アデール将軍、新たな宿へ
本能から保守思想が生まれる
原始人から脈々と受け継ぐ真実である
「そんなこんなで来てしまったが、さてここで暮らす事になるのか?」
「ワケあって生活に困っている人もいるから、同じ境遇同士で理解もある」
「それと君が以前世話になっている宿にも知らせておいたから、安心してほしい」
「連絡してくれたのか、ありがとう」
ゴンゴンと音を立て近づいてくる人影
「お兄ちゃんどいてー」
サラが食事の準備に大忙し
運んでいる物はおかゆと野菜炒めの様な料理だ
「でもさ世話になるだけじゃ日本人として恥ずかしいぜ、手伝いするわ」
「そうかツバキ、ぜひサラと共に配膳の準備よろしくな」
大広間には既に入所者が集合して座っていた
「サラちゃんこの料理で最後か、案外楽だぜ」
「ちゃんと16個あるならいいよ、後は人もちゃんといるか数えておいてね」
「ありゃ?親父さんどこいった」
「パパはいつも忙しいから、どこかに出かけていっちゃったよ」
まだ聞きたい事は山ほどあるが、今はサラと共に手が離せない
「見かけない顔だねえ、新しいお手伝いさんかい?」
「どうも、ここに暮らす事になった普通の日本人で名前は椿です」
「こんなところに若者が来るなんて賑やかになりそうねえ」
「家の者が増えて寂しがりやなおじいさんも喜ぶわ」
軽く会釈を済ませた椿
だが若干後悔していた、若い女性の姿はなく嫁候補が少ないのだ
「まるで老人ホームだな、まあいい俺にはサラちゃんがいるしグヒヒッ」
「じゅーさんじゅーよん・・・二人程いないぞ、おいおいおいどこだ」
先ほど話かけてきた老婆が答える
「あの二人はちょっとねえ・・・・」
「ふうむ何やら裏がありそうだな、場所言ってくれない?連れてくる」
迷いはなく残りの人間を連れ出すべく走る
「なんだよ恥ずかしがり屋か、俺が説得して席に着かせてやるよ!」
二階へ向かう途中、街コンの記憶が蘇った
「俺はあの時会場を間違わなければ、こんな世界に来なかった筈・・・」
「いやまだこの記憶は奥の奥にしまっておこう、今は忘れる時だ」
退却撤退など甘えは許さない、いつでも己に厳しくそれが椿の信念
「ついたな、このドアを開けば、う゛う゛ちょっと緊張して腹が痛いな」
「お・・・お邪魔するぞー・・・」
ガガガギィィィィィィィィィ
ゴゴッバタンッ
力加減を間違え思いっ切り開けてしまった、なにせ古いドアで渋すぎた
「ひあんッ!」
開けた張本人が衝撃音に驚き乙女の様な声をあげてしまった
部屋を見渡す限り薄暗く、不気味な雰囲気を漂わせている
「あ、あのー夜食の時間なんで一階に食べに来ませんかー?」
未だに姿は見えない、明かりも付いておらずどこに何があるのか把握できない
「・・・・・・・・はい」
蚊の鳴くような声で返事をした、弱々しくどこか悲しげなトーンだ
「女性の声だ!それに聞いた限りだと若いぞこれは!」
女の子と確信した瞬間、今までにない経験が椿襲う
全神経を通じて力がみなぎり体中に稲妻が走った、涎も口一杯充満する
「もしかして体の調子が悪いんですか!?ぜひ足と腰を支えますよ!ハアハア」
「そんな・・・・でも・・・」
「遠慮しないで!俺に出来る事があればいつでも手伝いますよお」ニチャア
無理矢理ベットから起き上がらせ、暗い部屋から連れ出そうとした
途中で女性の体、特に胸やお尻に手が触れてしまったが偶然である
「フーッもう大丈夫ですよお、出来ない事があればすぐ呼んでえグヒッ」
「(何だあの感触は・・・うっかり触れてしまったが柔らかすぎる!!!)」
少し風呂に入って無さそうな臭うが漂うが椿は気にしない
左手は彼女の腋をがっちりと掴み、自分の体に引き寄せ体勢を固定した
右手は骨盤の辺りを撫で回す様に優しく手をかざし倒れない様に気を遣う
「ごめんなさい・・・」
「全然謝らなくていいんだよ!是非とも毎日お力になるよお!」
暗い廊下から明るい通路に差し掛かり全体像を確認する
長髪で体は全体的に細く痩せていた、そして彼女の顔がはっきりと見えてきた
四角い顔で目は細く釣り上っている、目は虚ろで輝きはそこには無い
「ブフッ!ふんっゴホッゴホッ!」
笑いをこらえるのに必死になり咳をして誤魔化す、遥かに想像を超えていたのだ
オークが可愛く見える程の醜女、おおよそ女性とは思えない外見に驚愕する
椿は酷く動揺した
「(いや若い女の子だけどさ!もしかして俺余計な事しちゃった・・・?)」
体を密着させて移動している状況、今すぐにでも逃げ出したい気持ちが勝ち
だが将軍の名を汚す行為は出来ない許されない
「(俺はアデール将軍だ・・・絶対に逃げない・・・)」
大広間までの辛抱、天国から地獄へ突き落とされた瞬間であった




