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「腰のフリが甘いザマス」
「あ~ん」
内股にあの感覚がゆっくりと上ってくる。
思わず腰を振ると「ハアハアやれば出来るザマス。今の動きを忘れないザマス」と血走った目でお誉め(?)の言葉をいただいた。
「さあ基本動作をもう一度ザマス」
拳をこう、上目遣いに腰はこんな感じ?
「あ~ん」
またの内側にまたあの感覚が。
温かい吐息のような感覚がゆっくりなめるようにあがってくる。
「ちょ、ちょっとタンマ。あ~ん、それ以上は」
やめて、力が抜けて立ってられない。
その場にぺたんと座り込んだ。
石畳が火照った体に気持ちいい。
「ハアハアき、基本動作は何とか合格点ザマス」
「ご、合格点? なら今のは?」
「ハアハアご褒美ザマス。上手くできればご褒美ザマス」
それって上手くできなければ罰があるってコト?
「さあ立つザマス」
ポタポタと落とされる赤い雫。
「熱い」
「言葉遣いがなってないザマス」
「熱っ、熱いですって」
「そこは『あ~ん、ミカンは悪い子で~す。もっとお仕置きし・て・ね』ザマス」
「あ~ん、ミカンは悪い子で~す。もっとお仕置きし・て・熱っ、熱いですって」
「基本動作と一緒にザマス。やり直しザマス」
「はい、メイド長様熱っ」
「返事は甘えるように『はぁい、メイド長様~』ザマス」
「はぁい、メイド長様~」
ダメこのままだと壊れちゃう。レモン早く来て~。
「はあ、疲れた……」
「何ザマス!」
「あは、疲れちゃいましたメイド長様~」
基本動作はほぼ無意識に体が動く。
「よろしいザマス。明日から仕事ザマス。わかったザマスね」
「はぁい、メイド長様~」
「よし、ザマス」
バタンと木製の扉を閉めて出て行くメイド長様。
はう~どうなっちゃうのよ~。
心の中で悲鳴を上げる。
ここは使用人部屋。
なんとか言葉遣いと基本動作が身についたところであのお仕置き部屋から解放された。
時刻は深夜。
部屋を見渡せば下着姿の女性たちが雑魚寝をしている。
ざっと三〇人はいる。
みんなあの特訓こなしているんだろうな。
「いや~んお客様、そこはお・部・屋・で……ぐ~」
一体どんな夢見てるのよ?
はあ~、私も寝よ。
手近な布団に潜り込む。
何なのよこの宿屋は。
そんな腹立たしさを覚えながら横になると、疲れていたのかすぐに意識を手放した。
「……カン、ミカン」
う~ん誰よ。寝かせてよ。
眠い目をこすりながら上半身を起こす。
「迎えに来たぜ」
そこにいたのは、レモン!
他のみんなも。
「やっと来てくれたんだね」
目から涙があふれ出す。
「さあ、起きて」
レモンの腕が差し出される。
「レモン!」
私はレモンに抱きついた。
「待たせたなミカン」
ピンクのヒラヒラのカーテンがゆっくりと風になびく。
「レモン」
「ミカン」
何も言わなくたって磁石のように吸い寄せられる唇。
目をつむり身を任せる。
ぎゅっと抱きしめる手に力が入る。
「デヘデヘデヘ」
へ?
「なってないザマス!」
「ちょ、レモンは? 何でメイド長様が?」
「デヘデヘデヘ」
生温かい感覚が首筋を這い上がってくる。
「だ、誰よこの人!」
いつの間にかでっぷりとした禿頭の男の人と抱き合っていた。
「デヘデヘデヘ」
「いや~」
「違うザマショ、そこは『いや~んお客様。もっとやさしくし・て・く・れ・る』ザマショ」
「え? ええ、無理無理無理。何でこんな人と?」
あ~ん、這い回る舌に力が抜ける。
「レモンは?」
体を反らし必死で探すけど見つからない。
「お仕置きが必要ザマス」
巨大な赤いロウソクを手に持ち、目を血走らせているメイド長様。
「いや~ん、ごめんなさい、メイド長様~」
「ハアハア言葉遣いがなっていないザマス」
赤い巨大ロウソクが迫ってくる。
「助けて! レモン!」
ガバッと起きあがる。
もうすっかり辺りは明るくなっていた。部屋の女性たちもヒラヒラだったりフリフリだったりに着替えている途中だった。
「ゆ……め?」
しばらく放心していた私。
「いつまで寝てるザマスか。さっさと支度をするザマス」
メイド長様の檄が飛んできた。




