒に回る文化祭──なんなら最優先まであります。
大真面目な顔で、そう主張する私の言葉を聞いて、
「ふざけるな! 風紀委員の見回りに加わる以上、規律は絶対に守ってもらう!」
メイソン先輩は、顔を真っ赤にしてそんなことを言い出しました。
(困りましたね……)
(私としても単独行動は、なにが何でも守りたいところですし──)
重苦しい空気が、部屋に落ちます。
「……いいだろう」
沈黙を破ったのは、メイソン先輩でした。
わざとらしく咳払いをすると、
「どうやら君には、どうしても単独行動したい事情があるらしい」
「ま、まあそうですが……」
「しかし我々としても、はあそうですかと頷けるものではない。そこは理解してもらえるな?」
「は、はあ……」
いきなり雰囲気を変えたメイソン先輩が、なんとも不気味です。
「このまま話を続けても平行線──よって、ここで意思決定のための決闘を提案する。君と風紀委員の代表で模擬戦を行い、勝ったほうの提案を呑む。それでどうだ?」
メイソンの言葉に、ざわりと空気が揺れました。
「おい、それは……」
「一般生徒相手に、そんなことやるのか?」
「例の魔王の戦いが見られるのか!?」
戸惑う声に混ざって、どこか楽しそうな悲鳴まで。
そんな反応を尻目に、
「模擬戦ですか?」
「な、なぜそこでテンションが上がる……!?」
(だって久しぶりの模擬戦ですし!)
(相手は腕に自信がありそうな風紀委員さん。きっと面白い技を見せてくれるはずです!)
「その提案、受けます!」
そうして私は、急遽、訓練場に向かうことになるのでした。
***
訓練場につくなり、
「出番だ、レヴァン!」
メイソンが、そう宣言しました。
「へいへい。まったく、こんなことのために俺を雇ったのか?」
「無駄口を叩くな。この間の問題を不問にしてやる代わりに、しばらくの間風紀委員に協力する──そういう契約だっただろう」
「はいはい、従いますよ」
そんな軽口を叩きながら現れたのは、だらしない服装の赤髪の男子生徒でした。
「…………って、戦うのはあなたじゃないんですか!?」
「ふんっ、僕は頭脳労働派でね」
メガネをクイッと上げ、そんなことをのたまうメイソン先輩。
「君が勝ったら約束通り、見回りでの単独行動を許可しよう。だが、もしそこのレヴァン先輩が勝った場合は──」
「勝った場合は?」
「君にはやはり実力不足だったということで、風紀委員の任務を辞退してもらおうか」
「べ、別にそれは構いませんが──」
むしろ、それがベストまであります。
是非ともメイソン先輩には、エレナ学園長の説得を頑張っていただきたいところ。
そう思った、そのときでした。
「悪く思うなよ、嬢ちゃん」
「ッ!」
そんな言葉と同時に、レヴァン先輩は突如として、その身体から放たれる膨大な魔力を叩きつけてきました。
(戦闘開始の前から──いきなり、挨拶ですね!)
挨拶代わりの威圧というところでしょうか。
それは相手にマナを叩きつけて、相手の冷静な思考と行動力を奪う盤外戦術の一種──威圧と呼ばれるテクニックです。
もっとも同じぐらいのマナを持つ者同士であれば、ちょっと集中するだけで無視できる初見殺しのようなものですけどね──昔はアル爺によくやられました。
「ほう、やるなあ」
「そちらこそ」
カチリとスイッチがオンになる感覚。
私が威圧を受け流したのを見て、レヴァン先輩は好戦的な笑みを浮かべました。
なおも余裕の表情を浮かべるレヴァン先輩を見て、
「お返しですっ!」
私はひっそりと練っていたマナを開放し、一気に叩きつけました。
レヴァンは意識を集中するように目を閉じると、
「──喝ッ!」
そう叫び気合いを入れると同時、私が叩きつけたマナの奔流が一瞬で霧散してしまいました。
「まあ、そうなりますよね」
「いいねえ。久々に楽しい戦いができそうだ」
「私もです」
久々の真剣勝負の気配に、私も自然と笑みがこぼれてきます。
「怪我しても、恨むなよ!」
そう言うや否や、レヴァンは意識を集中し、マナを手元に集中します。
「それは──なるほど、武器をその場で作るんですね」





