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「あの~これ全部?」

 今日の仕事はジャガイモの皮むきだ。

 厨房に来たときには篭いっぱいのジャガイモが積んであった。


「後これもザマス」

 篭がもう一つ増えた。


 まさか一人でなんてコトないよね?


「今日のノルマザマス。あ~た一人で全部剥くザマス」

「ひ、一人?」

 もう一度目の前のジャガイモたちに視線を移した。


「何か問題でもあるザマスか?」

 逆三角の鋭い視線が反論を許さない。


「いえ、ありません」

 ナイフを手に取りジャガイモの皮を剥き始める。

 こんなに沢山誰が食べるのよ。

 心の中で悪態をつきながら、その怒りをジャガイモにぶつける。


 次々に剥き出されるジャガイモたち。


 人間窮地に追い込まれると恐ろしい力を発揮すると言うけど、結構行けるんじゃない?

 リカーほどの速度はないけど……。


 ちょうどリカーがオーダーを告げに来ていた。


 リカーは私の視線に気がついたのか、私の方を向いてウィンクしてくれた。

 でもそれが妙に悲しく思えてしまった私は微笑みを返すコトができなかった。


「気にするな」

 リカーがそう言った気がした。



 ジャガイモと格闘を初めて早半日。

 目の前のジャガイモは篭一つになっていた。


「ふ~、後一篭か」

 大きく深呼吸をすると再びジャガイモに向き合った。


「よ、頑張ってるな」

 ぽんと背中が押されたので振り返るとリカーがいた。


「リカー。大丈夫?」

「何だよ。心配性だな。せっかく飯持ってきてやったのに」

 リカーはプクッと頬を膨らました。


「ゴメン」

 目の前のヒラヒラ衣装に心が痛む。


「そんな顔すんなって、それなりに楽しんでるよ。少なくともジャガイモに埋もれなくてすんでるしな」

 リカーはジャガイモを一つひょいと取り上げた。


「ま、懐かしい仕事だな。頑張って皮むきしてくれよ」

 手に持っていたジャガイモを投げてきた。


「コレがお昼ご飯?」

 ちょっとからかってやれ。


「それでよければ、沢山召し上がれ」

 リカーの方が一枚上手だ。

 どちらともなく笑い声があがった。


 ひとしきり二人で笑いあってから、リカーが皿を渡してくれた。


 まかない飯にしては豪華だね。


「こんな特典もあるんだよ。あたい特性まかない飯。ま、残り物だけどな」

 ニコッと笑って見せてくれた。


「え、いいの?」

「良いに決まってんだろ。そのために持ってきてやったんだからな」

 得意げに腰に手を当てて胸を張るリカー。


「ありがとう」

 素直に受け取った。


「よし、じゃああたいはそろそろ行くよ。皮むき頑張れよな」

「うん、ありがとうリカー」

 何気なくその後ろ姿を見送った。


「リカー6番テーブルついて」

 そんな声が聞こえてきた。

 忙しいんだね。


 さっそく私はちょっと豪華なまかない飯をつつきながら、しばらく休憩をとっていた。




「さて、始めますか」

 お腹もいっぱいになったし、ジャガイモに向き合った。

 ナイフを握りジャガイモの皮を剥く。

 単調な作業だけどリカーの笑顔を見たせいか、お腹がいっぱいになったせいか、午前中よりも皮むきペースがあがっている。


「おい、ジャガイモ!」

「はいは~い、ただいま」

 剥けたジャガイモをシェフの所に持って行く。


 戻ってきたらまた皮むき。


 でも何だか皮むきが楽しくなった。

 周りで忙しそうにしている人たちも、何だか楽しそう。

 さっきまでくたびれていたように見えていたのに。

 不思議だね。



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