5
「まあまああわてなさるな。村長、この宿に入ったときには持っていたんですよね?」
「ウム、間違いなく持っておった」
「じゃ、この宿で落としたのでしょう。主人に落とし物がないか聞いてみましょう」
「そうじゃな。でわ食事をすませてから聞くとしようかの」
ふ~よかった。宿の中にあるんだね。
私たちは食事を堪能した後、ご主人のいるカウンターへと向った。
「ご主人、昨日落とし物がなかったかな?」
ホイヤーさんがご主人に切り出した。
黒髪をオールバックにして黒い色眼鏡をかけたすらっとした男性だ。
白と黒の衣装がばっちり決まって格好いい。
清潔感があるからよけいと何だろうな。
ご主人は帳簿をめくると「ありませんね」きっぱりと言い切った。
「無いわけはあるまい。これくらいのこんな形をした……そこに置いてあるようなものじゃ。ん? そこにあるじゃないか。それじゃそれじゃ」
村長さんが指さしたのはボトル棚に置かれている幸せの鍵だった。
「言いがかりはよくありませんね。これは当店のモノですよ」
三角の色眼鏡をクイと位置直しをするご主人。
色眼鏡がギラリと光ったように見える。
「間違いないんじゃ。ワシのじゃ」
「聞き分けの良くないお客様。他のお客様に迷惑ですよ」
振り返ってみると注目の的になっていた。
「しかし変ですね。昨日まではそんなモノありませんでしたよね」
ホイヤーさんの言葉に「ハガネ」と小さくドスの利いた言葉を吐き出すご主人。
「へいマスター、お呼びで?」
服装はご主人とそっくり何だけど二メートルを超える身長に、あちこちにある切り傷の後。
筋肉隆々のスキンヘッドの人がやってきた。
「どうやらそこのお客様がご指名のようだ」
え?
してませんよ指名なんて。
思わず叫びそうになるのを飲み込んだ。
「村長、ここはいったん退きましょう」
ホイヤーさんが小声で村長さんに言った。
「う、うむ。どうやらワシの勘違いじゃったようじゃ。失礼する」
こうして私たちは村長さんの部屋に集まった。
もちろんヒラヒラ女はいないよ。
「さて、どうするのじゃ?」
村長さんが開口一番ホイヤーさんに問いかけた。
「正攻法では無理でしょうね」
ホイヤーさんはきっぱりと言い切った。
「でわどうするのじゃ?」
「ミーちゃん幻術の魔法が得意だよね」
「う、うん。それがどうしたのかにゃ?」
「ミーちゃんの幻術を使ってすり替える」
「「「ええ?」」」
なんと大胆なことを考えるホイヤーさん。
みんなが驚いた。
「それって犯罪じゃ……」
「シャラップ、ミーちゃん。先に仕掛けてきたのは向こうだよ。まあ、諦めるという選択しもあるが……」
「むろん却下じゃ」
「ね」
む~確かにホイヤーさんの言葉にも一理あるような気が……。
「で、すり替えるのはどうするんだ?」
れ、レモン?
「シェルファに奪わせる。その間に幻術をかけてもらえばばっちりだ」
「主人を引きつける役がいるな」
「そいつはワシがやろう」
村長さんが名乗りを上げた。
こうして役割分担を決めて再びカウンターに向かう。
ミッション名:オペレーションK始動だ。




