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 夢でよかった。

 フリフリの使用人服を着る。

 うん、服は可愛い。

 きっとこんな服はこんなことがなかったら一生着ることはなかったと思う。


 順調にいけば、レモンたちは今日には迎えに着てくれる。


 今日一日がんばろう。

 まずは何をすればいいのかな?


「あの~、メイド長様」

 血走った目でギロっと振り返るメイド長様。


「言葉遣いがなってないザマス」


「あ、あの……いやん私ったら、てへ。メイド長様~何をすればいいのか教・え・て」

 基本動作は体が勝手にやってくれる。


「よろしいザマス。先ずはトイレ掃除ザマス」

 デッキブラシとバケツ、雑巾を渡された。


「はぁい、メイド長様~」

 甘い声で返事をするとそれらを持ってトイレに向かう。

 ふ~危ない危ない。また特訓なんてヤだもんね。


 ふと今朝の夢が頭の中に浮かんできた。


「イヤイヤイヤ、無理無理無理」

 頭を降って必死に振り払う。


「レモン、待ってるからね」

 鏡に写る自分の姿に優しく話しかける。


「さて始めようか」

 腕まくりをして、なぜか無駄に広いトイレを一望する。

 総鏡張りのこのトイレさてどこから手を着けよう。


 そう言えばお仕置き部屋もそうだったけど、こんなに大きな鏡どうやって手に入れたのかな?


 手鏡でさえ銀貨一〇〇枚と言うちょっと手が出ない値段。

 鏡はとても高価なのに……。


「ま、考えてても始まらないか」

 まずは床をデッキブラシで……。


「床も鏡張り?」

 え? ちょっと何ここ。本当にトイレ?


 個室から出て入り口のプレートをみる。


「間違いない。トイレだ」

 再び中にはいるとあることに気づいた。


 それは、この鏡の配置。


「これって、してるところ丸見えじゃない?」

 試しにトイレに立ってみるとやはり丸見えだ。


「悪趣味~」

 こんなんじゃ落ち着いて用もたせないよ。

 私はデッキブラシを諦めて雑巾で総鏡張りのこの個室を雑巾掛けを始めた。


 無駄に広い総鏡張りのトイレを雑巾がけしていると、鏡に何人もの自分の姿が映る。


 う~む、何だか一人で掃除している気分じゃないな。


 あ、あそこは正面だ。

 ちょっと手を振ってみる。


 あっちは後ろ姿。


 こっちは上から見た姿だ。


 そっちは……。


「ヤ、ちょっと」

 下から見た姿。

 下着が丸見え。


「誰よこんな悪趣味なトイレ作ったのは」


「ここの主ザマス」

「え?」


 いつの間にメイド長様が背後に?


「何か言いたいことはあるザマスか?」

 鋭い逆三角形の目が光る。


「えへ、もう無いですよ~メイド長様~」

 拳を作って腰をフリフリ。


「よろしいザマス、続きをするザマス」


「はぁい、メイド長様~」

 びっくりした。心臓が口から飛び出すかと思った。


「なってないザマス」


 へ? 今度は何?


「雑巾掛けするときにも、腰をもっと振るザマス」

 え?


「もっと腰を落として、誘うように腰を振るザマス」

「さ、誘うように?」

 そんな、ここトイレですよ。しかも掃除中なのに……。


「シャーラップ。どんな場所でもお客様がいると思うザマス」

「えと、何も言ってないですけど……」


 思考を読まれた?


「シャーラップ。顔に書いてあるザマス」

「え? うそ?」

 鏡をのぞき込んで自分の顔を見る。


「何にも書いてないよ」


「シャーラップ。言葉遣いがなってないザマス」

「え? メイド長様~。何にも書いてな・い・よ」

 基本動作は忘れない。


「顔を見ればあ~たの考えくらいわかるザマス」

 う、するどい。


「さあ、雑巾掛けするザマス」

「はぁい、メイド長様~」

 えっと腰を振るんだったよね。


 こんなんかな?


「もっと大きく、誘うように振るザマス」

「もっとですか?」


 こうかな?


「ハアハアこうザマス」

「きゃ」


 メイド長様が私の腰をつかんで大きく揺する。


「ちょ、ちょっとメイド長様」

「ハアハア、言葉遣いがなってないザマス」


「あ~ん、メイド長様~。激・し・い」

 振り返ろうとして一枚の鏡に目が止まった。


 下から見た鏡だ。

 この腰の動きだと見えそうで見えない。


「わかったザマスか。やってみるザマス」

「こう? メイド長様~」

 さっきの鏡を見ながらきわどい動きを再現する。


「やれば出来るザマス。その調子でやるザマス」

 メイド長様は立ち去っていった。


 ふう、助かった。


 心の中でため息をついた。


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