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トイレ掃除の次はお風呂の掃除。
全面ピンクのお風呂は何だか落ち着かない。
「そう言えば私たちが泊まったときって時間が遅くて閉まってたのよね」
こんな風になってたんだ。
広いバスタブが三つとそれを区切るようにピンクのカーテンが張り巡らされてる。
床はつるつるした黒っぽい石で出来ている。
今は火が入っていないから、蒸し暑くはないけどサウナ用の蒸し器も三つ置いてある。
その他には井戸が一つか。
それらを眺めながらデッキブラシで床のヌメリをとっていく。
「それにしてもこの宿、悪趣味だよね」
まるで人買いの宿みたい。
ヒラヒラ女は娼婦みたいだし、使用人はその予備軍?
でもそんな感じの宿だよ。
「早くレモン来てくれないかな」
「ぬぼ~」
「へ?」
背後に人の気配を感じて振り返る。
「い~や~!」
そこには全裸の男の人が……あそこが腫れ上がっているようにそそり立ってる。
体がこわばって動きたくても動けない。
何故か視線もはずせない。
「ぬぼ~」
腫れ上がったものが左右に揺れながら近づいてくる。
「何ザマスか、今の悲鳴は?」
「め、メイド長様~」
腰が抜けてペタンとお尻を床に着けている私の目線は立派にそそり立ったあそことちょうど同じ高さだ。
「お客様、お風呂はただいま掃除中ザマス。掃除が終わったらお世話役が迎えに行くザマス」
メイド長様は私と彼の間に立ちはだかった。
た、助かった。
「あら~ここにいたの~、探したんだから。私といいことし・ま・しょ」
ヒラヒラ女が全裸の男の腕に絡みつくと外へと連れ出した。
「メイド長様~」
ありがとう、来てくれなければどうなっていたことか。
「シャーラップ。お客様の前でありながら言葉遣いがなってなかったザマス」
そんな無茶な!
「シャーラップ。お仕置き部屋でゆっくり授業ザマス」
「ええ~。そんなメイド長様」
あんまりだよ。
あれは無理だって。
「初めて見たわけでもあるまいし、情けないザマス」
いやいや初めてですって。あんなになってるの見たのは。
思い出しただけでもぞっとする。
レモンのはどうなんだろう?
ふと思う。
同じモノが着いてるのかな?
「イヤイヤイヤ、違う違う」
ブンブンと頭を振って雑念を振り払った。
「さて、調教するザマス」
しまった。
「いや~ん、メイド長様~。ゆ・る・し・て」
お願い許して。
「ダメザマス。次に失態をおかさないように調教ざます」
うう、やっぱり。
「いや~ん、冗談きついです、メイド長様~」
「今更いっても遅いザマス」
うう、やっぱりダメか。
メイド長様に連れられて二度目のお仕置き部屋。
重々しい樹の扉が開く。
「あ~ん、もっと~」
ええ?
先客がいる。
ヒラヒラ女が三角形の木馬にまたがって悶えてる。
ああやって使うんだ。
じゃない。
「メイド長様~。先客いるよ」
「失礼したザマス」
重々しい音と共に再び扉は閉められた。
助かった~。
「仕方ないザマス。仕事に戻るザマス」
「はぁい、わかりましたメイド長様~」
帰る足取りは軽い。
「今度はジャガイモの皮むきザマス。早く厨房に行くザマス」
「はぁい、メイド長様~」
ジャガイモの皮むきなら特に問題ないよね。
厨房に入ると中は戦争のようにあわただしかった。
私と同じフリフリ服を来た人やヒラヒラ女が料理を持って駆け回り、白い服のシェフがフライパンに火を入れる。
「ふぇ~、すごい」
思わず入り口で立ち尽くしてしまう。
「ちょっと邪魔よ」
後ろからジャガイモたっぷり入った篭を抱えた私と同じ服を着た女の人が私を押し退けて入ってきた。
「あ、ジャガイモ」
その女の人を追いかける。
「何よ。あたいに何か用?」
「ジャガイモの皮むきに来たの」
手早く用件だけ述べる。
「そ、あたいリカー。あんたは?」
「私はミカン、宜しくねリカー」
厨房はあの動作は必要ないよね。
ジャガイモのたっぷり置かれた厨房の片隅でナイフを取り出した。




