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うっすらとした空間。
ぼんやり浮かび上がる用途不明のオブジェの数々。
ロウソクに火が灯されるたびそれらが姿を現していく。
「一体何するんですか、メイド長様」
涙声を絞り出すのがやっとだった。
「躾ザマス」
躾っていったって私なんか悪いコトした?
「私様直々に躾をするザマス。感謝するザマス」
部屋の燭台にすべて明かりが灯ったものの所詮はロウソク。
薄明かりにしかならない。
闇が完全に払われないままのこの部屋にメイド長様が手に持っているのは大きな鳥の羽?
太陽の下なら立派な七色のカラーが映えるだろう鳥の羽。
片腕くらいの長さがあり先端はふわふわだ。
「さあ、こちらを見るザマス」
メイド長様が羽で示した先には壁一面の鏡があった。
当然私も写っている。
……っていうか、こんな大きな鏡を作るなんて出来るの?
こんなの見たこと無い。
私が鏡に驚いていると、首筋にまるで吐息をかけられたような感覚がゆっくりと肩まで移動した。
「あん」
きゃ、なんて声を。
自分で恥ずかしくなる。
こそばゆいようで暖かく心地よいというか気持ちいい。
こんな感覚初めて。
「やれば出来るザマショ。今の声ザマス」
さっきの感覚の正体は鳥の羽。
あのふわふわした部分だ。
「それでは始めるザマス。さっき教えた通りやるザマス」
「さっきって、何のことですかにゃ?」
記憶をさかのぼるけど何か教えられた覚えはない。
「シャーラップ。今の場合は、拳を二つアゴにこうつけて『え~私わかんない。お・し・え・て』ザマス。この時腰を振るのを忘れないようにザマス」
「アハハハ」
そう言えばそんなこと言ってたっけ。
「あん」
また首筋にあの感覚がゆっくり動く。
だめ、この感覚癖になりそう。
「笑い事じゃないザマス。さあ、やるザマス」
え、え~と。
「えー私わかんない。お・し・え・て」
ぎこちない動きでマネをする。
「違うザマス。もっと甘えるような声で、拳はこうザマス。もう一度ザマス」
「はい」
メイド長様の勢いに圧されて返事をする。
「『はい』じゃないザマス。『わ・か・り・ま・し・たメイド長様~』ザマス」
「わかりました、メイド長様」
「違うザマス。もっと甘えるような声で、上目遣いザマス『わ・か・り・ま・し・たメイド長様~』ザマス。もう一度ザマス」
「わ、わ・か・り・ま・し・たメイド長様」
「もっと甘えるように、上目遣いザマス!」
そんなこと言われたって……甘えたコトなんて無いよ。
「あん」
また首筋にあの感覚が。
「今の声ザマス。さあもう一度ザマス」
ダメダメダメ、しっかりしなきゃ。
あの感覚を気持ちいいと思い始めてる。
しっかりしろ私。
「わ・か・り・ま・し・たメイド長様~」
「ほら腰をもっと誘うようにザマス」
誘うようにっていわれても……。
「どうやらまず服がじゃまザマスね。その服を脱ぐザマス」
「ええ~」
「違うザマショ! もっと甘えるようにザマス」
「え、え~」
「腰の動きがなってないザマス。服を脱いでよく鏡を見るザマス」
そんな~、いくらメイド長様と二人きりとはいえ、服を脱ぐのは……。
「あん」
「早くするザマス」
「はい、メイド長様~」
「上目遣いザマス」
ひ~ん、早く助けてレモン。
フリフリの服を脱ぎながら内心涙を流す。
フリフリの服を脱ぐと上はタンクトップに下は下着になった。
「まずは基本動作ザマス。上目遣いに拳二つ、腰の動きザマス」
えっとこうして……。
鏡に写る自分を見ながら腰を振る。
こんなのレモンに見せられないよ~。
「熱っ、熱い。何ですか?」
「ハアハアまだまだザマス。もっと可愛くザマス」
メイド長様は真っ赤な大きなロウソクを持っていた。
ちょ、ちょっと目がいっちゃってるよ。
「ハアハア『あ~ん、メイド長様~』ザマス。やってみるザマス」
「あ~ん、メイド長様」
「もっと脇を閉めるザマス」
「熱っ熱いですって」
メイド長様は真っ赤なロウソクからロウを私の体に垂らしていたのだ。




