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フィアナ、魔王の娘と再会する

 お弁当も食べ終わり、そろそろ家に戻ろうと、そんなことを考えていた時でした。


「な、なにか来ます!」


 ──最初に異変に気が付いたのは私でした。


「フィアナちゃん!?」

「こ、これは!?」

「私も……、分かった。これ……、強力なモンスターの気配!」


 やがてエリンちゃんたちも気配を察知。

 二人とも警戒した様子で立ち上がり、臨戦態勢に入ります。


「エリン姉?」


 怯えた様子の妹弟を見て、


「お母さん、リィたちを連れて村に戻ってて」

「エリン、あなたは──」

「私たちは、ここで戦うよ」


 静かな決意を込めて、そう答えるエリンちゃん。


「大丈夫です。モンスターとの戦いは、経験ありますから」

「ええ、大船に乗ったつもりで任せてほしいですわ!」


 私たちも安心させるようにそう口にし、


「エリン、フィアナちゃん、セシリアちゃんも──絶対に生きて帰ってくるのよ!」


 そう言い残して、エリンちゃんの家族は避難を始めました。

 魔界──結界を張って接触を拒んでいたエリアから、猛スピードで”なにか”が接近してきているのです。


「結界の……、外で待ちます」

「え? せっかく結界張ったのに──どうして?」

「せっかくの新品。壊されたくないですからね」


 結界だけでは防げない強大な強さを持つモンスターというのが、世の中には存在します。

 そうした存在は結界に傷をつけられる前に、こちらから打って出るのが鉄則──そんなことを、結界を破壊されてご機嫌斜めのナリアさんが言っていました。

 今回の的が持つ膨大な魔力は、おそらくこの結界では防ぎきれないはずであり、


(う~ん……? この魔力、なんだか少し懐かしいような──)


 不思議な既視感とともに私は首を傾げるのでした。


***


 そうこうしている間にも、ぐいぐいと莫大な魔力反応が近づいてきます。

 警戒する私たちが見守る中、姿を現したのは小さな少女でした。


「ふっはっは、久しいの。人間の娘!」


 私よりも少しだけ幼い女の子で、頭からはちょこんと角を生やしています。

 自信満々で、勝気そうな表情。いきなりピシリと指を刺された私ですが、


「あなたは! …………誰、だっけ?」


 こてりと首を傾げます。


「むき~! いつも余裕の表情をしおって。わらわは、リリスじゃ!」


 やたらと偉そうにそう魔族の少女が名乗りました。


「余裕こいていられるのも今のうちじゃぞ、人間。長年の修練の成果を見せるとき──今日こそは我が必殺技で、チリも残さず消し炭にしてやるのじゃ!」

「あの……、チリも残らならなかったら、消し炭も残らないんじゃ?」

「むき~! 揚げ足取りとは卑怯なのじゃ!」

(あっ、ついつい模擬戦のときの癖で──)


 相手の冷静さを奪うのは、模擬戦での基本戦術なのです。


「……あ! リリスって、ルナミリアを何度も襲ってきた魔族の子!」

「左様! 栄えある魔王・ベルシアさまの後を継ぐ者として──フィアナ、今日こそ、その首、もらい受ける!」


 そう宣言するとリリスは、魔力を隠すこともなく集約させます。

 リリスの周辺を、莫大なマナの奔流が渦巻いていき、


「な、なんって魔力──」

「フィアナさん、どうするんですの? 相手は、魔王の跡を継ぐ者だって──」

「まさか戦うつもりなの?」


 こちらを心配そうに見てくるエリンちゃんとセシリアさん。


「どうって……」


 震えながらも武器を手に取ろうとしている二人を見て、


「もちろん返り討ちにします!」


 私は、そう宣言。


(リリス……、完全に思い出しました!)

(ルナミリアで、何度も模擬戦をやった仲ですね!)


 忘れていたとは不覚です。

 まるで本気の殺しあいのような殺気をぶつけられたような気もしますが、本気で命の取り合いをするぐらいの気持ちでなければ、模擬戦で得られるものは多くありません。

 何度か戦い、そのことごとくを返り討ちにしてきた相手。

 ──だからこそ、相手の魔法の癖はよく分かります。


(この子が使うのは、基本的には炎魔法。それも火力一辺倒の、真正面からの力押し──だったら、こちらも真っ向から叩き潰します!)


 炎に対抗するには水と、昔から相場が決まっています。

 幸い今の私には、使ってみたい魔法がありました。

 エリンちゃんが見せてくれた結界の修復魔法──そこを彩るには、やっぱり幻想的な光景が似合うと思うのです。


「喰らぇ! 必殺──無限火炎ファイアボール・アンリミテッド!」


 突如、周囲に周囲に現れる巨大な火炎球。

 勢いよく燃え盛る無数の火炎球が、無秩序に空を埋め尽くします。その数、ざっと数千──到底、その全てを避けることなど不可能でしょう。

 おまけにその一つ一つに、巧妙に闇魔法の呪いまで込められています──まともに一つでも食らえば、ただでは済みません。


「今日こそ……、わらわの勝ちじゃ!!」


 手を振り下ろし、そう宣言するリリス。

 次の瞬間、無数の火炎球が一直線に私に向かって躍りかかってきました。


(やっぱり、そういうタイプの魔法ですよね!)

(うんうん、シンプルイズザベスト! だけど……、だからこそ対応は容易!)


 リリスは、毎回、オリジナルの魔法を撃ってきます。

 ゆえに対応は、いつだってアドリブ。冷静に魔法の発動を観察した私は、対応する魔法を脳内でシミュレーションします。


(うん、避けるのも対応するのもナンセンス)


 圧倒的な手数で、こちらを押しつぶそうという物量作戦──一つずつ対処しようとすれば、やがては対処が追いつかず、そのまま消し炭にされることでしょう。

 だったら私が取るのは、


「氷檻世界(ニブルヘイム!)」


 貯めていた魔力を、一気に解放。

 魔法でできた氷を、次々と展開します。

 まるでそこは、氷でできた世界。あたり一面を氷漬けにする乱暴な荒業──炎の球が氷の壁に閉じ込められ、一瞬でかき消されていきました。


 本来であれば、一対多の戦闘でこそ効力を発揮しそうな大魔法です。

 そして今回、リリスが使った魔法との相性もバッチリでした。

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