フィアナ、和やかな夕食を囲む
楽しい時間は一瞬で過ぎていき、あっという間に夕食の時間になりました。
私たちも、夕食の準備をお手伝い。セシリアさんは、恐縮するエリンちゃんの家族をよそに、テキパキと要領よく家事を手伝っていました。
一方、私とエリンちゃんは、戦力外と台所を出禁に。
……皮むきのような繊細な作業は苦手なのです。
そうして出来た晩御飯を囲み、
「「「いただきます!」」」
一斉にご飯を口に運びます。
出てきたものは魚の焼き物をメインにしたTHE田舎の家庭料理といったものであり、どことなく前世を思い出す懐かしいものでした。
パクリとかぶりつき、私は前世を思い出し、懐かしい気持ちになります。
(美味しいです!)
食卓を囲むのは全員で六人。
私、エリンちゃん、セシリアさんの三人に、リィちゃんとルルくん。エリンちゃんのお母さん──ちなみにエリンちゃんのお父さんは、近くの村に出稼ぎ中らしいのです。
エリンちゃんは、本人を入れて三人兄弟──随分な大家族です。弟と妹はガツガツと夕食を口に運び、幸せそうな顔をしています。
そんな様子を見て、エリンちゃんお母さんはあたたかな笑みを浮かべています。
(兄弟かあ──毎日が楽しいんだろうなあ)
前世、今世ともに、私は一人っ子。兄弟がいたら、毎日のように遊びながら魔法や剣の腕を競っていたのでしょうか。
私がそんなことを考えていると、
「ごめんよ。大したものもだせないで──」
エリンちゃんのお母さんが、そんなことを言ってきました。
「とんでもないです。すごく……、ものすごく美味しいです!」
そのまま一気に完食する私。
「ふう……、おかわりです!」
「王都の料理もいいけど、やっぱりこれが落ち着く」
「おいしいですわ~!」
目を輝かせる私たちを、ほっと胸をなでおろすエリンちゃんのお母さん。
「これ、村の特産品のホヤの実。こうして絞ってかけると、とっても美味い!」
「なるほど。いい匂いがします!」
リィちゃんが、ライトグリーンの小さな実を持ってやって来ました。
見様見真似で果汁を絞り、焼き魚にわずかにかけてみます。
ジュウッという音とともに、わずかに柑橘系の清々しい匂いが広がりました。
(美味しそうです!)
目を輝かせながら魚にかぶりつき、
「すごく合いますね!」
焼き魚のシンプルな味わいに、独特の酸味が加わりものすごく美味しいです。
「でしょ!」
「まだいっぱいあるよ。お土産にもいいかも!」
村の特産品が好評で、嬉しそうに頷くエリンちゃん姉妹。
「ワタクシも試したいですわ!」
「はい、セシリアさんも! まずは何個かの部品に小さく切り分けて──って、ああっ。そんな一気にかけたら──」
「酸っぱいですわ!?!?」
一方、セシリアさんは果汁をかけすぎたのか、目をバッテンにしていました。
私たちがワイワイと食事を進める中、
「エリン姉、元気で安心したよ」
「うん。お姉、去年は死にそうな顔で帰ってきたもんね」
ぽつりとそんなことを言い出すのは、リィちゃんとルルくんです。
「もう。二人とも、余計なことは言わないでいいから!」
「分かった分かった!」
「でもお姉……、顔に出やすいから」
(エリンちゃん、帰るのは家族を安心させるためって言ってたもんね)
エリンちゃんの表情は、私から見ていても最近は凄く明るくなったと思います。それは家族にもちゃんと伝わることでしょう。
今もぷりぷり怒るエリンちゃんを、リィちゃんとルルくんはケラケラとからかっています。
そんな三人を見て、やっぱり母は優しい視線で見守るのみ。
──それは、とても穏やかな食卓の風景で……、
(ご飯がおいしくて、空気は暖かくて幸せです!)
私は、ふわあとあくびをするのでした。
それからも和やかな団らんの時間が続きました。
「フィアナちゃんね、ダンジョンで強そうな一撃で倒しちゃったの!」
「すごい!」
エリンちゃんの妹が、キラキラした目をこちらに向けてきます。
「え、いや。あれは、エリンちゃんの支援が強力だったからで!」
「ドラゴン!? エリン姉、ドラゴンと戦ったの?」
「うん、倒してたよ。ダンジョンって怖い場所だよね」
「私、田舎暮らしで本当に良かった……」
エリンちゃんの妹は、ぶるっと震えていました。
「俺、あれが聞きたい! スロベリア演習の伝説!」





